◆シャムシア・アーマッド委員 報告 ◆Aクラスター(政治参画) ◆Eクラスター(人間の安全保障)
◆Cクラスター(家族) ◆Dクラスター(身体) ◆Bクラスター(雇用と社会保障)
◆アーマッド氏 回答[ 1|2|3|4 ] ◆質疑応答 ◆終わりに

A,B,C,D,Eクラスター共催 研究会
◇公開研究会(A,B,C,D,Eクラスター共催、担当:尾崎久仁子教授)
◇パネリストの論点の説明
2.Eクラスター(人間の安全保障) パネリスト:植木俊哉 教授
私は、国際法を専門としております関係で、本日は次の3点について質問をさせていただきます。アーマッド先生や本日お集まりいただきました方々からご意見を頂戴し、後ほどの議論の手がかりとなれば幸いです。
第1の点は、先ほどアーマッド先生からもご指摘がありましたように、女子差別撤廃条約を例えば日本という国が締結をした以上、それは政府、言い換えますと行政府だけではなく、立法府や司法府、あるいは国家の構成員である個人や団体等が、全体としてこの条約に拘束されるわけです。その場合に、女子差別撤廃条約では、7条から16条に具体的な権利の保障に関する規定があります。これらの規定によって、さまざまな女性の権利が具体的に保障されているわけですが、これらの規定は、果たしてすべて日本社会で直接的に適用されるものなのでしょうか。それとも、その受け皿となる国内法を制定すべき義務を課すという形で国内的にそれを履行するという方式が採られているのでしょうか。あるいは、7条から16条でさまざまな具体的権利が規定されているわけですが、その中で権利の種類によって、直接国内的に適用されるものと、国内立法を通じて権利の具体的な実現が図られるものとに分けられるのでしょうか。この点につきまして、国連の中で、あるいは女子差別撤廃委員会において、どのような議論がなされているのか、あるいはアーマッド先生個人のお考えはどのようなものであるのか、お伺いできれば幸いです。実は、この問題は、女子差別撤廃条約のみに関係する問題ではございません。国際的な人権条約、例えば国際人権規約ですとか、人種差別撤廃条約、拷問禁止条約、児童(子ども)の権利条約といったさまざまな条約につきまして、常に問題となる論点ですので、特にこの女子差別撤廃条約につきましてどのような解釈が委員会において採られているのか、ご教示をいただければ幸いです。以上が、第1の点です。
次に、第2の質問でございますが、以上の第1の点につきまして、女子差別撤廃条約のある具体的な規定が、例えばその締約国の立法府に対しまして一定の立法義務を課していると解される場合に、そこでは具体的にどのような立法義務が課されることになるのでしょうか。いわば努力義務と申しますか、できる範囲で立法をすればよいということなのでしょうか、それとも具体的な法律を制定すべき義務といったものが課せられるのでありましょうか。あるいは、この点につきましても、女子差別禁止条約の具体的な規定ごとに、その立法義務の内容というものが異なってくると考えされるのでしょうか。このあたりにつきましても、アーマッド先生のご意見、あるいは委員会でのご議論というものがもしございましたら、お教えいただければと存じます。
以上の2つは、ある意味で非常に一般的・理論的な問題でございますが、第3に、宮城県に固有の少し具体的な問題につきましても触れさせていただきたいと思います。それは、宮城県の公立高校における男女別学校制度の問題でございます。宮城県でも、もちろん小学校と中学校の公立学校につきましては、すべて男女共学になっているわけでございますが、高等学校につきましては、いわゆる伝統校、進学校と呼ばれる学校は男女別学校として現在もなお存在しております。このような公立高校における男女別学校につきまして、現在宮城県では段階的に共学化を進める計画を立てておりますが、これに対して、男子校や女子高の卒業生や在校生の一部からは、自分たちが受けてきた別学という「良き伝統」を守れ、外から外圧を加えて「共学」を強制することは非民主的だ、といった強い批判が提起されております。私自身は、男女の性別によって特定の公立高校に対する受験の権利すら認めないという男女別学校制度は、少なくとも公立学校に関する限り、女子差別撤廃条約10条の(b)ないし(c)に照らして認められるべきではなく、一刻も早くすべての公立学校の完全共学化を実現することはむしろ宮城県という地方公共団体の法的責務ではないかと考えております。ところが、実際には、男女別学校の共学化に声高に反対する意見ばかりがこの宮城県ではマスコミ等で広く取り上げられるという大変残念な状況にあります。そこで、このような地元での具体的かつ切実な問題に対して、われわれは女子差別撤廃条約の規定する内容の実現をどのような方法で達成していくべきであるのか、このような点につきまして本日若干なりとも議論することができれば幸いに思います。
以上、私の方からは3つの点につきまして、質問と若干の問題提起をさせていただきました。いろいろとご意見とご教示をいただければ幸いです。

◆シャムシア・アーマッド委員 報告 ◆Aクラスター(政治参画) ◆Eクラスター(人間の安全保障)
◆Cクラスター(家族) ◆Dクラスター(身体) ◆Bクラスター(雇用と社会保障)
◆アーマッド氏 回答[ 1|2|3|4 ] ◆質疑応答 ◆終わりに