◆シャムシア・アーマッド委員 報告 ◆Aクラスター(政治参画) ◆Eクラスター(人間の安全保障)
◆Cクラスター(家族) ◆Dクラスター(身体) ◆Bクラスター(雇用と社会保障)
◆アーマッド氏 回答[ 1|2|3|4 ] ◆質疑応答 ◆終わりに

A,B,C,D,Eクラスター共催 研究会
◇公開研究会(A,B,C,D,Eクラスター共催、担当:尾崎久仁子教授)
◇アーマッド氏 回答 (4/4)
その他、家族法について話す場合は課税制度も関係があります。今はもう働き手が一人の時代ではないからです。また社会保障制度、年金制度などもありますし、別個に話すことはできません。同時にやらなければならないでしょう。委員会をいくつも立ち上げてから再び一緒にすると良いかもしれませんね。すべての人が現行の国際基準と日本の基準に照らして考えることです。課税制度、年金制度、そして生命保険さえ検討する必要があります。この生命保険というのも、保険料が高くなることの影響も考えなければなりません。働き手が男性だけであれば、女性の就業が否定される場合もあります。インドネシアではすでにそのようなケースが見られますし、日本にもきっとあると思います。インドネシアでは女性が外交分野に進出しているため、そのようなケースが結構多くあります。そのような女性は結婚しないか、あるいは夫が弱くなるかのどちらかです。けれども私達は新しい制度を築かなければなりません。どのように築いたら良いのでしょうか。夫は(仕事に)戻れるでしょうか。たとえば夫が大学の先生であれば、行った先の国で研究か何かの仕事に就くのも良いでしょう。ですから、日本と世界各国との間で法律を作り、たとえばですが、日本の外交官をそのように待遇できるようにする必要があるのです。夫か妻かどちらかです。これが外交面のもう一つのポイントです。
また相続法もあります。インドネシアには宗教的な問題があります。日本ではそのような問題は無いと思います。ですからこの問題に関しては、私共より皆様の方が取り組みやすいと思います。
次に苗字の問題があります。この問題について私はずいぶん考えました。自由に選べるようにすると言うわけにも行きません。私はもう生きていないでしょうが長い間には、父母の名前を証明し、父母の生年月日と出身地が確認できるような出生証明証を持つのが一番良いことです。そしてついにはすべてが情報化されるでしょう。母親を特定するのは当然難しくありませんが、苗字を持つ主な理由は、母親が妊娠したことは誰にでも分かりますが、父親のことは分からないからです。今の世界では人権に性の権利も含まれますから、性の自由によって父親はますます分かりにくくなっております。誰でも、他の人の邪魔をしない限り誰とでも寝ることが出来ます。私共は現在そのような過程にあります。西欧にはそのような自由が非常にあります。日本でどうかは知りませんが、私共にはまだ宗教と伝統がありますので問題になっております。伝統はまだあるのですが、それがまったく普通のことになりつつあります。毎日違う人と寝るようなことは、私共は普通はいたしません。これが私達の求める人権なのでしょうか。子供の父親が分からなくなるようなことをすることが人権でしょうか。とんでもない!これはとても深刻な道徳の問題です。道徳と法律の問題となると、これは大変難しいことです。何が合法で、何が道徳的なことなのでしょうか。インドネシアではこの点がとても難しい問題です。
宗教と伝統と家族、これらのことが私達にとって、特に私達の生活がいまだに秩序正しく行なわれるよう仕事をしている法律家にとって難問となっております。そうしないと動物のように暮らすことになりますから。ところで、私達はそのような方向に進んでいるのでしょうか。進んでいなければ、座って真剣に自己統制を行なうべきです。父親の特定はますます困難になっておりますが、母親の特定は決して難しくありません。ですから、「それで良い」という合意が出来れば父親の名前を採用するべきです。法律は人々が信じる価値を反映するものでなければならず、またそれが将来私達を守ってくれることにもなるでしょう。そういうわけで、この問題は私達次第なのです。私達の父親が分かるよう守ってもらうことを望むのでしょうか、それとも望まないのでしょうか。これらの点がこの問題の課題なのです。
