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東北大学法科大学院メールマガジン

第50号 11/30/2009

◇エクステンション研究棟について

 片平キャンパスの中心となる旧本部棟跡地に、地上6階建て、延べ床面積約6,850平方メートルのエクステンション教育研究棟を建設中です。

 現在、法科大学院の講義室、演習室、自習室、パソコン室および法政実務図書室は、片平キャンパス内の5つの建物に分散して配置されていますが、エクステンション教育研究棟竣工後は、法科大学院のすべての設備(模擬裁判の講義等に利用される模擬法廷、法律相談を通じて実際の事件に取り組むリーガル・クリニックのための相談室、教員研究室なども含む)を一箇所に集約することで、より充実した学びの環境が実現されます。

 また、法政実務図書室は、書架スペースを拡大するとともに、閲覧机や自習用の個人キャレルを設置して、在学生のみならず修了生に対する学習環境の支援も行う予定です。

 エクステンション教育研究棟は、平成22年6月末の竣工を予定しています。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/gaiyou/extension.html

◇特別講演会

 東北大学法科大学院では、証券等監視委員会から講師をお招きし、法科大学院・公共政策大学院の在学生、修了生、法学部生を対象に講演会を開催することになりました。
 内容については、証券取引等監視委員会の活動状況、昨今の金融証券市場の情勢、弁護士を含む市場参加者に期待される役割などについてのお話とともに、金融庁(同委員会)への就職についてもお話頂く予定です。
 金融証券市場に関心がある方、公的なセクターへの就職を考えている方は、是非ご参加下さい。

12月3日(木) 16:20〜17:50
「証券取引等監視委員会の活動と市場参加者の役割」
講師:証券取引等監視委員会事務局証券検査課長 其田修一氏
場所:片平キャンパス法科大学院棟第2講義室
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/gaiyou/access.html
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/graduate/091203-kouenkai.html

◇特別講演会

 東北大学法科大学院では、弁護士の牧原秀樹先生をお迎えして、法科大学院・公共政策大学院・研究大学院の在学生、修了生、教職員を対象に講演会を開催することになりました。
 牧原秀樹先生は、これまでWTO(世界貿易機関)の法律部や経済産業省(通商交渉担当、紛争担当)、衆議院議員を歴任され、今回の講演では、これからの法曹人のあり方についてお話し頂く予定です。
 皆様、是非ご参加下さい。

12月9日(水) 13:00〜14:30
「これからの法曹人のあり方 −今までの固定的なあり方から、多様な場で活躍する時代へ−」
講師:牧原秀樹弁護士
場所:東北大学金属材料研究所講堂
http://www.imr.tohoku.ac.jp/jpn/map/index.html
http://www.law.tohoku.ac.jp/rcaslp/activities.html
http://www.law.tohoku.ac.jp/rcaslp/activities/091209-poster.pdf

◇トピックス−連続講演会 その5

 去る8月30日(日)に、高橋彩裁判官(仙台高等裁判所)、藤田祐子弁護士をお迎えして、講演会「法曹としてのキャリアプラン、ライフプラン」が開催されました。今回は、仙台高等裁判所の高橋彩裁判官のご講演の概要をお送りします。ご講演では、高橋裁判官のこれまでのご経験について詳しくお話し頂き、質疑応答も活発なものとなりました。

法曹としてのキャリアプラン、ライフプラン

高橋 彩 裁判官

 ただいまご紹介頂きました仙台高裁判事の高橋彩と申します。私は平成7年に司法修習生になりまして、2年の修習を経て、平成9年に任官しました。今年で13年目になります。裁判官というのは、最初の10年間は判事補といって判事の卵、見習いのような感じでやっていきますので、正式に判事になってから3年目ということになります。私の場合は、任官の1年前くらいに結婚していたので、既に結婚して任官したという形でした。

 最初に配属になったのは東京地裁の刑事部というところで、そこで5年間仕事をしました。東京地裁の刑事部では、判事補であり、一人で裁判をすることはできなかったので、刑事裁判においては、左陪席として合議体の一員として刑事裁判を担当しました。

