2017(平成29)年度

日時 4月15日(土)13時30分より
場所 東北大学法学研究科大会議室(川内南キャンパス・法学研究科棟3階)
報告者 松原 俊介 氏(東北大学大学院博士後期後期)
事件 東京高判平成27年7月1日(平成26(ネ)5258号)判例集未登載

 

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づき男から女への性別の取扱いの変更の審判を受けた原告(被控訴人)及び同人が代表取締役を務める原告会社が、株主会員制のゴルフ場を経営する被告(控訴人)会社及び同ゴルフ場の運営団体である被告(控訴人)クラブに対し、原告の性別変更を理由とする被告らによる原告会社に対する被告クラブへの入会拒否及び被告会社株式の譲渡承認拒否は、憲法14条1項の趣旨等を包含する公序良俗に反し違法であると主張して、共同不法行為(民法719条1項)に基づき、原告及び原告会社が、被告らに対して損害賠償金の連帯支払を求めたところ、原判決は、原告の請求を一部認容し、その余の請求及び原告会社の請求をいずれも棄却したため、被告らが、原告の請求を一部認容したことを不服として控訴をした事案において、原判決は相当であるとして、控訴をいずれも棄却した事例。

一審:静岡地裁浜松支部判平成26年9月8日(平成24年(ワ)627号)判例時報2243号67頁

報告者 髙畑 柊子 氏(東北大学大学院博士後期課程)
事件 ①最二判平成28年7月15日(平成25(行ヒ)533号)判時2316号53頁

②最二判平成28年7月15日(平成26(行ヒ)472号)判時2316号58頁

 

鳴門競艇従事員共済会から鳴門競艇臨時従事員に支給される離職せん別金に充てるため、鳴門市が平成22年7月に共済会に対して補助金を交付したことが、給与条例主義を定める地方公営企業法38条4項に反する違法、無効な財務会計上の行為であるなどとして、市の住民である上告人らが、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被上告人市長を相手に、当時の市長の職にあった者に対する損害賠償請求をすることを求めるとともに、被上告人市公営企業管理者企業局長を相手に、当時の市の企業局長及び企業局次長の各職にあった者らに対する損害賠償請求、当時の市企業局競艇企画管理課長の職にあった者に対する賠償命令並びに共済会に対する不当利得返還請求をすることを、それぞれ求めた住民訴訟で、原判決は、離職せん別金が退職金としての性格を有し、本件補助金の交付が実質的に臨時従事員に対する退職金支給としての性格を有していることは否定できないが、臨時従事員の就労の実態が常勤職員に準じる継続的なものであり、退職手当を受領するだけの実質が存在すること等からすれば、本件補助金の交付が給与法定主義の趣旨に反し、これを潜脱するものとはいえず、本件補助金の交付に地方自治法232条の2の定める公益上の必要性があるとの判断が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであるとは認められないから、本件補助金の交付が違法であるということはできないとし、上告人らの請求を棄却したため、上告人らが上告した事案において、職権による検討で、原判決のうち請求を棄却すべきものとした部分には明らかな法令の違反があるとし、当該部分につき、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、上記請求に係る訴えを却下し、A、B、C及びDの各損害賠償責任の有無並びに共済会の不当利得返還債務の有無につき更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととした事例。①一審:徳島地判平成25年1月28日判例地方自治383号18頁

控訴審:高松高判平成25年8月29日判例地方自治383号16頁

②一審:徳島地判平成26年1月31日判例地方自治414号28頁

控訴審:高松高判平成26年8月28日判例地方自治414号32頁

 

日時 日時:5月20日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 文科系総合講義棟2階 第1小講義室
報告者 千國 亮介 氏(岩手県立大学専任講師)
事件 最三判平成29年3月21日(平成27(行ツ)375号)裁判所ウェブサイト

 

上告人(原告・被控訴人)の妻が、公務により精神障害を発症し自殺したため、上告人が、遺族補償年金の支給請求をするとともに、遺族特別支給金等の支給申請をしたが、いずれも不支給とする旨の決定を受けたため、被上告人(被告・控訴人。地方公務員災害補償基金)に対し、上記処分の取消しを求め、第一審では、上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、控訴審では、妻について、遺族補償年金を受給できるものとするが、夫について、「一般に独力で生計を維持することが困難である」と認められる一定の年齢に該当する場合に遺族補償年金を受給できるものとする旨の遺族補償年金の受給要件に係る区別は、合理性を欠くということはできないとし、第一審判決を取り消し、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち、死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反しないとしたうえで、原審の判断は正当として是認することができるとし、上告を棄却した事例。

