東北大学

2023(令和5)年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について(一般選抜(前期)・法曹基礎課程特別選抜(開放型))

一般選抜(前期)・法曹基礎課程特別選抜(開放型)

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

一般選抜(前期)

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>

本問は、人権の享有主体に関する基本的な知識と理解を問うものである。問1では、どの教科書でも論点として取り上げられる3つの主体について、それぞれがなぜ人権の享有主体の論点とされるのかを問うた。問2では、そのうちの外国人の人権共有主体性の論点について、判例・通説の示す基本的考え方とそれに従った全体像の概要の説明を求めた。

基本的なことをきちんと理解した上でわかりやすく説明できるかどうかを確かめるのが、出題の狙いである。

<民事法(民法)>

第1問

本人が無権代理人を相続した場合に,本人が追認拒絶権を行使できるか及び無権代理人の責任(117条)として履行責任を負うかに関する出題である。前者について,判例(最判昭和37・4・20民集16巻4号955頁)は,本人が追認拒絶を信義則上制限されることはないとしている。後者については見解が分かれているが,他人物売買における類似の事例に関する判例(最大判昭和49・9・4民集28巻6号1169頁参照)が参考となる。

 

第2問

売買契約を素材として,民法の任意規定が契約内容を補充する役割を果たすことの理解を問う出題である。484条1項,573条,574条等の条文を挙げつつ,問題文記載の事情に当てはめ,買主がいつ,どこで代金を支払うべきか具体的に述べる必要がある。

 

第3問

工作物責任(717条1項)に基づく損害賠償請求に関する出題である。問題文に表れた事情により,717条1項本文に規定された要件が満たされるかを丁寧に検討する必要がある。なお,専ら物権的請求権の費用負担の問題とした解答や不法行為(709条)の問題とした解答にも,点数が付与された。

民事法商法)>

第1問

財産引受が変態設立事項とされていることの趣旨(現物出資の潜脱防止,会社の財産的基盤の形成,株主間の公平)を理解しているかどうかを問う出題である。

 

第2問

株主総会の議決権代理行使の代理人資格を株主に限定する定款の定めについて,株主総会のかく乱防止の要請と,株主の議決権行使の機会の確保の要請とを調和するために判例法理が形成されてきていることを理解しているかどうかを問う出題である。

 

第3問

土地取引については,鑑定評価の有無にかかわらず,利益相反取引(直接取引)に該当し,重要事実を開示した上で取締役会の承認を受け,かつ,事後報告が必要となることを理解しているかどうかを問う出題である。

 

第4問

代表訴訟の対象となる取締役の「責任」については,全債務説・限定債務説・取引債務限定説など様々な見解が主張されているが,それらについて理由とともに説明できいるかを問う出題である。役員等の対会社責任(会社423条)の善管注意義務違反にどのような責任が含まれるのかについて説明している答案が非常に多かった。問題文は正確に読んでほしい。

 

第5問

略式組織再編では,株主総会決議が省略されるため,対価の不当性について,株主総会決議取消訴訟の不当決議(会社831条1項3号)経由で争うことができないために,差止事由が追加されていることを理解しているかどうかを問う出題である。

<民事法(民事訴訟法)>

問1 判決が成立した場合、確定した場合のそれぞれにおける効力を問うもの。

 

問2 事案における前訴確定判決の効力(既判力)につき、主観的(主体的)範囲、客観的(客体的)範囲の両面から論じさせるもの。

 

問3(1)所有権確認訴訟における請求棄却判決の確定後、同一当事者間において同一物の共有持分権を有することの確認を求める訴えが提起された場合の処理を問うもの。なお、必ずしも判例(法廷意見)に同調すべきものではなく、どのような結論を導くのであれ、そこに至る理由づけを説得的に示すことができているかを重視する。

(2)いわゆる遺産確認の訴えの適否を問うもの。この種の訴えの意義、確認の利益の有無、当事者の範囲といった訴えの適法性に関わる問題点を正確に把握したうえで論述できているかを重視する。

<刑事法(刑法)>

本問は、簡単な事案を素材にして、

①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、

②知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無、

③個々の問題に関連する判例の知識・理解の有無、

④脅迫罪に関する正確な理解の有無、

⑤信用毀損罪及び業務妨害罪に関する正確な理解の有無、

⑥正当防衛の各要件及び自招侵害に関する正確な理解の有無、

等を確認することを目的としたものである。

刑事法刑事訴訟法)>

設問1は、最決平成20・4・15刑集62巻5号1398頁を素材として作題したもの、設問2は、東京高判令和3・3・23(LLI/DB:L07620138)を素材として作題したものであり、いずれも領置としての適法性を問うものである。

<小論文>

東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力,すなわち,資料を正確に理解し,整理・分析してその要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。なお,この試験は中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院法学未修者等選抜ガイドライン」(平成29年2月13日)において「小論文・筆記試験」に含まれるとされる内容を網羅するよう作成されている。

本問は、アメリカにおける大統領制の発展、現代大統領制の成立、そしてそれが抱えている困難を分析、検討する論稿を素材として、そこに記されている内容及び筆者の見解について説明を求めるものである。共和主義から民主主義、現代大統領の出現、ディレンマという、論稿で筆者が論じている中核的な部分について、内容を適切に理解した上で、指示された分量の範囲内でまとめることができているかどうかを評価した。

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