ひとりごと 外尾健一
(昭和40年代前半の手帳に書き留めておいたものがたまたま残っていたので記録にとどめる。) 1994年1月「随想」自家製ワープロ文書 より
◎身体が悪くても、心まで悪くなる必要はない。
◎相手が馬鹿だからといって、こちらまで馬鹿になる必要はない。
◎しゃれとは金をかけて着飾ることではない。身体を清潔にし、人に不快感をあたえないことがおしゃれである。ついでにいえば、身辺をきれいにすることが最高のおしゃれである。
◎良識的意見が「つぶやき」になり、やがて、あきらめとともに「沈黙」になるときが社会にとっては一番危険である。
◎自由は、他人の自由を尊重することから始る。他人の自由を尊重できない者は、そもそも自由を享有する資格がないことを知るべきである。
◎どうでもいいような情報の氾濫の中から、良質な情報を瞬時に選び出すことは至難の業である。
◎人類が文明を創造し、承継し、発展させるためには、個を超えた時代の経験が大切である。この場合の経験とは、その時代の情報を総合し、精神的作用によって消化し、同化し、抽出したものをいう。
◎意欲を駆り立てれば、能力はいくらでも引出せる。
◎能率とは、時間の有効利用である。すなわち、手を抜きつつ初期の目的を達成することをいう。
◎いいつけられたことを受け身でそのとおりやるのは人間の仕事ではない。いかに楽しく創造的にやるかを考え、仕事に責任をもち、どうすれば人によろこばれるかを考えることが大切である。
◎人間は、環境に支配されやすい弱い動物である。社会的地位には、常に落とし穴がある。甘言、お世辞、役得、賄賂に拒絶反応を示すことは困難であろう。警戒心や強さをもつためには、まず人間は弱いという自覚から出発する必要がある。
◎人間は、本来、やさしさと冷酷さを持っている。自己が安全であり、侵されない限度で他人に対するおもいやりをもつ。生存のための本能的なものなのであろう。生活が集団(部分社会)に組み込まれているところでは、集団内にはやさしさとおもいやりが存在するが、ヨソ者に対しては警戒心と冷酷さを示す。普遍的なヒューマニズムは理念としてはなりたつが、人間の本姓に根差す条件を見極めた上でなければ、実践に移すことは困難である。
◎幸福とは、過去や他人との比較で決まるものではない。それは、各人にとっての絶対的価値から生まれる。
◎部分的社会の枠が、コンミューンをこえて国家、国際社会へと広がったところでは、政治経済制度としての社会主義は幻想にすぎない。しかし、ヒューマニズムの理想としては永遠に意味をもちうる。
◎自由と平等は互いに矛盾する概念である。しかし、二者択一ではなく、and or 回路にして、生産力はできるかぎり自由に、生産関係はできるかぎり平等にしていくことが必要である。
◎学問は図書館の散歩から始る。
◎絶対というのは信念であり、科学の世界とは無縁のものである。学問上の争いは、事実に即した理論という共通の土俵で初めて成り立つ。
◎化学は相対主義において初めてなりたつ。
◎いつでもどこでも、そこが書斎。