一審:大阪地判平成25年11月25日(平成23(行ウ)178号)判時2216号122頁

原審:大阪高判平成27年6月19日(平成25(行コ)211号)判時2280号21頁

報告者 和泉田 保一 氏(山形大学准教授)
事件 前橋地判平成29年3月17日(平成25(ワ)478号)裁判所ウェブサイト

 

東京電力福島第一原発事故において、被告国が規制権限を行使して被告東電に本件事故の結果回避措置を講じさせるべきで被告国の規制権限不行使の違法等を認め、原告住民らに対する損害賠償責任を認めた事例。

 

日時 日時:6月17日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 御幸 聖樹 氏(横浜国立大学准教授)
事件 最一判平成27年12月14日(平成26(オ)77号、平成26(受)93号)民集69巻8号2348頁

 

被上告人が昭和49年に電電公社を退職した際に日本電信電話公社共済組合(旧共済組合)から退職一時金として14万1367円を受給したところ、被上告人が満60歳となり旧共済組合の組合員であった期間を計算の基礎とする老齢厚生年金及び退職共済年金の受給権を有するようになったため、旧共済組合の権利義務を承継した上告人が、被上告人に対し、当該退職一時金として支給を受けた上記の額に利子に相当する額を加えた額に相当する金額66万0460円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審が、上告人の請求のうち退職一時金利子加算額の利子相当額に係る部分を棄却したため、上告人が上告した事案において、厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う国家公務員共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令4条2項の利率の定めが無効であるとした原審の判断には、憲法解釈の誤り及び結論に影響を及ぼすことが明らかな法令解釈の誤りがあるとし、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れないとし、上告人の請求には理由があるから、これを認容した第1審判決は正当であり、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。

一審:東京地判平成24年12月26日(平成24(ワ)1499号)民集69巻8号2384頁

原審:東京高判平成25年9月26日(平成25(ネ)1057号)民集69巻8号2391頁

報告者 釼持 麻衣 氏(上智大学大学院博士課程)
事件 最三判平成26年1月28日(平成23(行ヒ)332号)民集68巻1号49頁

 

小浜市長から廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可及びその更新を受けている上告人が、同市長により同法に基づいて有限会社Bに対する一般廃棄物収集運搬業の許可更新処分並びに被上告補助参加人に対する一般廃棄物収集運搬業及び一般廃棄物処分業の許可更新処分がされたことにつき、被上告人を相手に、上記両名に対する上記各許可更新処分は違法であると主張してそれらの取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、原審は、上告人は本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとしてこれらの取消請求に係る訴えを却下すべきものとし、国家賠償法に基づく損害賠償請求を棄却すべきものとしたため、本件上告人が上告した事案において、原審の判断のうち、本件更新処分1及び本件更新処分2のうち、一般廃棄物収集運搬業の許可更新処分の取消請求並びに損害賠償請求に係る部分には、法令の解釈適用を誤った違法があるが、上告人は、平成25年5月8日に小浜市長に対して廃棄物処理法7条の2第3項に基づき一般廃棄物収集運搬業を廃業する旨を届け出た上で同年6月に廃業したことが明らかであるから、上告人が上記各処分の取消しを求める法律上の利益は失われたものといわざるを得ないとし、本件更新処分2のうち一般廃棄物処分業の許可更新処分の取消請求に係る訴えは当初から原告適格を欠いていたのであるから、本件各更新処分の取消請求に係る訴えをいずれも却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、原判決のうち損害賠償請求に係る以外の部分に係る上告を棄却し、他方、原審の判断のうち損害賠償請求に係る部分に関する部分は破棄し、本件各更新処分の違法性の有無等について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻しを命じた事例。

一審:福井地判平成22年9月10日(平成18(行ウ)5号、平成22(行ウ)11号)民集68巻1号77頁

原審:名古屋高判金沢支部判平成23年6月1日(平成22(行コ)16号)民集68巻1号102頁

 

日時 日時:7月21日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 今井 健太郎 氏(早稲田大学社会科学研究科研究生)
事件 最大判平成29年3月15日(平成28(あ)442号)裁時1672号1頁

 

車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制の処分にあたるかどうかについて、車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分にあたるとした事例。

