蟻塚 稲太郎さん

留学先:カリフォルニア州立大学バークレー校(アメリカ合衆国)
期間:2005年8月~2006年8月

蟻塚 稲太郎の留学体験記 No.1

蟻塚 稲太郎 図  私の派遣留学先であるUCバークレーは全米で最もリベラルな大学であると言われており、50・60年代に数々の人権擁護の判決を出した当時の合衆国最高裁判所長官アール・ウォーレンの母校でもあります。伝統的な校風として「自由」を標榜し、人種、言語、宗教などの点において多様な人々がバークレーの街では生活しています。街の通りでは奇抜な格好の人を多くみかけ、耳慣れない数々の言語が飛び交っています。
 アメリカの大学には法学部がないので、私は政治学部の講義やロースクールの教授が教えている学部学生向けの講義などを受講しました。一番おもしろい講義は著名な憲法学者である教授による憲法社会学の授業でした。社会的な背景との関連性から憲法理論を学ぶというスタイルが自分にとってはとても新鮮で、日本の最高裁判所の動向などについても考えさせられる機会となりました。また、東北大学法科大学院の教授がロースクールの視察にいらっしゃった時には私も同行させていただき、ロースクールの教授の話を聞き、臨床的な法学実習の場を見学するといった貴重な体験ができました。後に、この時のつながりのおかげで、ロースクールの教授の方にサマースクールで論文演習の指導をしていただくことができたのも幸いでした。
 休みの間にはなるべく多く旅行をするようにしましたが、春休みに行った大陸横断鉄道による一人旅は思い出深いものとなりました。シカゴを目的地としてカリフォルニアから列車に乗り、片道2日ほどかかりました。その間、車窓からみえる景色は、ある時は雪山、またある時は渓谷、そして広大な荒野であり、あらためてアメリカという国の広大さを感じました。印象深い景色もさながら、車内で出会った人々とともに充実した時を過ごすことができたため、2日間はあっという間に過ぎ去りました。思えば、今回の派遣留学自体がこの旅のようなものだったのかもしれません。日本から離れ、バークレーの街で多様な価値観や目標をもった人々に囲まれ、日々驚きの連続であった一年間は列車のごとくあっと言う間に経過しました。一年間の思い出とその中で築いた友人との親交は生涯忘れられないものとなりそうです。最後に、派遣留学の機会を与えてくれた本校、そして数々の手続きなどの面でサポートして下さった留学生課や法学部教務課の方々に改めて感謝したいと思います。