2010(平成22)年度の研究会の報告者・論題

日時 第1回(5月8日(土))
報告者: 品川 仁美氏(東北大学大学院DC)
論 題: 日経新聞株式譲渡ルール事件上告審判決(最判平成21年2月17日、金判1312号30頁)
参考文献: (1)弥永真生「日刊新聞紙を発行する新聞社における従業員持株制度における合意の有効性」ジュリ1374号22頁
(2)森本滋「判批」リマークス2010年<上>106頁
報告者: 森田 果氏 (東北大学)
論 題: 険契約者による保険金請求と任意的訴訟担当
要 旨: 判例解説(東京高裁平成8年3月25日判決判タ936号249頁)
参考文献: 東京地判平成7・10・3判時1579号138頁(原審)
日時 第2回(7月10日(土))
報告者: 長畑 周史氏(青森中央学院大学)
論 題: A銀行が、再建資金の融資を計画している県からの要請でE社につなぎ融資をした後、追加融資をしなければE社が倒産する可能性が高く、つなぎ融資まで回収不能となる恐れがある状況で、E社に対して追加融資した場合において、その追加融資の一部についてA銀行取締役らの善管注意義務違反が認められた事例(四国銀行株主代表訴訟事件)(最判平成21年11月27日、判例時報2063号138頁)
参考文献: (1)弥永真生「貸出しにおける善管注意義務」ジュリスト1396号44頁
(2)清水真=阿南剛「四国銀行株主代表訴訟事件最高裁判決の検討」商事法務1899号59頁
(3)曽我幸男「銀行の取締役に融資責任を認めた最高裁平成21年11月27日判決」銀行法務21・716号4頁
報告者: 白井 正和氏(東北大学)
論 題: 友好的買収の場面における取締役に対する規律づけの一考察
要 旨: 支配・従属関係のない当事者間の友好的買収の場面を対象に、買収対象会社の取締役に対するあるべき規律づけの仕組みについて検討を試みる
参考文献: (1)森本滋「新株の発行と株主の地位」京都大学法学論叢104巻2号1頁(1978年)
(2)洲崎博史「不公正な新株発行とその規制(二・完)」民商94巻6号721頁(1986年)
(3)田中亘「募集株式の有利発行と取締役の責任」新堂幸司=山下友信編『会社法と商事法務』143頁(商事法務、2008年)
(4)弥永真生「著しく不当な合併条件と差止め・損害賠償請求」江頭憲治郎先生還暦記念論文集『企業法の理論(上巻)』625頁(商事法務、2007年)
(5)Barnard Black & Reinier Kraakman, Delaware’s Takeover Law:The Uncertain Value Search for Hidden Value, 96 NW. U. L. REV. 521 (2002)
(6)Richard E. Kihlstrom & Michael L. Wachter, Corporate Policy and the Coherence of Delaware Takeover Law, 152 U. PA. L. REV. 523 (2003)
(7)Guhan Subramanian, Go-shops vs. No-shops in Private Equity Deals: Evidence and Implications, 63 BUS. LAW. 729 (2008)
(8)Leo E. Strine, Jr., Categorical Confusion: Deal Protection Measures in Stock-for-Stock Merger Agreements, 56 BUS. LAW. 919 (2001)
日時 第3回(9月11日(土))
報告者: 山脇 千佳氏(名古屋大学研究生)
論 題: 株式会社の一人株主である取締役が、任務違背行為により会社に損害を与えた場合に、取締役の会社に対する善管注意義務又は忠実義務違反による責任が生じないとはいえないとされた事例(東京地判平成20年7月18日・判例タイムズ1290号200頁)
参考文献: (1)山下眞弘・本件評釈・金融・商事判例1329号23頁(2009)
(2)潘阿憲・本件評釈・ジュリスト1392号192頁(2010)
報告者: 吉原 和志氏(東北大学)
論 題: 代表訴訟によって追及しうる取締役等の責任の範囲
要 旨: 従前から全債務説と限定債務説の対立があったこの論点について、昨年、最高裁の初めての判断が示されたが、その理由付けや射程範囲については必ずしも明確でない。改めて考えてみたい。
参考文献: (1)最判平成21年3月10日民集63巻3号361頁とその評釈・解説類
(2)東京地判平成20年1月17日判時2012号117頁とその評釈・解説類
日時 第4回(12月11日(土))
報告者: 横田 尚昌氏(東北学院大学)
論 題: 被保険者の自殺が疑われる場合の傷害(定額)保険金請求
要 旨: 傷害(定額)保険の約款は、被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によって死傷したことを保険金支払事由に定めており、保険法が施行された現在もこの点の変更はみられない。これに対して、保険法80条1号は、被保険者の故意による事故招致を免責事由として定めている。両者の関係について、「偶発的な事故」と「自殺」は択一的関係(表裏の関係)といわれていることと事故の外来性に関する判例解釈とを踏まえつつ考察する。
参考文献: (1)志田原信三『最高裁判所判例解説民事篇平成13年度』442頁(事故の偶然性についての最判平成13年4月20日民集55巻3号682頁)
(2)中村心「最高裁判所判例解説」法曹時報62巻3号187頁(事故の外来性についての最判平成19年7月6日民集61巻5号1955頁)
報告者: 深澤 泰弘氏(岩手大学)
論 題: 保険約款規定と消費者契約法‐無催告失効条項は不当条項か?‐
要 旨: 東京高判平成21年9月30日は、生命保険における一般的な約款規定である「無催告失効条項」が消費者契約法10条により無効であると判断した。そこで、本報告では、無催告失効条項の法的性質や消費者契約法10条の趣旨・要件等を確認し、上記判決の妥当性や上記判決が及ぼす影響等について検討を行う。
参考文献: (1)東京高判平成21年9月30日金融・商事判例1327号10頁(2009年)
(2)山下友信「生命保険契約における継続保険料不払いと無催告失効条項の効力‐東京高判平21.9.30を契機として‐」金融法務事情1889号12頁(2010年)
(3)山本哲生「保険料の不払いと保険契約の失効」金融・商事判例1336号240頁(2010年)
(4)山下典孝「生命保険約款中の無催告失効条項が消費者契約法10条により無効とされた事例」TKCローライブラリー速報判例解説商法No.38(2010年)
(5)遠山聡「保険料の不払いと失効条項の有効性」保険事例研究会レポート245号1頁(2010年)
日時 第5回(1月8日(土))
報告者: 鬼頭 俊泰氏(八戸大学)
論 題: 被保険者の自殺が疑われる場合の傷害(定額)保険金請求
要 旨: 入札要項の交付を媒介契約の申込みと解し、入札書の提出を承諾と解して、入札参加者である買主と不動産仲介業者との間の媒介契約の成立を認定した事例(東京地判平成21年12月9日・金判1331号52頁)
参考文献: なし
報告者: 清水 真希子氏(東北大学)
論 題: 海運同盟に対するEU競争法適用除外の廃止について
要 旨: EU(EC)では、海運同盟について競争法の適用除外を認めてきた1986年の理事会規則(Council Regulation(EEC)No 4056/86)が、2006年の理事会規則(Council Regulation (EC) No 1419/2006)により廃止され、2年間の移行期間を経て、2008年10月より、定期船についても競争法が適用されるに至っている。このような動きは日本船社ならびに日本の法制に直接間接に影響を与えるものであり、本報告ではEUが上記適用除外を廃止するに至った経緯について報告する。
参考文献: 小塚荘一郎「海運同盟と競争政策」江頭憲治郎・落合誠一編『海法大系』所収