一審:大阪地決平成27年6月5日(平成25(わ)5962号)判時2288号144頁、同平成27年7月10日(平成25(わ)5962号)判時2288号144頁

原審:大阪高判平成28年3月2日(平成27(う)966号)判タ1429号148頁

報告者 千葉 実 氏(岩手県立大学特任准教授)
研究報告 災害対策法制のさらなる体系化の方向性(仮題)

 

日時 日時:9月9日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟2階演習室2番
報告者 松村 芳明 氏(東京工業大学非常勤講師)
事件 横浜地裁川崎支部決平成28年6月2日(平成28(ヨ)42号)判例時報2296号14頁

 

社会福祉法人の認可を受けた債権者が、債務者に対し、いわゆるヘイトデモ禁止仮処分命令を申し立てた事案において、専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で、公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し、又は本邦外出身者の名誉を毀損し、若しくは著しく侮辱するなどして、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由に本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する、差別的言動解消法2条に該当する差別的言動は、平穏に生活する人格権に対する違法な侵害行為に当たるものとして不法行為を構成すると解され、また、当該法人の事業所において平穏に事業を行う人格権を侵害する違法性が顕著な場合には、当該法人は、自然人の場合と同様に、人格権に基づく妨害予防請求権として、その差別的言動の事前の差止めを求める権利を有するとして、本件申立てを認容した事例。

報告者 高橋 正人 氏(静岡大学准教授)
研究報告 橋本公宣のアメリカ司法審査論

 

日時 日時:10月21日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 高橋 勇人 氏(東北大学大学院博士課程)
事件 和歌山地判平成28年3月25日(平成26(ワ)229号)判例集未登載

 

原告が、被告が設置・管理する太地町立くじらの博物館に来館したが、捕鯨反対者を本件博物館から排除する目的で、原告が外国人であることを理由に本件博物館への入館を拒否されたところ、このような入館拒否は、憲法14条、憲法19条及び憲法21条、市民的及び政治的権利に関する国際規約26条等に反し、上記入館拒否によって精神的苦痛などを受けたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案において、さまざまな意見、知識、情報に接する自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法19条の規定や、表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれると示し、本館入館拒否は、本件博物館条例の要件を欠く違法なものであり、憲法19条、憲法21条の趣旨、目的から導かれる原告の情報摂取行為を妨げるものである等として、原告の請求を一部認容した事例。

報告者 井坂 正宏 氏(東北学院大学講師)
事件 東京地判平28年8月30日(平27(行ウ)422号・611号)判時2337号12頁

 

(1)精神保険指定医の指定取消処分につき、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律19条の2第2項所定の「指定医として著しく不適当と認められるとき」との処分事由に該当するとした厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認められないとされた事例。

(2)営業停止処分の、処分の期間が既に経過している場合において、当該処分の期間経過後においてもなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められないから、取消しを求める訴えの利益は認められないとされた事例。

 

日時 日時:11月18日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 川口 かしみ 氏(早稲田大学大学院博士課程)
事件 東京地判平成28年10月11日(平成27(ワ)5802号)判時2329号60頁

 

被告の設置する中高一貫校の教員である原告が、業務に当たり通称として婚姻前の氏を使用することを希望したにもかかわらず、被告により戸籍上の氏を使用することを強制されたと主張して、被告に対し、人格権に基づき、時間割表等において原告の氏名として婚姻前の氏名を使用することを求めるとともに、人格権侵害の不法行為又は労働契約法上の付随義務違反による損害賠償請求権に基づき、慰謝料の支払等を求めた事案において、職場という集団が関わる場面において職員を識別し、特定するものとして戸籍上の氏の使用を求めた行為をもって不法行為と認めることはできず、また、違法な人格権の侵害であると評価することもできないとし、仮に、被告の上記行為が業務命令に該当するとしても、原告が婚姻前の氏を使用することができないことの不利益を考慮してもなお、当該業務命令の適法性を基礎付けるに足りる合理性、必要性が存するというべきであるとし、被告が労働契約法上の付随義務に違反したとは認められないとして、原告の請求を棄却した事例。

報告者 笹村 恵司 氏(弁護士)
事件 事件:仙台地判平成28年8月8日(平成26(行ウ)35号)判例集未登載
身体障害者手帳交付申請却下処分取消訴訟

 

日時 日時:12月16日(土)13時30分より
場所 場所:東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 奥田 喜道 氏(北海道教育大学 特任講師)
事件 最三決平成29年1月31日(平成28(許)45号)民集71巻1号63頁

