留学先:オスロ大学(ノルウェー) 期間:2024年8月~2025年6月
1.1 留学に至った経緯
なぜ北欧?
留学先として北欧を選んだのは、”世界一幸福な国々”と呼ばれるその社会を、自分の目で見てみたいと思ったからです。
大学に入る前は、国際問題に強い関心があって、将来は国境を越えて活躍できるような仕事がしたいと思っていました。
でも、法律を学ぶ中で、日本の社会課題——少子化、経済の停滞、ジェンダーギャップなど——に目が向くようになりました。
日本の現状に対する漠然とした不安を抱える中で、「他の国はどうしてうまくいっているんだろう?」という素朴な疑問が浮かびました。
その答えを探す手がかりとして、北欧の現場に飛び込んでみたいと思いました。
なぜノルウェー?
北欧の中でも、どうしてノルウェーを選んだのか?
それにはいくつか理由があります。まず一つは、仲の良い先輩が以前オスロ大学に留学していて、その話を聞いていたことで、なんとなく親しみがあったから。初めての長期留学なので、少しでもイメージが持てる場所の方が安心感がありました。次に、ノルウェーは北欧の中でも人口が比較的少なくて、だからこそ「社会の仕組みが人々の暮らしにどう影響しているのか」を観察しやすいんじゃないかなと思ったからです。社会政策と人々の反応、その距離感が近そうだなと。そしてもうひとつの決め手は、オスロ大学には日本語学科や中国語学科があって、アジアに関連した授業が豊富にあること。せっかく海外で学ぶなら、日本やアジアを別の視点から捉える授業も受けてみたいと思っていました。
1.2オスロ大学について
<オスロ大学>
名称: University of Oslo
学生数:約3万人
学部:8学部
ノルウェーの首都にある国立大学で、国内で最古かつ最高峰の総合大学
オスロ大学はノルウェー最大の大学ということもあって、学生数も多く、留学生の受け入れ体制が本当にしっかりしていました。
その中でも、特に印象に残っているのが「Buddy Week」という新入生向けのイベントです!
現地の学生が“バディ”として一人ひとりについてくれて、BBQやソリ滑り、街歩きなど、季節ごとのいろんなアクティビティを一緒に楽しむことができました。はじめてのノルウェー生活で少し不安もあったけれど、この1週間のおかげで一気に打ち解けることができて、本当にありがたかったです
1.3ノルウェーでの暮らし
ノルウェーでの生活は、最初こそ緊張しましたが、気づけばすっかり馴染んでいました。
公用語はノルウェー語ですが、英語の通じる環境だったので、日常生活で困ることはほとんどありませんでした。特に若い人や大学関係者は英語がとても上手で、スーパーやカフェでも英語で十分対応してもらえます。通貨はノルウェー・クローネ(1NOK ≒ 14円)で、キャッシュレスがかなり進んでいて、現金を使う場面はほぼゼロ。カード1枚で、交通機関もスーパーも問題なしの快適さでした。私が住んでいたのは、共用キッチン+個別バスルームつきの寮で、1ユニットにつき8人(男女混合)での共同生活。キッチンで一緒に料理をしたり、食後におしゃべりしたり、自然と交流が生まれる空間でした。生活費は月に約14万円ほど。
内訳は、家賃が約9万円、食費が3万円、交際費が1万円、SIM代と定期代がそれぞれ5000円くらい。
ノルウェーは外食が高いので、友人と遊ぶときもほとんど家で過ごすことが多く、意外と出費は抑えられました。現地での過ごし方としては、友達と一緒にカードゲームやボードゲーム、パズル、映画鑑賞など、家の中でまったり過ごすことが多かったです。
日本でよくある「みんなで外に出かけて遊ぶ」という感じとはちょっと違って、おうち時間をゆったり楽しむスタイルが印象的でした。そして何よりうれしかったのは、現地で新しい趣味がいくつもできたこと!
