教授
度山 徹/DOYAMA Toru

度山 徹 顔写真

専門分野

社会保障政策、年金政策、家族政策

主な担当科目

公共政策ワークショップⅠプロジェクトC「ジェンダー・ギャップに挑む」(通年)
実務政策学C「社会保障論」(前期)
実務政策学D「家族政策演習」(後期)

学生へのメッセージ

昨年(2024年)公共政策大学院創立20周年に際して寄稿したメッセージです。
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 私が大学を卒業した頃には、まだ全国どこにも公共政策大学院のような学びの場がありませんでした。もう少し勉強したかったのにという思いを引きずりながら行政を仕事として選択した私は、若い頃から、制度がこうなっているというだけでは納得せず、いかなる必要性や社会背景のもとでこの制度が形作られたのか、制度が果たしている役割や意味は何か、他の国ではどうなっているのか、研究の領域ではこれまでどのような議論がなされ議論の到達点はどこにあるのか、など調べて、自分の中で納得ができなければ仕事ができないという性格で、一緒に仕事をした上司や部下にはかなり厄介な存在であったと思います。
 いつの頃からか、こうして考えてきたことを次の世代の方々に伝えたいと考えるようになり、役所の中でずっと言い続けて、昨年ようやくそうしたチャンスをいただくことができました。実務家教員として受け入れていただいた先生方と学生さんに支えられ、とても充実した時間を送ることができております。
 4月のワークショップのスタート前は自分自身とても不安が大きかったのですが、政策に関係する資料や文献などの材料をメンバーはどんどん吸収していき、1か月も経たないうちに、自分たちで議論をどんどん進めていくようになりました。ワークショップで展開される議論を聞きながら、メンバーの学ぶ意欲と問題意識の高さに驚くとともに、若い世代の意識や直面している課題などを肌で感じることができるのも、私にとって大きな学びとなっています。
 ここまで成熟した社会の中で、簡単に解決できる問題なんて何一つありません。日本社会は基本的にOJT重視の考え方が強いですが、霞が関も大企業も制度疲労を起こしています。こうした困難な状況と課題に直面するこれからの世代にとって、学部は卒業するけれどもう少し学んで社会に出たい、あるいは、社会に出たけどもう一度学びたいと考える方々にとっての主体的な学びの場の必要性はますます大きくなるでしょう。そうした期待と必要性に応えていけるよう、東北大学公共政策大学院の発展を心より願うとともに、現在担当しているワークショップを実りあるものにできるよう、メンバーとともに精一杯努力したいと考えます。
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 2025年度は公共政策大学院の公共政策ワークショップⅠ-C(「ジェンダー・ギャップに挑む」)を担当します。
 世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数(The Global Gender Gap Index:GGGI)で、2024年におけるわが国は146か国中118位という不名誉な位置に甘んじています。しかしながら、このことがどこまでわが国の政治行政の重要課題として認識され、具体化されているか、また、どのくらいの人がそもそもこの大きな格差を改善すべき課題と認識しているかについては、非常に心許ない状況と言わざるを得ません。一方で、わが国の社会経済全体に大きな影響を及ぼしつつある少子化の進行の問題、国土の均衡ある発展を目指して取組みが行われていても歯止めがかからない東京圏への一極集中と地方の人口流出、政治経済分野での同質性の高いメンバーで行われる意思決定におけるガバナンスの欠如など、わが国の社会経済が抱える構造的な問題の背後に、ジェンダー・ギャップの問題が潜んでいることが指摘されるようになっています。
 これまで学生の皆さんが歩んできた教育段階までの過程では、大きなジェンダー・ギャップを感じる局面はそれほど多くなかったかもしれません。しかし、現実の社会では、まだまだ性別役割分業が強かった頃の慣行が根強く残っていて、皆さんが社会に出たときに、諸外国と比較しても大きなジェンダー・ギャップを生んでいる現実に直面することも少なくないと考えられます。
 であるからこそ、これから社会に出て行く皆さん(男性も女性も)に、これまでの社会経済が暗黙の前提としてきたことに縛られず、どのように行動していくか考えていただきたいと思い、ワークショップのテーマに選びました。
 もちろん簡単に解決策の見つかる課題ではありませんが、ジェンダー平等が世界的な課題であることを実感しつつ、私たちの社会を相対化して考えるために、和洋の文献に触れ、海外調査で他国の実践にも学びながら、皆さんと一緒に学びを深めていきたいと考えています。

学歴および職歴

職歴

○ 1988年4月に厚生省(当時)に入省。
○ これまでの主な職歴、担当分野
《子ども・子育て支援》
2004.7~2007.8(雇用均等・児童家庭局(当時)総務課少子化対策企画室長)。地域子育て支援拠点(子育てひろば)の普及啓発のため全国各地で開催される研修会で講演を実施。2007年の「子どもと家族を応援する日本」重点戦略の策定に当たっては、世界の家族政策の動向を分析したり、将来の社会構造の変化を踏まえた必要な対策の規模を試算するなど、中心的な役割を果たす。近年では、2022年の経済対策で打ち出された「伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施」(出産・子育て応援交付金)の立案にも関与。
《生活困窮者自立支援》
2009.7~2011.7(内閣府参事官(社会システム担当))。リーマンショック後の生活困窮者対策が課題となる中で、伴走型相談支援の制度化を模索し、現在の生活困窮者自立支援制度のベースとなった「パーソナル・サポート・サービス」のモデル事業を、全国の伴走型相談支援の先駆者とともに企画実施。
《年 金》
2000.7~2004.7(年金局企画課、年金課、総務課課長補佐)、2012.9~2016.6(年金局年金課長、総務課長)、2018.7~2020.8(大臣官房審議官(年金担当))と10年近く在籍。現在の年金財政フレームを確立した2004年の制度改正に、検討の初期段階から法案の成立まで関わったほか、2014年と2019年の年金財政検証、それらの結果を踏まえた2016年と2020年の制度改正に関わる。年金局在籍期間を通じて、経済界、労働界、年金関係団体等を対象に多数の講演を実施。
《社会保障政策全般》
2007.8~2009.7(社会保障担当参事官室政策企画官)、2016.6~2018.7(参事官(社会保障担当))、2020.8~2021.9(大臣官房審議官(総合政策担当)。社会保障政策全般を統括する部局に在籍し、経済財政諮問会議における社会保障関係の議論への対応、社会保障・雇用関係の税制改正への対応、社会保障と税の一体改革の推進、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」のシミュレーション等にかかわる。
◯ 環境庁(当時)、内閣府、山口県に出向経験あり。
◯ 早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(2016年度より、春学期「年金制度と法」を担当)
◯ 社会福祉士
◯ CFP®認定者(日本FP協会認定)

学会及び社会における活動等

社会における活動事項

東北厚生局地域共生・地域づくり推進本部参与(2023.12.1~)
社会福祉法人宮城県社会福祉協議会福祉サービス利用に関する運営適正化委員会委員(2023.11.1~)