非摘出子の問題はもう一つのもっと宗教的な問題です。私の個人的な見解としては、子供は法律上もっと平等の権利を持つべきだということです。理由は、子供の権利条約です。非合法であろうと何であろうと、望んで生まれてきたわけではないのです。ですから、子供の利益を考えることが最優先です。子供達は何が起きたのかまったく分かっていないのです。生み落とされただけなのです。ですから、父親と母親、つまり家族、そして国にはやはり責任があると思います。非摘出子であろうとなかろうと、国は子供に対して責任があると、子供の権利条約は述べております。また父親と母親はどちらも責任があると、女子差別撤廃条約その他人権関連のすべての条約に述べられております。皆様はこれに賛成されても反対されてもかまいませんが、私の考えはこのようなものです。
次の問題は暴力の問題です。この政策は検察官に告発するよう求めております。現在、この問題は非常に深刻です。ただ単に、女性に対する暴力は世界中で伝統的に「家族の恥」と考えられてきたというだけの理由からです。ですから、このような問題点はすべて隠蔽されてきました。私はたまたま「家庭内暴力」に関する第1回国連専門家会議に関わりましたが、当時の私にはこの問題の持つ意味がまったく分かっていなかったと言えます。私は丁度女性問題に関わり始めたところで、はりきっておりました。けれどもその時に私は文書を読み、お会いした人々や専門家と話し合うようになりました。そしてその後で始めたのです。現在、私は対暴力国家委員会の委員をしております。そして今の私の結論は、家庭内暴力が近年一律に増加してこなかったのは報告されなかったからだということです。人々は今報告し始めました。同時に平等運動によって、女性は夫や兄弟や父親から殴られた時に抗議の声を上げるようになりました。とくに夫婦間の場合は一般に恥ですから人には言いませんが、今では報告されます。裁判になれば、私は彼女が弱い立場にいることがわかります。
この問題は今後も裁判所が取り扱うべきだと私は信じております。そのため女性運動は調停に反対しております。家族の恥ですから、調停をすればかならず隠蔽が行なわれるからです。あるいは経済的な程度もあります。調停は経済状況に基づいて行なわれますから、経費とエネルギーが掛かるというのが家族の主張です。政治結婚ももう一つの理由です。いろいろな理由があってそのような結婚をするのですから、この調停作業で女性がさらに困難な状況に陥ることが多いのも事実です。暴力と同じように、政治結婚も「家族の恥」だったからです。ですから、かつては両親自身が訴えを取り下げました。最近ではもう恥ということはないと思います。ですから私は、裁判所ないし裁判制度が真実と正義の擁護を行なうよう強く願っております。というのは、女性に暴力を振るっている人が居ても、女性が抗議していないために他の人が放ったらかしにするからです。ですから私は、裁判制度が正義と人権と真実の擁護のために、今後も保護を継続するよう願っております。生きる権利と拷問されない権利はすべての人にあるからです。どのような暴力かという点は問題ありません。今では定義がなされております。一般宣言がなされておりますし、女子差別撤廃条約一般勧告の第19番には特定の項目に関する勧告も行なわれております。ですから、女性に対する暴力とは何か、また人権侵害とは何かという点が、すべて明確になっております。これを、日本も含めて世界が承認していることは確かであります。女性に対するそのような暴力は人権侵害なのです。ですから、罰を受けさせるために裁判所で皆様がこのテーマをどう呼ぶかによって決まるのです。
最後の問題点は、立証規定の変更に関するものです。つまり取り扱い方法に配慮が必要だということです。レイプされた人について立証しようとしても不可能だからです。以前私共が見たケースを皆様にいくつもお話することが出来ます。すでにレイプされている女性が、警察に行くと二重に苦痛を受け、裁判所に行けばさらにひどい目にあいます。検事の中には、英語でどう言えば良いのか分かりませんが、「良い思いをしたんでしょう?」などと言う人もいます。考えられますか?また裁判官の中にも、「それでは誰があなたのパンツを脱がせるのですか」などと言う人がおります。一例ですが。つまり、このようなことがすべて決り文句として認められているのです。女性はすでに苦痛を受けているのに、彼らがまた女性を蔑視するのです。このことは、真理と人権と正義を擁護するはずの司法制度として、非常に恥ずかしいことです。要するに、私共は査察をしたのです。彼らがまったく知らない間に、私共は司法長官の許可を得て判例の一部をファイルで見ました。そういうわけで、皆様もこのようなことを実施する努力をなさるべきだと思うのです。このようなことを立証せず、ただ一つのケースしか無ければ、彼らは信用しません。政府は、「とんでもない、それは一つのケースにすぎません。他のケースがその千倍もあるのですよ。そのようなケースが一件あったというだけでしょう」と言って、信じないことでしょう。ですからもっと多くのケースを調べて、この書類のように科学的根拠のある例を十分に準備しなければなりません。私は、学者がそのようなことを実施できると良いと思っております。
