東北大学大学院法学研究科・法学部の現在

東北大学大学院法学研究科長・法学部長
渡辺 達徳

渡辺達徳 写真  東北大学法学部の前身は、大正11(1922)年に設置された東北帝国大学法文学部です。昭和22(1947)年に新制東北大学が発足した後、昭和24(1947)年に、それまでの法文学部が法学部、文学部、経済学部に分かれ、現在の東北大学法学部が誕生しました。
 法学・政治学は、個人から地域社会、国家そして国際社会に至る様々なレベルにおいて生起する諸問題を発見・分析し、そこから生じる利害の衝突を未然に防止するとともに、発生した紛争を解決することを通じて、人類社会の平和と発展に寄与するための学問体系です。そして、こうした法学・政治学的素養を身に付けていく知的営みを下から支えるのは、正義感覚を磨き、幅広い視野から物事を観察・批判しようとする日常の姿勢であるといえます。東北大学法学部は、伝統的に、こうした法学・政治学的素養を身に付けた「法政ジェネラリスト」を養成し、卒業生たちは、社会の幅広い分野で活躍しています。

 一方、東北大学法学部は、こうした歴史と伝統を受け継ぎつつも、そこに安住することなく、社会の変化及びニーズに対応した改革を常に重ねてきました。学部教育においては、法や政治の歴史的・思想的・社会的背景を身に付けた上で、選択の自由度の高い基幹講義及び展開講義を配して、法学及び政治学の根幹的部分から、より深い理解と豊かな知見を得るための先端的・学際的内容までを順次学ぶとともに、多彩な演習科目を開設して少人数教育を通じた研鑚を目指しています。また、大学院についても、主として理論的観点からの学術的研究を行う研究大学院のほか、平成16(2004)年には、理論的研究と法律実務・政策実務との架橋を目指す法科大学院及び公共政策大学院を設置し、社会の各方面で「プロフェッショナル」として活躍するための学びの場を提供しています。

 東北大学法学部及び研究大学院のある川内南キャンパスは、仙台駅の西、広瀬川の清流を渡ってしばらく進んだ高台に位置しています。ここは、仙台城二の丸跡地であり、付近には、東北大学付属植物園、仙台城址、仙台国際センター、仙台市博物館、宮城県美術館などが点在する緑豊かな文教地区です。川内キャンパスでは、近年、1・2年次の全学教育科目の授業が行われる川内北キャンパスの整備が完了し、また、法学部の専門教育科目の授業が行われる川内南キャンパスでは、今年度から、新講義棟の建設を含む整備が開始される予定です。また、平成27(2015)年度には、仙台駅を中心にほぼ東西に走る仙台市地下鉄が開通し、川内北キャンパス付近に駅が設けられる予定となっており、キャンパス・ライフの利便性は、ますます高まるものと期待されています。

 このように落ち着いたたたずまいのキャンパス周辺をみると、平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災の痕跡
は、もはや残っていないようにも思われます。確かに、授業は、大震災の前と何ら変わることなく行われ、キャンパス・ライフも平穏に営まれています。しかし、川内南キャンパスの手前から仙台城址に向かう道路は、一部が崩壊したまま、未だ車両の通行ができない状態にあるなど、大震災の記憶を払拭することはできません。そして、何よりも、東北大学大学院法学研究科・法学部、そしてひとりひとりの学生及び教職員の現在は、東日本大震災の後、世界中から寄せられた物心両面にわたる暖かい支援に負うものであることを、私たちは忘れることができません。東日本大震災の被災地にある大学として、私たちは、これからも被災地の現実を直視し、そこに生活する人々に寄り添い、復旧及び復興に向けて知と力を結集していくつもりです。

2013年4月1日渡辺達徳