教授
水野 紀子/MIZUNO Noriko

水野 紀子 顔写真

専門分野

民法、家族法

主な担当科目

学部:民事法入門、民法総則、不法行為法、家族法、民法基礎演習、民法演習
法科大学院:民法Ⅰ、民法Ⅲ、実務民事法、消費者・家族と法、医事法

個人ウェブサイト

下記をご覧ください。
http://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/

学生へのメッセージ

 法律というと、憲法を別にすると、日本人には、刑法のほうがなじみのある法イメージで、民法はぴんと来ないという人が多いのではないでしょうか。でも西欧法では、民法のほうがむしろ典型的な法のイメージでしょう。
 民法は、市民の共存のためのルールです。売買や賃貸借などのさまざまな契約法、所有権などの権利、事故などで被害が生じたときの賠償を定める不法行為法、意思能力や行為能力と人としての権能や時効などの基本的な諸制度、婚姻や離婚や親子などの家族関係を定める法,相続法など、およそあらゆる場面の人と人との関係を定める基本法です。もめごとが生じたときに民法を適用したら、必ず答えが出て、紛争が解決できることになっています。そのルールに従ってくれない、たとえば貸金を返してくれないというと、裁判所に訴えて強制してもらうことができます。
 民法のルーツは,ローマ法です。ローマで民法が生まれたのは、必然だったように思います。ローマはあれだけ大きな帝国
で、異なる文化の人々をその中に含んでいました。小規模の集団であれば、皆から信頼される人柄の長老が、すべてをわきまえていて、彼の裁量で紛争を解決するのが一番効率的です。要するに,三方一両損の大岡裁きです。遠山の金さんのように、なぜか何が起こったのかすべてを知っていて、いざとなれば桜吹雪を見せながら、正しい裁きをしてくれるという裁判官です。でもこのような裁判は、ある程度大きな集団になると、ありえない幻想です。文化を共有していればまだしも、文化が違う集団になると、もう裁判はできません。公平に裁くためには、言語化されたルールが必要です。しかもそのルールは,内部に矛盾がない体系的なものでなくてはならず、すべての紛争に答えが出るものでなくてはなりません。そういう「書かれた理性」としてローマ時代に創られたのが,民法でした。教会法が勢力を持った中世を経て、ヨーロッパ近代が再発見して、民法典として再編成して立法しました。日本民法は,ドイツ民法とフランス民法を主に参考にして、明治時代に立法されたものです。
 民法は基本法で、市民間のもめ事、紛争の利害調整を行う基礎になります。民法には、問題を分析して解決する道具立てがいろいろ備えられています。まったく新しい事象でも問題点の抽出をきちんとすれば、適用するにふさわしい類似ルールがあり、微妙な修正を加えるだけで全体とのバランスをとりながら解決するルールを見出すことが可能です。例えば、今、電子マネーが注目されてきています。民法学者は、民法の金銭取引の法から金銭の本質的な機能に遡り、それに必要な修正を加えて電子マネーの制御法を考えます。このように民法は絶えず現実と取り組む実学です。現実に適用することによって、民法の概念自体にも内容がフィードバックされます。不法行為の同じ条文が、荷馬車の事故にも公害の時代にもモータリゼーションにも適用されることによって、条文の機能を微妙に変化させています。でも同じ概念を用いて安定的な答えが出るというしくみそのものは、維持しているのです。
 高校生には、なじみがないかもしれませんが、法学は、本当におもしろい学問だと思います。理論的体系的な説明可能性を追求して、現実に適用する科学です。純粋な科学でもなく文学でもない、相対的真実を追究するという特徴があります。理論的でありかつ実践的な学問なので、とてもダイナミックなおもしろさがあります。是非、法学部で勉強してみてください。

学会及び社会における活動等

所属学会

日本私法学会理事、日本社会(家族と法)理事、比較法学会、日仏法学会など

社会における活動事項

国:生命倫理・安全部会委員、生命倫理専門調査会委員、出入国管理政策懇談会委員、相続法制検討ワーキングチーム委員、など
宮城県:労働委員会会長、消費者被害救済委員会会長、医療審議会委員、など