次の論点は社会保障の問題だと思いますが、規制は差別ではないと言うことを申し上げたいと思います。この点で、条約の第1節を参照する必要があります。ここには、女性差別ということの意味が大変明確に述べられております。また、平等な待遇と言う場合の「平等」とは、「実質的な平等」ということです。ですから、2かける2は4というような中途半端な平等では決してありません。条約に述べられている「平等」は「実質的な平等」なのです。女性にも男性にも公正でなければならないと書かれております。男女平等と正義を語る際に、この点はきわめて重要です。「女性のため」と言うことであれば、私は反対いたします。私は女性の味方というわけではありません。私は、老若男女を問わず、正義と真実と人権を擁護するものです。社会は高齢化しており、若者にとっては情報技術がますます進歩していることを、どうか忘れないでください。若い子供達に対して隠されているものは何もありません。暴力でもポルノグラフィーでも、何でも見ることが出来るのです。ですから、私達はより一層の難題に直面しており、女性の味方などと言うことはできないのです。私は女性の味方ではなく、女性と男性、人類の味方なのです。でも女性はまだ非常に差別されておりますから、暫定的特別措置をとって実質的な平等を確保しなければなりません。言い換えれば、結果の平等ということなのです。結果は男性と女性の双方にとって満足の行くものでなければなりません。方法論は女性の味方をしますから、方法論を言うのであれば私は反対します。私は正義の味方ですと言わなければなりません。
次に「性的中立規定」ですが、これは主として女性に適用されます。良く読んでください。実質的な平等というのが大変重要である理由がここにあります。女性だけに適用すると言われれば私はたいてい反対するのですが、出産権と出産機能が関わることであれば、それは女性だけのためです。大部分はそうなのですが、男性をも保護します。放射能について見ますと、これは男性の生殖機能にも影響を与えます。生殖周期は女性だけでなく、男性にもあるからです。この点を私達は忘れていることが多いのです。私達女性戦士、女性活動家は、男性が居なければ子供も生まれないことを忘れてしまいます。工場で子供が作れるようになるとは思いませんから、これからも自然な方法で行ない、それをさらに科学的で健康的で清潔なものにして、完璧に近づけるようにしていきますが、人間を作る工場を目指しているとは思っておりません。ですから、私達の目指しているものが必ず実質的な平等と、出産権と出産機能に関してのみ女性を保護する規定であるよう肝に銘じるべきであるという点に賛成です。他の点については気をつけなければなりません。
さて、雇用や性や同職種同賃金といった問題になると、本格的な研究が必要になります。なぜなら、女性にこのような仕事はできないと言うようなことは間違いだからです。それは時と場合によります。女性が妊娠している場合であれば、できないでしょう。それは医学上の問題です。ですから医学的観点からも、また人権、出産権、出産機能といった観点からもできないということなのです。これは女性に固有の事柄です。けれども出産するという女性の機能や役割は、単に妊娠期間や授乳期間だけに限られるものではありません。女性は生まれた時からずっと体全体にこの能力を持っているのですから、出産機能が無くなるまで保護しなければなりません。けれども、妊娠したことがあろうと無かろうと、授乳したことがあろうと無かろうと、女性に出産機能が無くなった後、つまり年齢的に言うと、医学的に見てどうなのか知りませんが40歳過ぎでしょうか、あるいは亡くなった後でさえ、それは固有の影響を女性の体に及ぼします。出産機能と加齢による女性に固有の状態が現れます。ですから高齢になっても、女性は高齢の男性に比べてもろく、病気や脆弱さや精神的な病などが起きやすいのです。これは男性と非常に異なりますから、平等ということに関連してこの点を認識しておかなければなりません。「実質的な平等」という点を常に念頭に置くよう、よく注意しなければなりません。単に2かける2は4というのとは違います。ですから研究、学者の仕事が大いに必要です。

◆シャムシア・アーマッド委員 報告 ◆Aクラスター(政治参画) ◆Eクラスター(人間の安全保障)
◆Cクラスター(家族) ◆Dクラスター(身体) ◆Bクラスター(雇用と社会保障)
◆アーマッド氏 回答[ 1|2|3|4 ] ◆質疑応答 ◆終わりに