2003年度の記録 >> 研究会報告

シャムシア・アーマッド委員 報告Aクラスター(政治参画)Eクラスター(人間の安全保障)
Cクラスター(家族)Dクラスター(身体)Bクラスター(雇用と社会保障)
アーマッド氏 回答[ 1234 ] ◆質疑応答終わりに

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A,B,C,D,Eクラスター共催 研究会

◇公開研究会(A,B,C,D,Eクラスター共催、担当:尾崎久仁子教授)

◇パネリストの論点の説明

1.Aクラスター(政治参画) パネリスト:辻村みよ子 教授

 辻村みよ子でございます。このCOEの研究の拠点リーダーをさせていただいております。今日は政治参画クラスターを代表してこちらに座っております。私の方からはお手元にございます論点の第1番目でございますけれども、政策方針決定過程での女性の参画とポジティブアクションについて問題提起をさせていただきたいと思っております。
 ご承知のように1999年に設定施行されました男女共同参画社会基本法では国や地方団体の施策の中に積極的な改善措置(ポジティブアクション)が認められておりまして、翌年の基本計画にポジティブアクションという言葉がたくさん使われております。しかしながら、日本で実施されております、例えば審議会のメンバーの女性比率でありますとか、あるいは雇用機会均等法上の措置など、実際には、非常にゆるやかな手段しかとられていない。これに対して、ご承知の今年7月に出されました女性差別撤廃委員会の報告書では、締約国が公的活動のあらゆる分野、とりわけ政策決定過程に女性が参画する権利を実現するために、暫定的な特別措置をもっと積極的に採用すべきだということを指摘しております。これは日本の政府その他も認識していない訳ではないのですが、なかなかこれまで実現されなかった。そこで、何故実現されなかったかということで私は理由を2つ考えました。1つは1999年に基本法を作りました際に−これは、妥協の産物でございまして−この基本法を作ったからといって、すぐにこのポジティブアクションまでも実施する、というような強い意図はないのだという含意があったと思います。このポジティブアクションを日本で実施するには、まだなお、これについてのコンセンサスが必要で時間がかかるという意識があったと言うことができると思います。それから2番目には、これは法律論的に見まして、実際にポジティブアクション、あるいはアファーマティブアクションには法律上、大変に問題があるという点。これはアメリカの例でも逆差別だという訴訟が起こっていまして、実際、憲法違反の問題があるわけです。クオーター制を導入すればいい、と一般には言われていますが、1982年フランスの地方議会選挙法の例も「一方の性が75%を越えてはいけない」という、要するに25%クオーターの法律案を作った時に、これは憲法院が、明確に憲法違反だという判断を下しております。これは女性差別というより、主権というのは普遍的なもので、別に女性議員が女性を代表しているものではないという議論でございます。他に、1995年のイタリア憲法裁判所もやはり違憲判決を出しておりますし、スイスでも違憲判決を出しております。したがいまして、日本でもそう簡単にクオーター制を導入することはできないし、一般的にポジティブアクションといわれている逆差別を入れた場合に憲法14条に違反するのではないかという検討が必要になってきます。そこで遅ればせながら2003年の4月に内閣府の基本問題専門調査会の女性委員会の方で女性のチャレンジ政策をまとめました。その中でポジティブアクションについてはもっと積極的にこれから研究していきましょうということで、今年の7月から内閣府の男女共同参画局にポジティブアクション研究会が設置されました。私もメンバーでございますが、全員が法律家でございまして、憲法学者が大半を占めております。すなわち逆差別かどうかという合憲性の問題について、きちんと法律論的に処理する必要がある、ということでございます。実際に、例えばフランスでは違憲だという判決があったために憲法改正までいたしました。公職の議員については、男女平等参画を促進するという一文をわざわざ憲法に書き入れまして、パリテ法を作りました。このパリテ法にしたがって、実際、比例代表制の候補者名簿の場合、名簿を男女交互にすれば50%近い女性議員がうまれるということで実際には、地方議会について25.7%から一挙に47.5%まで女性議員が増えました。ところが小選挙区を実施している場合にはこの方法が使えませんので、フランスでは、政党に対して、候補者の男女差が2%を越えた政党については助成金を減額する、という制度をとりました。そうしましたら昨年の6月、政党が裏切りまして、お金は要らないから女性候補を立てないということで、当の社会党なども36%しか女性議員を立てませんでした。与党が19%くらい、そして全体では女性候補者が法律上は2%差しか認められませんから49%くらいになるべきところが39%に留まってしまって、大きな成果が得られなかった。したがって、日本でも、もしこういう法律を作る場合には政党の意識を変えなければいけない。政党にポジティブアクションの実施を促すということが必要になってくるので、そう簡単にはいかないということになります。そのほかイギリスや北欧やあるいは韓国や南アフリカやいろんなところで様々なクオーター制やポジティブアクションがとられていますから、日本もまったく知らないという訳にはいかず、これから積極的に導入していかなければいけないと思います。一応、法律上はこういう論点があるということをご紹介申し上げて、一旦終わらせていただきたいと思います。

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シャムシア・アーマッド委員 報告Aクラスター(政治参画)Eクラスター(人間の安全保障)
Cクラスター(家族)Dクラスター(身体)Bクラスター(雇用と社会保障)
アーマッド氏 回答[ 1234 ] ◆質疑応答終わりに