2004年度の記録 >> 研究会報告

Cクラスター(家族)主催 研究会

◇公開研究会 (民法研究会共催、担当:水野紀子教授)

2005年3月1日(火) 15:00〜18:00 法学部棟2階大会議室

「フランス相続法改正と相続制度の性質変化 ──生存配偶者の相続権の増大から生じる変容を中心として──」
大阪大学法学研究科 幡野弘樹助教授

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 3月1日(火)に行われた研究会は、幡野弘樹大阪大学助教授による「フランス相続法改正と相続制度の性質変化─生存配偶者の相続権の増大から生じる変容を中心として─」というテーマのものであった。2001年法によるフランス民法の改正は、子の相続上の権利の平等化と配偶者相続権の増大を実現した。ヨーロッパ人権裁判所が相続分の差を平等原則違反としたマズルク判決を受けた改正だが、フランス国内ではマズルク判決に対して、相続権は取り分であって権利ではないという批判が強かった。結局、生存配偶者の相続上の権利を増大させて、被相続人の生前と同じ条件の生活基盤を維持できるように改正されたため、夫婦財産制の清算による取り分と合わせて、フランスの生存配偶者の財産的保護は日本よりはるかに手厚いものとなっている。幡野助教授の報告は、具体的な改正内容を詳細にわかりやすく具体的な改正法を解説するばかりではなく、相続制度の根拠等のより根本的な法的理念について、また現代の社会的な背景事情についても及ぶ、きわめて興味深い、水準の高いものであった。質疑応答は、ヨーロッパ法化の波に対するフランス法の態度、日本への示唆、日本法との対比等について行われた。フランス司法大臣が言うように血縁から愛情へとフランス相続法の基礎の変容があったのだとすると、日本の相続にみられる、シャドウワークの対価(寄与)という基礎要素の存在は、日本の相続法のみならず、日本の家族と家族規範の相対的特殊性を反映するものなのかもしれない。