2004年度の記録 >> 研究会報告

Cクラスター(家族)主催 研究会

◇学内研究会 (民法研究会共催、担当:水野紀子教授)

2005年3月24日(木) 15:00〜17:30 法学部棟2階大会議室

「中川家族法学の今日的意義 ─ジェンダーの視点をも加えて─」
早稲田大学法務研究科 梶村太市教授

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 3月24日(木)に行われた研究会は、梶村太市早稲田大学法科大学院教授による「中川家族法学の今日的意義 ──ジェンダーの視点をも加えて──」というテーマのものであった。梶村教授は、戦後の家族法学と実務をリードしてきた中川家族法学について、原典に戻って検討するとともに、中川学説が通説化した理由(国民の法意識に合致、巧みなキャッチフレーズ、条理の把握の的確さ)を分析し、その後の中川学説批判にも共感した上で、家事調停における当事者の自己決定を重視し、隣接諸科学との連携が必要な家事実務という梶村教授の視点から、「身分関係の非合理性」概念が少なくとも手続法との関連では依然として有効であろうと指摘する。論点は多岐にわたり、ジェンダー論として良家育ちのフェミニストとして弱者たる女性の地位向上に腐心した中川教授の時代的制約に触れ、さらには西洋モデルの崩壊と日本法の特殊性、裁判規範と行為規範の分離、要件事実論などにも及ぶ、興味深く刺激的な報告であった。報告後の議論においては、中川学説をもたらした穂積重遠博士に遡る学説的系譜と位置づけ、プロト・モダン的家族法としてイメージされる家族法の内容の論者による相違などをめぐって、活発な質疑応答がなされた。