東北大学大学院法学研究科・法学部における教育

東北大学大学院法学研究科長・法学部長
成瀬 幸典

成瀬幸典 写真  東北大学法学部の前身である東北帝国大学法文学部が設置されたのは大正11年(1922年)、戦後、東北帝国大学が東北大学となり、法文学部が、法学部・経済学部・文学部に分かれたのが昭和24年(1949年)ですから、東北大学法学部の歴史は、前身から数えれば100年弱、法学部になってからでも70年に及びます。

 東北大学法学部の教育目的は、法学・政治学に関する正確な基礎知識を身につけ、鋭い正義感覚と幅広い視野から社会に伏在する諸問題を発見・分析し、その解決に努めることを通じて、より良き社会の実現に貢献する人材(法政ジェネラリスト)の養成にあります。実際、これまでの長い歴史の中で、東北大学法学部は多くの優れた人材を社会に輩出してきました。それを可能としたのは、研究第一主義を掲げる東北大学の一学部の教員として、法学・政治学の研究に打ち込み、その成果を学生への教育に注ぎ込んできた研究者と、学びの意欲に燃え、向学心・向上心に富んだ学生との相互交流にあったと思います。特に、教員と学生が相互に意見を述べあい、納得のいくまで議論を続けることのできる演習(ゼミ)は、少人数教育を特徴としてきた法学部の重要な授業科目です。東北大学法学部は、基本的に、自由選択性をとっており、ゼミの履修や卒業論文の提出を卒業要件としていませんので、大講義室における授業を履修し、単位を修得すれば、卒業することが可能です。しかし、多くの学生は、ゼミに参加し、当該分野の第一人者である教員や新進気鋭の若手研究者である教員と濃密な議論を重ねることによって、論理的に思考する力や、自分自身の考えや意見を相手に説得的に伝える力を涵養することに努めてきました。法学や政治学に関する理論的知識の習得だけでなく、社会人として備えていることが期待される論理的思考力・コミュニケーション能力を伸長させる教育が、優れた人材の輩出に寄与してきたのだと思います。

 東北大学法学部は、上記のような伝統的な人材養成教育に加え、社会のグローバル化や法曹養成制度の改革といった現代的問題に対応する教育改革も行っており、前者との関係で国際コースを、後者との関係で法曹コースを設けました(その詳細は本ホームページの関連項目をご覧ください)。これは国際的な活動に従事したいという学生や法曹になりたいという学生に対して、的確な教育を提供しようとするもので、従来の伝統的なカリキュラムを拡充し、教育の充実を図るものです。

 東北大学法学部は、古き良き伝統を維持し、伸ばしながら、社会の変化やそれに伴う現代的問題に柔軟に対応し、社会の発展に寄与しうる人材の養成と研究成果の発信に努めていきます。

2019年4月1日