東北大学

2024(令和6)年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について(一般選抜(後期))

一般選抜(後期)

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法、 民法、 商法、 民事訴訟法、 刑法、 刑事訴訟法

一般選抜(後期)

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>

本題は、司法権の概念とその限界に関する基本的な知識と理解を問うものである。問1では、「司法権」(76条1項)の概念について、また問2では、司法権の限界について、判例・通説の示す基本的考え方の説明を求めた。
基本的なことをきちんと理解したうえでわかりやすく説明できるかどうかを確かめるのが、出題の狙いである。

<民事法(民法)>

1 代理人が顕名を行わずに代理行為を行った事情を含む比較的単純な事案を素材として、的確に適用条文を掲げ、当該条文の趣旨を参照しつつ、説得的に結論を導くことができるかどうかを試す、基本的な事例問題。

2 賃貸借契約解除後に賃貸目的建物の占有を続けた賃借人が当該建物に有益費を支出した場合における留置権の成否について、民法295条2項の趣旨に照らしてその類推の可否を論じさせる、やや発展的な事例問題。

3 免責的債務引受について、条文上、債権者、債務者及び引受人のうちの誰が契約当事者となるかに応じて、契約当事者でない者について必要とされる関与の態様に違い(「承諾」か「通知」かという違い)が設けられている理由を理解できているかを試す、基本的な説明問題。

4 委任契約の任意解除権の趣旨を尋ねる、基礎的な説明問題。

5 ある者が死亡した場合の相続人(代襲相続の原因を含む)と法定相続分の割合について、正確な理解と適用力を試す、基礎的な事例問題。

<民事法(商法)>

第1問
株主の特定について,名義説(形式説)と出捐説(実質説)の対立について,理解しているか否かを問う出題である。

第2問
単なる財産の譲渡とは違い,事業譲渡については,特別な株主保護の仕組みがあるが,なぜ,事業譲渡についてはそのような特別な保護が与えられているのか,事業譲渡と財産譲渡は,どのように違っているのかを理解しているか否かを問う出題である。

第3問
否決された株主総会決議について株主総会決議取消の訴えを提起することができるか否かについての最高裁判例を理解しているかどうかを問う出題である。

第4問
退職慰労金も報酬の後払いであり,その支払いには原則として株主総会決議又は定款の定めが必要だが,それらがない場合に,どのような法律構成で退任取締役を救済できるか(できないか)を考えさせる出題である。

第5問
差止の機会を奪うもの,差止仮処分を無視したもの,非公開会社における株主総会特別決議なき第三者割当などの判例法理を理解しているかどうかを問う出題である。

<民事法(民事訴訟法)>

問1 既判力の①主観的範囲、②客観的・時間的範囲のそれぞれについての正確な理解を問う。

問2 既判力の範囲についての理解を踏まえて、事案における確定判決のもつ既判力について正確に把握することができるかを問う。

問3 「訴訟物」、「請求原因」という基本的な概念についての正確な理解を問う。

問4 前訴確定判決既判力の範囲についての理解を前提に、当事者間に後訴が生起した場合の処理について、後訴における訴訟物や当事者の攻撃防御に留意しつつ論ずることができるかを問う。

<刑事法(刑法)>

本問は、簡単な事案を素材にして、
①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、
②法的知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無(罪数処理を含む)、
③個々の問題に関連する判例の知識・理解の有無、
等を確認することを目的としたものである。
具体的には、
④建造物損壊罪と器物損壊罪の区別に関する正確な理解の有無、
⑤住居侵入罪、殺人罪、強盗殺人罪の成否を事案に即して論じることができる能力の有無、
⑥死者の占有が問題になる事案を適切に処理することができる能力の有無、
⑦共謀共同正犯の成否を事案に即して適切に論じることができる能力の有無、
⑧殺人罪の故意を持つ者と強盗殺人罪の故意を持つ者との間の共同正犯の成否を事案に即して適切に論じることができる能力の有無、
⑨盗品譲受け等罪の成否を事案に即して論じることができる能力の有無
等を確認することを目的としたものである。

刑事法刑事訴訟法)>

本問は、最決平成8・1・29刑集50巻1号1頁を素材として作題したものであり、設問1は、準現行犯逮捕の適法性、設問2は、逮捕に伴う無令状の差押えの適法性を問うものである。

<小論文>

東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力,すなわち,資料を正確に理解し,整理・分析してその要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。なお,この試験は中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院法学未修者等選抜ガイドライン」(平成29年2月13日)において「小論文・筆記試験」に含まれるとされる内容を網羅するよう作成されている。
本問は、イヌイトが社会集団の形成に用いる仕組みをもとに現代社会や宇宙時代の社会を考察する論稿を素材として、そこに記されている筆者の見解に関する説明を求めるものである。問1では、筆者の考えの根拠となる具体的内容を特定し、これを整理して的確にまとめることができているか、問2では、筆者の考える「有効に機能しつづける」条件を理解し、問いに答える形で筆者の考えを具体的に論述できているか、を評価の対象とした。いずれの問いも,把握した筆者の見解を簡潔に再構成して説明することを求めるものであり、文章の内容・論理を正確に理解する能力だけでなく、指示された分量内で論理的にまとめる文章構成力も評価の対象としている。

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