 その後、東京地裁の刑事部の中の令状部に配属になりました。令状部というは令状を出すのが専門の部ですが、全国の裁判所にあるのではなく、東京地裁などたくさんの令状の請求が来る、刑事事件の多い裁判所にしかありません。令状部では、逮捕状請求事件が来た場合に逮捕状を出す、勾留請求事件が来た場合に被疑者本人と話をして弁解を聞いて勾留するかどうかを決めるという仕事をしていました。令状を出す仕事は、判事補であっても1人でできるものでしたので、令状部にいたときは1人で仕事をしました。

 また、5年間の東京地裁在籍中、3年目に海外留学の機会がありました。当時の在外経験の種類としては、アメリカ等のロースクールに、学生あるいは客員研究員として行くパターンと、現地の裁判所に1年くらい修習生のような立場で滞在するパターンなどがありました。長期の場合には1〜2年の期間で海外に行く経験をもつことができます。また、それ以外にも、2〜3か月の期間、何か研究テーマを持って、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等の国で研究する機会をもつこともできます。

 私の場合は、任官3年目に、アメリカのハーバード大学のロースクールに留学して、そこで、LLMというアメリカの大学院のロースクールの卒業資格みたいなものを得ました。その後、残りの期間はアメリカの裁判所をいくつか周り、修習生のような形でいろいろな事件に触れる経験を持つことができました。東京地裁の刑事部にいた5年間は、私にとっては非常に濃い5年間で、留学の前後に出産も経験しました。

 5年間東京地裁に在籍した後、6年目からさいたま地裁の川越支部に転勤しました。一般に、支部というのはとても小さいところです。東京地裁は日本で一番大きい裁判所でしたので、規模からして全く違います。特に、東京地裁ですと、この種類の事件をやりなさいと言われるとそれだけをやる、私の場合、刑事部の中でも脱税事件を集中して扱う部に所属し、色々な脱税をした人たちの事件を扱っていましたし、令状部では令状の案件だけをやっていました。

 ですが、支部に行きますと、裁判官は何でもやることになります。さいたま地裁川越支部に着任したころには、もう6年目で特例判事補になっていたので、1人で裁判することができる状況でした。ですから、合議で行わなければならない殺人等の重い事件以外の刑事裁判を1人で担当していました。また、殺人等の合議事件では、今度は、私より経験の浅い裁判官と、私と、裁判長という形、いわば真ん中の立場で関与しました。支部ですので令状部はなく、令状事件ももちろん担当しました。また、少年事件を担当したのもこの時が初めてでした。さらに、川越支部在任中、民事事件を初めて担当することになりました。民事の通常の裁判事件、破産事件、執行事件など多くの種類の事件を担当しました。それから当時は簡易裁判所の裁判官の資格も兼ねていたので、簡易裁判所の少額訴訟という特殊な事件も担当しました。

 このように、裁判官の仕事というのは、行く赴任地毎、配属部毎で担当する職務内容が全然違うというところが特徴的だと思います。私にとっては、川越支部で各種の事件を担当したことが非常に勉強になりました。多種の案件を経験することで、もちろん法律的な知識も増えましたし、社会の中のいろいろな局面について触れるという意味でも勉強になりました。さいたま地裁川越支部は、支部ではない通常の地方裁判所に匹敵するくらい裁判官の人数が多い大支部であり、同時に非常に忙しい支部でした。毎日違う種類の事件を担当しつつ、机の上には検討すべき記録が積み重なっているという非常に大変な日々でした。

 こちら仙台に赴任する前には、千葉地裁の民事部というところにいました。千葉地裁の民事部では、労働事件の集中部におりましたので、そこでは、労使紛争等の労働事件を集中して担当しつつ、いわゆる一般の民事事件も担当しました。また、執行部にも掛け持ちで在籍していて、不動産競売事件を担当していました。千葉地裁での4年間の在籍期間を経て、今年の4月から仙台高裁の民事部に配属になりました。今までは、地裁、簡裁、家裁の仕事をしていましたが、今度は、地裁の第1審の判決の内容をみて、そのままでいいのかどうかを高裁の裁判体で合議して判決するという、また全然違う形の仕事を担当することになりました。

 通勤についてですが、東京、川越支部、千葉地裁は、自宅からの距離はともかくなんとか電車で通勤していましたが、今年の4月からは単身赴任で仙台に来ています。平日は仙台で、週末は東京の家でという生活をしています。

