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国際シンポジウム「両性平等と積極的差別是正措置」
ÉGALITÉ DES SEXES ET DISCRIMINATION POSITIVE
---- ANALYSE JURIDIQUE COMPARATIVE

内容日時・場所プログラムタイムテーブル挨拶報告者出版

■予防的に女性に認められる優遇措置の合憲性:仏米の比較考察

Gwénaële CALVÈS (Professeure à l'Université de Cergy-Pontoise)
(セルジ=ポントワーズ大学教授)

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要旨

 アメリカと同様にフランスでも、立法府は可決した法律が男女の状況に生じさせる効果に配慮する義務を負っていない。男女に一様に適用される何らかの措置が、事実上は、両性間の不平等を悪化させている場合でも、当該措置は憲法裁判官から違法の判断を受けるわけではないのである。換言すれば、間接差別はフランス憲法によっても、アメリカ憲法によっても禁止されていないということである。
 しかし、立法府は「ジェンダーに着目した特別の効果を検討する」(ジェンダー・メインストリーミング)義務を負うものではないにせよ、一見中立的な措置が女性にもたらす不利な効果を見越して立法を行うことは当然に許されている。悪影響が不可避であると知りつつ当該措置を講じようとする場合、立法府は法によって生じるあるいは増大する不均衡を補うための優遇措置を女性に認める規定をおくことができる。この場合、ディスクリミナシオン・ポジティブ(積極的差別)は法によってもたらされる間接差別を阻止するための予防的なものとして定められる。こうして、メインストリーミング的手法の延長線上にあるものとして解される予防的アファーマティブ・アクション概念はおそらく一見感じたほどに「奇異で不合理な」ものではない。
 合憲性を判断する裁判官にとって、予防的アファーマティブ・アクションはなおいくつかの問題を生じさせるものである(もっとも、こうした特殊なディスクリミナシオン・ポジティブの形式に特有の問題は一部でしかない)。
 年金改革に関する2003年8月21日の法律を素材に予防的アファーマティブ・アクションから生じる諸問題を検討したい。同法は満額年金受給権を取得するために必要な保険料納付期間を延長することを定めている。そしてその際、そのような改革が民間部門で被用者として就労している女性の大多数に対してもたらす特に不利な効果を緩和しようとしている。とりわけ、類似の事案でアメリカの最高裁判所が発展させてきた判例に依拠しつつ、フランスの憲法院がこの点に関する是正措置の合憲性を認めた判決を分析する。