研究年報第1号 (平成15(2003)年度)
はじめに
−COEプログラム平成15年度「研究年報」の刊行にあたって−
東北大学21世紀COEプログラム
「男女共同参画社会の法と政策」拠点リーダー
東北大学大学院法学研究科教授 辻村みよ子
21世紀COEプログラム「男女共同参画社会の法と政策」拠点の平成15年度の研究活動を無事終了し,「研究年報」を刊行する運びになりました。この拠点は,21世紀の日本と国際社会がめざす「男女共同参画」実現のための理論的課題を法学・政治学の観点から解明し,「ジェンダー法・政策」研究・教育の成果を世界に発信するとともに,地方自治体や法曹界等とも連携して,具体的な政策実践に反映させることを目的としています。
このため初年度は,まず第1に,文献の収集やネットワーク拠点(ジェンダー法・政策研究センター)の整備に力点をおきました。平成15年12月1日に,内閣府・弁護士会・地方自治体の関係者,研究協力者の方々を多数お招きして開所式を行い,以後,専門書約3,600冊を所蔵するこのセンターは,地方自治体関係者や女性団体関係者との交流拠点としても社会的に認知されつつあります。
第2に,政治参画・雇用と社会保障・家族・身体・人間の安全保障,ジェンダー教育という6つの研究クラスターを組織して,平成15年10月から平成16年3月迄に合計14回の公開研究会・学内研究会・講演会を実施しました。講師・報告者には国連女性差別撤廃委員会アーマッド委員やフランスの大学教授などほか,目黒依子上智大学教授・国連婦人の地位委員会日本代表,武者小路公秀元国連大学副学長,大村敦志東京大学教授等,各界を代表する研究者を招いて議論し,研究・教育の両面で大きな成果をあげました。
第3に,COE研究員,留学生,COEアシスタント(大学院博士後期課程学生)などを公募して教育体制を確立し,弁護士会や専門大学院等との連携の基礎を確立しました。また,海外連携拠点(サテライト・オフィス)を平成16年2月にバリ市内に設立し,事業推進担当者や博士後期課程学生を派遣して,海外調査等を開始しました。
第4に,研究成果をまとめた「ジェンダー法・政策研究叢書」(全12巻)を出版する計画を実施し,第1巻『世界のポジテイヴ・アクションと男女共同参画』を東北大学出版会より平成16年3月31日に刊行しました。また活動を広く内外に発信するため,ホームページ(日・英・独・仏語)を整備し,ニューズレターも第1号・2号を発行しました。
この平成15年度「研究年報」も,COEプログラム平成15年度の全活動を記録し,その研究成果を内外に広く発信するためのものです。本年報には,上記の公開シンポジウム・開所式,各クラスター主催研究会におけるすべての報告を掲載しており,和文の研究年報と欧文年報(Gender Law and Policy Annual Review)がセットになっています。
皆様のお力添えのおかげで,初年度は,予想以上に大きな成果を挙げることができました。平成16年度には,COE研究員を増員して研究教育体制をさらに強化し,男女共同参画政策の実態調査や国際シンポジウムの開催など,新たな活動にも積極的に挑戦してゆきます。
このようなジェンダー法・政策研究センターの活動に,今後とも,どうぞ大きなご支援を賜りますよう,心からお願いいたします。