 今度は、裁判官の仕事という観点でお話をさせて頂きます。今お話した経歴でお分かり頂けるとおり、専門家といえば法律の専門家なのですが、色々な分野を担当するジェネラリスト、色々な種類の仕事をさせて頂く、色々な仕事を通して色々な人に触れることができるという仕事です。例えば、企業法務的な民事裁判では会社の経営者とお話をして説得することもあれば、刑事事件ですと、全然違う人を目の前にして話をすることになります。そういう意味では、色々な角度で社会に触れることができます。

 事前に質問を頂いております。まず、私がどうして裁判官になったのかというご質問についてですが、修習生になった当初は弁護士もいいと考えていましたが、実際に裁判修習をしていく中で、裁判官になろうと決意しました。裁判官と弁護士の違いとしては、弁護士さんは依頼者の方のニーズをどうやって実現するかというのが絶対的な仕事、もちろん一方で社会的正義を実現しなければならないというのもありますが、依頼者さんが何をしたいのか、それをどうやって実現するかということを考える仕事だと思います。もし、自分の中での事件の妥当な落ち着きどころと依頼者さんが希望するところが大きく離れていた場合に、精神的に葛藤があるのではないかと考えました。他方、裁判官であれば、自分で正しいと思うことができる、依頼者さんのニーズに縛られることなくできるということが理由の1つでした。また、弁護士さんのお仕事ですと、法律専門家としての仕事以外に、依頼者さんとのお付き合い、営業活動もたくさんしなければいけないだろうということも予想されたので、自分の適性からみてどうかということもありました。

 現場を知るまでは、裁判官というのは堅苦しそうで自由がなさそうだと思っていましたが、実際に修習をしてみると、私の修習を担当してくださった裁判官がとても自由でユニークな方で、堅苦しいばかりではないのだと知り、魅力を感じました。外からみてわからないことだと思いますが、裁判所というのは、組織の中がとても自由な職場です。悪く言えば、バラバラなのかもしれませんが、上司に遠慮して意見が言えないということが一切なく、合議体の中でも、実際に激しく対立する場面はあまりありませんが、1人1人の意見は平等であることが本当に実現されています。下の立場であっても疑問をどんどん口にすることができますし、遠慮することがいらない、自由に仕事ができるところだと思います。そのような意味でも風通しのいい組織だと感じ、裁判官に魅力を感じました。

 それからもう1つは、仕事のスケジューリングを各自好きに計画できるということがあります。裁判官の場合、やはり女性が多い職場であるのは、仕事は非常に多いのですが、これだけの仕事をしなさいと言われたときに、それをどう時間を配分してするかは、きちんと成果を出す限り、各自に任されているからだと思います。弁護士さんの場合、依頼者の方が、今相談したいと電話をかけたときに、出られないということが続いてしまうとどうかというところがあるかもしれませんが、裁判官の場合は、とにかくいつまでに判決を書くのであれば、仕事のペース配分を自分でできるので、女性としては非常にやりやすい、もちろん男性にとってもやりやすい、自分のプライベートの時間を作りやすいと思います。

 それから、メリットして産休、育休の問題をあげていらっしゃる方もいます。今は育休期間が3年になりましたが、実際に3年間取得している人は少ないと思います。それは取得できないからではなく、その期間中に職場に戻りたくなってしまうからだと思います。やはりずっと家にいると、職場に戻りたくなってしまうので、育休の取得期間は長い人で2年、一般的なのは1年であると思われます。男性も育休を取得できますが、男性で取得する人は少ないです。

 デメリットとしては、ご承知のとおり、転勤があることだと思います。転勤をどうやって乗り切るかですが、新しい場所に行って、新しい空気に触れて、新しい文化に触れてというのを楽しむことだと思います。ご夫婦で裁判官をやっている人は、基本的には、任官して最初のうちはほとんど一緒に異動していますし、同じ裁判所に勤めなくとも同居して通える範囲に赴任している人が多いです。検察官と裁判官のご夫婦の場合も、検察官の異動は2年毎、裁判官は3年毎なのでずれてしまいますが、できるだけ同居できるようにしてもらっている人が多いと思います。ただし、これは若いうちのみで、子供がある程度大きくなりそれなりの地位になると、やはり別居する場面はあると思います。ただ、別居だからどうということはなく、その方が夫婦は却って新鮮かもしれないし、考え方次第だと思います。私の場合も、子供と離れていますので辛いことがないわけではありませんが、なんとか頑張ってやっています。

