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国際シンポジウム「両性平等と積極的差別是正措置」
ÉGALITÉ DES SEXES ET DISCRIMINATION POSITIVE
---- ANALYSE JURIDIQUE COMPARATIVE
内容|日時・場所|プログラム|タイムテーブル|挨拶|報告者|出版
■『ポジティブ・アクション』『アファーマティブ・アクション』と "discrimination positive" という概念の比較法的分析
辻村みよ子(東北大学法学研究科教授、東北大学ジェンダー法・政策研究センター長)

要旨
「ポジティブ・アクション」という概念とそれに関連する諸措置について、それが指しているものが多様であることは知られているところである。このことは、国際法上の「暫定的特別措置」、EUにおける「ポジティブ・アクション」あるいは「アクション・ポジティブ」、アメリカで用いられている「アファーマティブ・アクション」、さらにはフランスにおける「ディスクリミナシオン・ポジティブ」を問わずそういえる。統一的な用語がないために、――各国で――同じことについて論じているのかどうかという問題がなお残されているのである。こうした点からすれば、危ういほどに用語の矛盾をついている「ディスクリミナシオン・ポジティブ(積極的差別)」という表現は間違いなくある程度の曖昧さを生じさせる。日本政府は物議をかもすことを本能的に避けようと、より中立的な表現である「ポジティブ・アクション」という用語を用いることとしている。
用語の問題が克服されたとしても、別の問題、つまり対象とされている目的の問題が生じることになる:つまり、これらの措置は法律の前の平等を目的としているのか事実上の平等を目的としているのかということである。機会の平等なのか、結果の平等なのかといってもよい。
こうした迷いからポジティブ・アクションを分類しようとする試みが生まれることになる。ポジティブ・アクションが厳格なものか、緩やかものかあるいは柔軟なものかという分類である。