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国際シンポジウム「両性平等と積極的差別是正措置」
ÉGALITÉ DES SEXES ET DISCRIMINATION POSITIVE
---- ANALYSE JURIDIQUE COMPARATIVE
内容|日時・場所|プログラム|タイムテーブル|挨拶|報告者|出版
■挨拶

植木俊哉(東北大学法学研究科研究科長)
「『異例は慣例にあらず』とはいえ、経験やアプローチを比較対照する機会を持つことによって、本日のシンポジウムが、フランスの聴衆に対しては、日本法の発展についてますますの理解を可能にし、また日本の聴衆に対しては、変化の只中にあるフランス法の複雑さをますます把握しうるものとなりますようお祈り申し上げます。」
(開会挨拶より抜粋して和訳)

Professeur David CAPITANT (Université de Paris I, Secrétaire général de la Société de Législation Comparée)(パリ第1大学教授、比較立法協会事務局長・代読)
「法律家にとって興味深いのは差別が存在するという事実です。だから私としては――『ポジティブ』や『ネガティブ』あるいは他の表現ではなく――『正当化される差別』つまり合法的な差別を論じるだけで十分に興味をひかれるのです。(…)それが合法であるのかそうでないのか、したがって『差別が存在する』ことで十分その状況を法律的に検討するに値すると思うのです。」
(ディスカッションより抜粋して和訳)
■報告者

辻村みよ子(東北大学法学研究科教授、東北大学ジェンダー法・政策研究センター長)
「『ポジティブ・アクション』『アファーマティブ・アクション』と "discrimination positive" という概念の比較法的分析」
「しかしながら、強調したいことは、法律が強制的であるフランスのシステムは、我々日本人にとっては、非常に厳しいように思えるということです。そして、日本政府は、とりわけ、日本人のメンタリティに調和しない事実を引用して、あまりに拘束的なシステムの導入に難色を示しています。」
(ディスカッションより抜粋して和訳)

Danièle LOCHAK (Professeure à l'Université de Paris X-Nanterre)(パリ第10大学教授)
「とてもとても長い間、私はこの言葉は絶対に使わないと言ってまいりました。でも今は、それも難しくなりました。実際にはこの言葉が広く用いられているからです。しかし、私は次のように考えます。この「積極的差別」という言葉をあらゆる場面で用いているようでは、この問題について、何がしか知的でしかも理解可能なことを言うことはできないということです。」
(ディスカッションより抜粋して和訳)

山元一(東北大学法学研究科教授)
「では、平等についての状況を改善するために、日本の法学は何を参照するのでしょうか。そもそも、一般的に、日本の法学者は、比較法学者です。比較法学者であるのが当然のことなのです。しかし、我々の眼や知的な関心は、西欧諸国にばかり向けられており、それがアジアに向けられることはまだ非常に稀です。」
(ディスカッションより抜粋して和訳)

Gwénaële CALVÈS (Professeure à l'Université de Cergy-Pontoise)(セルジ=ポントワーズ大学教授)
「予防的に女性に認められる優遇措置の合憲性:仏米の比較考察」
「私は完全に『ディスクリミナシオン・ポジティブ(積極的差別)』という表現に与します。その理由はきわめて単純です。(…)つまり――まさに――『ディスクリミナシオン・ポジティブ』という言葉を用いる場合に、優遇的に特別なカテゴリーに焦点をあてることができ、そのカテゴリーに狙いを定め、またそのカテゴリーの範囲を画定できるのです。」
(ディスカッションより抜粋して和訳)

Janine MOSSUZ-LAVAU (Directrice de recherche au CNRS, CEVIPOF-Sciences Po)(フランス国立科学研究庁・政治研究センター主任研究員)
「候補者を指名するのは、つまり候補者が男性か女性かを指名するのは、他ならぬ政党であって、有権者には候補者(を指名すること)に対して全く自由がありません。したがって、パリテ法は厳密にはまさにこの点について何を変えるものでもありません。(…)パリテ法を制定せずに、そのときただ選挙によって選出される議員職を制限しただけだったなら、それによってパリテ法のもつ効果をもちえたかわかりません。さらには、今日さらに推進しようとしている団体から疑問の声があがっていたでしょう」
(ディスカッションより抜粋して和訳)

嵩さやか(東北大学法学研究科助教授)
「女性労働との関係で注目すべき点は、次世代育成支援対策推進法が使用者に、労働と家庭生活との両立に関する被用者のニーズに応えるべく、特別の行動計画を策定することを義務づけた点です。この使用者に対する義務の導入は、女性労働促進策における使用者の役割の変容を意味しているのです。すなわち、これからは、雇用する被用者のニーズに応え、問題を解決するために積極的に行動することが使用者に求められるようになったのです。」
(報告より抜粋して和訳)

水町勇一郎(東京大学社会科学研究所助教授)
「一方で『前近代的』性格をもつ閉鎖的かつ共同体的な話合い文化が各企業内に残存しつつ、他方では、近代ヨーロッパで生じている労働立法も実態としては十分に浸透していない社会では、交渉による問題解決を勧める『手続的』法あるいは『構造的』法に『重心を移していくこと』は、近代的な保護を後退させ、封建的共同体社会への回帰へと進んでいくことになりかねないのです。」
(報告より抜粋して和訳)