 勤務時間についてのご質問もありました。もちろん土日は休みですし、勤務時間は、9時半頃から、5時半頃には、帰ろうと思えば帰ることができます。私の場合は、仕事を持ち帰ってするのが好きなので、早めに帰宅し家で少し仕事をするタイプですが、仕事を持ち帰らずに裁判所で仕事をし続ける人もいます。また、長期的にみて、勤務地の忙しさは色々で、ある任地での3年間はかなり忙しかったけれども、次の任地での3年間は比較的ゆったりしていたという人もいますので、長い目からのバランスという形で考えて楽しんでいくのがいいかなと思います。

 また、弁護士になりたいが、子供を産むために裁判官を選択するのは理由となるかというご質問がありましたが、裁判所というのは判事補から判事になるという長い目での育成をしていく場所ですので、最初から弁護士になりたいのであれば、やはり弁護士になった方がいいと思います。例えば、私の場合、最初の5年間は刑事部にいましたが、刑事部の裁判官が弁護士に転職する場合、もちろん刑事専門の弁護士になりたいのであればいいのですが、そうでない限りは経験が生かせませんから、5年間関係のない仕事をしてきたのと同じになってしまいます。ですから、普通の一般民事の弁護士になりたいのに裁判官に任官することは、自分の目指す弁護士としてのキャリアとは全然関係ないことを担当する場合もあるので、やはり弁護士になりたいと決めているのであれば、弁護士になるのがいいと思います。

 それから、裁判官から弁護士への転職は容易ですかというご質問を頂いていますが、転職できないということはないと思いますが、やはり裁判官としてのキャリアを活かせる転職ができるかどうかというのは、そのときになってみないとわかりません。ですから、弁護士になると初めから決めているのであれば弁護士になるのがいいと思います。ただ、裁判官になってみてどうしても向いていないとか、家庭の事情等で転勤に耐えられないという場合に、弁護士に絶対なれないかというと、やはり弁護士への転職の道を見つけている人はたくさんいますので、できないわけではありません。

 転勤の頻度についてのご質問を頂いていますが、任官した当初だけは2年半で、そのあとは、3年毎に異動します。途中から、4年ぐらいの少し長期になるときもあるかとは思いますが、それはケースバイケースです。子供が生まれた場合は基本的には配慮して頂けると思います。

 それから、渉外関係の法務についてのご質問もありました。私自身も渉外について興味があった時期もありましたが、今現在、渉外関係の法律事務所の同期の方の様子をみると、アソシエートからパートナーとして残らないといけないという競争が激しそうですし、時差があるため時間的にも縛られて仕事をすることもあるそうです。先程お話しました自分のやり方で仕事をすることは、非常に難しいという感じがします。

 ここで、普段の仕事の仕方を少しお話しようと思います。まず、裁判官の仕事について、書類をずっと見ているとか、六法全書をずっと開いているというイメージがあるのではないかと思います。確かに書類で仕事をします。弁護士さんの出した書類を読んで、この事件はどんな事件か当事者は何を言いたいのかを読み込みます。けれども、その後は、代理人である弁護士さんと話をしたり、事件の当事者の方と話をしたりして、説得をするというのが仕事です。民事事件であれば和解で解決することが多いですし、関係者に納得してもらわなければならないので、結局は仕事の中で話をする部分が多いです。

 また、少年事件の場合、少年に対して何故こんなことをやったのか等、1時間くらいずっと1対1で話をします。本当に反省するかどうかわかりませんが、中にはその経験が後で立ち直るきっかけになっていると思われる子がいないわけではないです。刑事事件は法廷で、強盗事件を起こした被告人とか、覚せい剤をずっとやっている被告人を目の前にして話をしますので、それだけ緊張の強い仕事です。いずれにしても、基本的には書類相手の仕事ではなくて、人間相手の仕事だと思っています。

 最後に、裁判官の仕事は夏に20日間の休廷期間、法廷を開かない期間があります。その期間中、裁判官は15日間くらい休むことができます。休みとはいってもこの期間にたまっている仕事を片付ける裁判官もいますが、私の場合は休めるときには休んで旅行に行ったりしています。また、裁判官は職場の人としか付き合いがないのではないか、知り合いがいないのではないかというイメージがあるかと思います。職場内での交流も多いですが、それぞれ趣味を持っていて趣味の人間関係を持っている方が多いです。私の場合は、学生時代の友人を通じるなどしてなるべく異業種の方とも交流しようと心がけています。