 

インターネット上で抗告人が提供する検索サービスで、検索語として相手方の住所の県名及び氏名を入力して検索すると、検索結果として、相手方が犯した児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条(平成26年法律第79号による改正前)所定の児童買春行為に係る逮捕歴を含む内容のものが複数表示されることについて、相手方が、人格権を被保全権利として、その侵害排除請求権に基づき、民事保全法23条2項の仮の地位を定める仮処分として、上記検索結果の削除を命じる仮処分命令の申立てをしたところ、原審は、本件申立てを認容する本件仮処分決定を発令し、これに対し、抗告人が申し立てた保全異議に対しても、本件仮処分決定を認可する原決定をしたため、これらを不服とする抗告人が、原決定及び本件仮処分決定をいずれも取消した上で本件申立てを却下することを求め抗告した事案において、現時点で、本件検索結果の削除又は非表示措置を求める保全の必要性があるとは認められないとして、原決定及び本件仮処分決定をいずれも取消し、本件申立てを却下した事例。

(1審)さいたま地判平成27年12月22日(平成27(モ)25159号)判時2282号78頁

(抗告審)東京高判平成28年7月12日(平成28(ラ)192号)判時2318号24頁

報告者 稲村 健太郎 氏(福島大学 准教授)
事件 最三判平成29年2月28日(平成28(行ヒ)169号)民集71巻2号296頁

 

共同相続人である上告人らが、相続財産である土地の一部につき、財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として相続税の申告をしたところ、相模原税務署長から、これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため,被上告人(国)を相手に、本件各処分(更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求めた上告審の事案において、本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき、建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや、所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として、具体的に検討することなく、減額をする必要がないとした原審の判断には、相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、本件各歩道状空地につき、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。

(1審)東京地判平成27年7月16日(平成25(行ウ)373号)民集71巻2号307頁

(2審)東京高判平成28年1月13日(平成27(行コ)286号)民集71巻2号356頁

 

日時 1月20日(土)13時30分より
場所 東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 佐久間 悠太 氏(東北大学大学院 博士課程)
事件  最一判平成25年9月26日(平成24(行ツ)399号)民集67巻6号1384頁

 

原告(控訴人、上告人)父が、原告母との間の子である原告子に係る出生の届出をしたが、戸籍法49条2項1号所定の届書の記載事項を記載しなかったため受理されなかったところ、原告らが、同号の規定のうち届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべきものと定める部分(本件規定)は憲法14条1項に違反するなどと主張して、被告ら(控訴人、被上告人)に対し慰謝料を求めたところ、原判決が、訴えを却下した第一審判決を維持し、控訴を棄却したため、原告らが上告した事案において、本件規定は、法律婚主義の制度の下における身分関係及び戸籍処理上の差異を踏まえ、戸籍事務を管掌する市長村長の事務処理の便宜に資するものとして、出生の届出に係る届書に嫡出子又は嫡出でない子の別を記載すべきことを定めているにとどまり、本件規定それ自体によって、嫡出でない子について嫡出子との間で子又はその父母の法的地位に差異がもたらされるものとはいえず、憲法14条1項に違反するものではないとし、上告を棄却した事例。

(1審)東京地判平成24年4月26日(平成23(行ウ)140号)民集67巻6号1429頁

(2審)東京高判平成24年9月27日(平成24(行コ)202号)民集67巻6号1473頁

報告者 北島 周作 氏(東北大学 教授)
研究報告 行政法の法典化-南アフリカ共和国行政法典を中心に

 

日時 2月17日(土)13時30分より
場所 東北大学川内南キャンパス 法学研究科棟3階大会議室
報告者 千國 亮介 氏(岩手県立大学 講師)
事件 広島高判平成29年12月20日(平成28(行コ)24号)裁判所ウェブサイト

 

投票することができる地位にあることの確認を請求する訴えについて、控訴人は,1審判決後に刑の執行を終えて出所しており,被控訴人(国)も控訴人が次回の国政選挙において投票をすることができる地位にあることを争っていないから,確認の利益がなくなっており,同訴えは却下すべきであるとし、国家賠償請求について、公職選挙法11条1項2号が憲法に違反するものとはいえないから,同号に係る立法行為及び同号を廃止しない立法不作為に国家賠償法上の違法は認められず,国家賠償請求は理由がない。選挙権は,個人の主観的権利という性格を持つと同時に,国家機関としての選挙人団の一員としての公権力の行使及び国家意思の形成に参画する公務としての性格を併せ持つものと解される。上記の選挙権の性格と,憲法44条本文が明文で選挙人の資格を法律の定めに委ねていることからすれば,憲法は,法律が上記公務に携わることへの適格性(公務適格性)に係る合理的な理由に基づき選挙人の資格の制限(欠格事項)を定めることを許容しているものと解される、とした事例。

