大泉結さん

留学先:オウル大学(フィンランド) 期間:2024年9月〜2025年5月

・留学理由

私が留学を決めた最も大きな理由は、北欧教育への関心でした。大学受験の経験から、日本の教育制度に疑問を持ち、世界的に賞賛されている北欧教育を学び、その実態を知るべくフィンランドへの留学を決めました。また実践的な語学力を得たいと思っていたことも理由の一つです。

 

・フィンランドについて

フィンランドという国の最大の魅力は、その自然の豊かさであると思います。いたるところに湖と森があり、冬はオーロラ、夏は燃えるような夕日を日常的に楽しむことができます。

・大学生活

授業は一日2コマ、多い時は3コマほどの授業数でした。履修数自体は多くありませんが、その分グループワークが多く課され、そのためのミーティングに時間を割く必要がありました。教育学の一般論を学ぶ授業から、フィンランドの教育のナショナルカリキュラムを学ぶ授業、フィンランドの子供たちが学ぶ手芸教育を、実際に作品を作りながら学べる授業など、教育について広い範囲の授業を履修しました。また音楽が趣味であったので、構内の練習スペースで日常的にピアノを練習し、オウル日本協会のイベントで演奏したり、日本の伝統音楽をフィンランドの学生らとともに演奏して発表したりしました。

 

・学習について

授業はディスカッションや簡単なグループワークなどが毎授業課され、毎回内容の濃い授でした。留学当初はディスカッションやグループワークについていけず、貢献できないことが大きな悩みでした。満足のいく語学力を得られるよう、教育に関するテーマについて英語で自分の意見を文章で書き、それをAIに添削させるという練習を日常的にしたり、英語のポッドキャストを聞いたりと、努力を継続しました。その結果少しずつディスカッションにおいて意見を英語で言語化し、グループワークにも貢献できるようになりました。

 

・学校訪問

フィンランド教育が実際に現場でどう行われているか興味を持ち、現地の学校へ訪問し、授業の様子を見学しました。インターナショナルスクールのフィンランド語の授業や、現地で暮らす日本人の子供たち向けのクリスマス会、フィンランド特有の手芸教育の授業も見学しました。訪問を通して共通して感じたことは、授業の自由度の高さです。フィンランド語の授業では教師が独自の教材を使って少人数授業をしており、手芸教育においては、生徒が作りたいものを計画の段階から各々自由に進めていました。座学では感じることのできない、フィンランド教育の実態を体験することができました。

 

・留学の成果

留学の成果としてはまず、北欧教育の実態を知り、自ら経験できたことです。概して自由度、生徒の幸福度の高い教育現場だと感じた一方で、いわゆる「ゆとり」が問題になっていることにも気づきました。「北欧教育」は絶対的にベストなものではなく、必ずしも日本という環境で北欧の教育システムが最大の効果を発揮するとは限らないと考えるようになりました。また語学については未だ完璧とは言えませんが、話すことに対するストレスがなくなり、大きな壁を超えることはできたと感じています。さらに人生観についても留学を通していくつか得たものがあります。フィンランドでの暮らしは、日本と比べて社会も人もゆったりとしており、自分の時間も多く確保できました。その中で、日常における小さな幸せに気づくことができるようになったと感じています。また、留学では数えきれない不安や困難に直面しましたが、なんとか対処して乗り越えられている自分に気が付きました。困難があってもきっとうまくいく、なんとかなる、自分でなんとかすればよいとポジティブに物事をとらえられるようになりました。

 

・最後に

留学前耳にした、「留学は魔法ではない」という言葉が印象に残っています。留学に行けば周りの環境のおかげで自然と語学が流暢になる、外交的になれる、といった単純な幻想を私自身も以前は抱いていました。しかし実際は留学先でこそ積極的に行動し努力をしなければ何も変えることができないと感じました。留学をすれば、皆と違う挑戦をしている人、になれると思っていましたが、留学先では留学生はあふれるほどおり、日本人も多く住んでおり、その環境の中での私は非常に「普通」の留学生であることに気がつきました。そこでその環境を活かして努力し、自分だけの留学にできるかどうかが重要だと思っています。留学に行くことがゴールだと思っていましたが、これらを感じてからは、語学を含め、個を出せるよう努力を怠らないようにしようという思いが強くなりました。

9ヵ月もフィンランドという美しい国で暮らし、この思い出は一生忘れないだろうな、と感じていました。しかし帰国してから、あっさりと日本での日常生活に戻り、適応していく自分、忘れないであろうと思っていた記憶もどんどん薄れていく自分に気づき、非常に悲しさ、悔しさを覚えている日々です。留学を目指す方には、ぜひ思い出を日記などで形に残したり、将来のキャリア選択に活かしたりと、単なる記憶にとどめず、一生のものとなるようにしてほしいと思っています。

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