 以上で、大凡のお話をしましたので終らせて頂ければと思います。あとはご質問の中でまたお話をさせて頂ければと思います。

質1:近くにご実家の支援がない場合でも、裁判官としての仕事と家庭との両立は可能でしたか?
答1:ご夫婦とも裁判官でご実家の援助のない方もたくさんいます。なぜなら、2人とも自由な時間配分で仕事ができるからです。例えば、月水金は夫が残業して、火木は妻が残業する等の形でできるからです。また、子供を連れて単身赴任している方も結構たくさんいますので、十分対応できるはずです。
質2:法曹の実務家としての仕事は大変なのにどうやって続けてきたのですか?
答2:心がけていたことは、優先順位をつけること、それから、完璧主義にはならないことです。例えば、本当に大変なときは今日家事をやらなくても死なないだろうというくらいの気持ちになること、それから、共働きという想定であればアウトソーシングできるものはアウトソースする、必要な時はベビーシッターに頼む等いろんな形でアウトソーシングして、自分の健康、精神的な健康も含めて害さないようにすることを心がけてきました。
質3:任官するためには司法試験の成績はどれくらい影響しますか?裁判官としての適性にはどのようなものがありますか?任官希望の場合に、大学時代に経験しておくべきことはありますか?
答3:任官の採用の際に、どういう基準で採用が行われているのかは正直なところよくわかりません。司法試験でよい成績をとっていた方がいいとは思います。ただ、司法研修所での成績は関係しますので、研修に入ってからきっちりやらないといけないというのは間違いないと思います。学生のうちから裁判官になりたいから何をすべきということは特にないと思いますし、適性についてもどの法曹にもあてはまることですので、別に裁判官になりたいからこれはやっておかなければならないということはありません。
質4:裁判所の中の民事部、刑事部といった所属について、自分の希望はどれくらい聞いてもらえますか?
答4:希望をいうのは自由ですが、聞いてもらえるかどうかは行く先の空き次第なので何ともいえません。最近は、やりたいことをやる方がいい仕事ができるだろうという発想が出てきていますので、希望を言って頑張って仕事をしていれば、どこかでは希望がかなうことがあるのではないかと思います。
質5:以前、刑事裁判を傍聴に行って気分が大変落ち込んでしまった経験がありますが、日々事件に当たり気分が落ち込むことはありますか?裁判官の仕事の中でもっとも辛い面とは何ですか?また、裁判官をしていてよかったと思う事件はありますか?
答5:弁護士さんも同じだと思いますが、裁判官に限らず、精神的に落ち込む、精神的に暗くなることには日々触れなくてはならない、法曹という仕事自体がそうですので、やむを得ないかと思います。事件の現場の写真もみますし、勾留の場合もつい24時間前に人を殺してしまった被疑者と話をすることもあります。そのような負担はありますが、法曹の場合はすべてに共通してあると思いますし、他の仕事であっても嫌なことというのはいろんな面であると思いますので、別な形で解消していくということだと思います。裁判官をやっていてよかったことは、例えば、民事事件の場合、話し合いで解決するというのが一番の喜びです。本当には納得してくれていないけれども、仕方がないかと言ってくれるときもありますが、これだけ話を聞いてもらえたからもういいです、ありがとうございますと納得して頂いて解決することも結構多いです。また、少年事件ですが、少年というのは毎日鑑別所で日記を書くのですが、その日記の中で、裁判官との審判ですごく感激した、頑張ってこれからやり直そうと思った、ということを書いてくれたことがあり、それは嬉しいなと思いました。

◆編集後記

 今回は、連続講演会「法曹としてのキャリアプラン、ライフプラン」の概要(その1)をお届けしました。講演概要の掲載にご快諾いただいた高橋彩裁判官に心から御礼申し上げます。

 東北大学法科大学院メールマガジンは、お蔭様で、本号で50号となりました。本メールマガジンの購読者の皆様、これまでエッセイをご寄稿頂いた先生方、講演内容の掲載にご快諾頂いたご講演者の皆様、そして、これまでメールマガジンの作成に関わった皆様に、改めて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 今後も、積極的な情報発信、必要な情報の適時提供、コンスタントな発行を心がけていきたいと思いますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

(杉江記)

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発行:東北大学法科大学院広報委員会

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