(1審)広島地判平成28年7月20日(平成27(行ウ)25号)裁判所ウェブサイト

報告者 大沼 洋一 氏(弁護士・駿河台大学教授)
事件 東京地決平成28年12月14日(平成26(行ク)135号、平成28(行ク)98号)判例時報2329号22頁

 

死刑確定者として東京拘置所に収容されている申立人との、再審の請求の打ち合わせを目的とする、弁護士による面会の申出について、職員を立ち会わせた上での30分の面会しか認められなかったことにつき、このような制限は違法であるとして、東京拘置所長において、上記目的の面会について、職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分等をすることの差止め等を求めた申立人が、相手方に対し、上記本案の各訴えにおいて差止めを求める各処分の仮の差止を求めた事案において、死刑確定者の面会に際し、刑事施設の長が、その指名する職員を面会に立ち会わせ、又は面会時間を制限する措置を執る場合には、面会の許可によって認められた死刑確定者の面会の利益を制約することとなるから、刑事施設の長によるこれらの措置は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとし、一部を認容し、一部を却下した事例。

(抗告審)東京高裁決平成29年3月29日(平成29(行ス)1号)判例集未登載

(特別抗告審)最三決平成29年6月39日(平成29(行ト)52号)判例集未登載

 

日時 3月17日(土)13時30分より
場所 東北大学川内南キャンパス 文科系総合講義棟2階 第1小講義室(通常と場所が異なりますのでご注意ください)
報告者 佐々木 弘通 氏(東北大学 教授)
事件 最二小判平成27年3月27日(平成25(オ)1655号)民集69巻2号419頁

 

被上告人(兵庫県西宮市)が、上告人Y1が暴力団員であることを理由に、上告人Y1に対しては、西宮市営住宅条例46条1項柱書き及び同項6号の暴力団排除規定に基づく当該市営住宅の明渡し等を求め、上告人Y2及び同Y3に対しては所有権に基づく当該市営住宅の明渡し等を求めるとともに、上告人Y2に対して西宮市営住宅条例64条2項に基づく当該駐車場の明渡し等を求めた事案において、当該市営住宅及び当該駐車場の使用の終了に西宮市営住宅条例の暴力団排除規定を定める部分を適用することが、憲法14条1項又は憲法22条1項に違反しないとして、上告を棄却した事例。

(一審)神戸地判平成25年2月8日(平成23(ワ)1554号)判例地方自治395号71頁

(二審)大阪高判平成25年6月28日(平成25(ネ)896号)判例地方自治395号75頁

報告者 稲葉 馨 氏(東北大学 教授)
事件 最二判平成28年12月20日(平成28(行ヒ)394号)判時2327号9頁

 

日本国とアメリカ合衆国との間で返還の合意がされた沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市辺野古沿岸域に建設するための公有水面の埋立事業につき、沖縄防衛局が、前知事から公有水面の埋立承認を受けていたところ、被告(上告人、県知事)が本件埋立承認は違法であるとしてこれを取り消したため、原告(被上告人、国土交通大臣)が、沖縄県に対し、本件埋立承認取消しは違法であるとして、地方自治法245条の7第1項に基づき、本件埋立承認取消しの取消しを求める是正の指示をしたものの、被告が、本件埋立承認取消しを取り消さず、法定の期間内に地方自治法251条の5第1項に定める是正の指示の取消しを求める訴えの提起もしないことから、地方自治法251条の7第1項に基づき、被告が上記指示に従って本件埋立承認取消しを取り消さないことが違法であることの確認を求め、原審は、被告が、適法な指示に従わず、本件埋立承認取消しを取り消さないのは違法であるとし、原告の請求を認容したため、被告が上告した事案において、被告が上記指示に係る措置として本件埋立承認取消しを取り消さないことは違法であるとし、原告の請求を認容した原審の判断は、結論において是認することができるとして、上告を棄却した事例。

(一審)福岡高裁沖縄支部判平成28年9月16日(平成28(行ケ)3号)2317号42頁