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国際シンポジウム「両性平等と積極的差別是正措置」
ÉGALITÉ DES SEXES ET DISCRIMINATION POSITIVE
---- ANALYSE JURIDIQUE COMPARATIVE

内容日時・場所プログラムタイムテーブル挨拶報告者出版

■ヨーロッパ法およびフランス法における差別概念の考察

Danièle LOCHAK (Professeure à l'Université de Paris X-Nanterre)
(パリ第10大学教授)

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要旨

 語源的には、「discrimination(差別)」という言葉は結局のところ対象を区別する行為に他ならないとすれば、この言葉は法律用語により含意される否定的な意味合いをもつものであるということを認めざるを得ない。あらゆる形態の差別に対し法の保護を認めないとする意思はこの点について疑いを容れることはできないだろう:つまり、差別は基本的に禁止すべきものであると思われる。様々な法的手段に応じて、差別の概念は常に同一の内容をもつものではないし、同一の定義をもつものでもない。例えば、広義の概念では、差別は不当な処遇の相違と同視され、他方でより狭義の概念ではある特徴――性別もそれに含まれるのだが――に基づく一定の集団への帰属を理由に特に弱い立場にある者が被害者となる不利な処遇だけを差別として考えるということになる。共同体法あるいは社会的政治的な論争の影響を受けて、特に「間接差別」――とりわけ性別に基づく差別についてヨーロッパ共同体裁判所(CJCE)が用いる――そして「積極的差別」という別の概念が登場することになった。
 また、直接差別あるいは間接差別は不平等を生み出すあるいはそれを大きくすることを理由に禁止されているのに対し、積極的差別は形式的な平等から脱することで、さらには、より積極的な方法では「逆」差別という形をとることで、実質的な平等を回復することを目的とするものである。積極的差別という言葉が事実上の不平等を小さくすることを目的としている主意主義的な政策のなかで講じられる優遇措置で、人々の状況に関連する不利益を補うためにあるカテゴリーあるいはある集団を優遇する措置を指すのだとすれば、「積極的差別」という言葉は日常用語のなかでも法律用語のなかでも統一的かつ安定した定義をもたないということを認めなければならない。フランスでは、「積極的差別」という言葉を用いることが論争を生じさせた。実際、優遇措置を講じることがためらわれ、また、いずれにせよ優遇措置を実施することが難しいとしても、それを全体として破棄することには躊躇を覚える。というのは、優遇措置を講じることが「体系的な差別」を食い止めることのできる唯一の手段となるからである。