まず、編み物に目覚めて(笑)、棒針編みとかぎ針編み、両方チャレンジしてみました。
さらに、パン作りにも挑戦して、シナモンロールやメロンパンを焼いたことも!材料をそろえて、こねて、焼き上がりの香ばしい香りが部屋に広がる瞬間がたまらなく好きで、週末のちょっとした楽しみになっていました。それから、寮のすぐ近くにある湖を毎朝1時間ほどかけてぐるっと散歩するのが日課になっていて、その時間は、自分の気持ちを整理したり、ぼーっと空を見上げたりする大切な時間でした。
1.4 留学先での活動
ノルウェーでの留学では、「今しかできないことは全部やろう!」と決めて、とにかくいろんな活動に飛び込みました。たい焼きの販売や折り鶴ワークショップ、日本文化振興イベント、学内カフェでのボランティア、言語交流カフェ、日本語教室のアシスタントなど、本当に盛りだくさん!どれも貴重な経験ばかりでした。
中でも忘れられないのが、たい焼きの販売とソーラン節の披露。たい焼き販売は、TikTokで予想外に広まり、ありがたいことに大盛況。
日本のスイーツに興味津々のノルウェー人がどんどん列に並んでくれて、気づいたら4時間ノンストップでたい焼きを焼いてた日も(笑)。
振り返ってみると、ノルウェーでいちばん身についたスキル、それはたい焼きを焼くことだったかもしれません(笑)。
そしてもうひとつ、日本文化振興イベントで披露したソーラン節!!
中学生ぶりのソーラン節で正直、身体がついてこなかった…!
イベント当日はどうにか踊りきったものの、その代償として、1週間くらい筋肉痛に苦しむことに(笑)。でも、現地でできた友人たちと朝練を重ねて、一緒に日本の伝統を届けられたことは、忘れられない思い出になりました。
1.5留学を通しての学び
私の留学生活を一言で表すと、『自分と向き合う一年』でした。
日々の中で考えること、迷うこと、立ち止まることが多くありました。
それまでの自分の考え方や価値観を、一度立ち止まって見直す時間になったと思います。というのも、ノルウェーでの生活は、日本と比べて娯楽が少なく、自分の内側に意識が向く場面が多かったように思います。
幸福とは
ノルウェーから帰国して、しばらく日本での生活に戻ってみて思ったこと。
それは、「幸せの感じ方」が少し変わったなということです。
留学前の私は、「世界一幸せな国に行けば、自分も幸せになれるかもしれない」って、どこかで思っていました。
でも実際にノルウェーで暮らしてみると、当然ながら、魔法みたいに人生がガラッと変わって毎日キラキラする…なんてことはなくて。
最初は新鮮でワクワクしていた日々も、時間が経てば当たり前のように“日常”になっていきました。正直、日本にいる友達のSNSで飲み会やライブに行っている様子を見るたびに、「いいなぁ…」って羨ましくなることもありました。
外食が気軽にできて、服もたくさん選べて、カラオケや漫画喫茶みたいな娯楽も充実していて。
そんな日本ならではの“便利で刺激的な日常”が恋しくてたまらなくなる瞬間もあったんです。
でも、いざ日本に帰ってみると、今度は逆に、ノルウェーでの生活が恋しくなっている自分がいました。朝の散歩で湖を眺めたり、休日にパンや編み物を楽しんだり、友達と家でのんびりボードゲームや映画を楽しんだり…。
ノルウェーで流れていた、あのゆったりとした時間。
就活や授業に追われている今の生活の中で、その“余白”のある日々がすごく懐かしく感じるようになりました。結局、私が気づいたのは――
「幸せは、どこかにあるものじゃなくて、自分の中に見つけにいくもの」なんだってことです。あれがあったらいいのに、ここがこうだったらもっと幸せなのに、って“ないもの”ばかりを見てしまうけれど、
今ある環境の中で、自分なりの楽しみや心のゆとりを見つけられる人が、いちばん幸せなのかもしれません。