2004年度の記録 >> 研究会報告
Dクラスター(身体・セクシュアリティー)主催 研究会
◇学内研究会 (担当:青井秀夫教授)
2005年1月26日(水) 14:00〜17:00 法学部棟2階大会議室
「産む自由と産まない自由 ─ドゥオーキンの権利論とフェミニズムの言説から」
東北大学法学研究科博士課程院生(COE TA) 早川のぞみ氏
「憲法上のリプロダクションの自由について」
東北大学法学研究科博士課程院生(COE TA) 佐藤雄一郎氏


佐藤報告は、リプロダクションの自由の保護をめぐる問題に憲法学が貢献できるかという問題意識のもとに、わが国の現状、米独仏の各国の対応状況、自己決定論を基礎にする場合の問題性、日本の最高裁の態度、憲法13条と24条のいずれをどのように適用すべきか、といった多様な論点について要領のよい解説を試みた上で、最後の論点につき、通説の13条適用説に対する鋭い批判的指摘を展開している点で注目に値する。議論にあたっては、とりわけ憲法専攻の参加者から、報告者の24条適用説に対する疑問や意見が提示され、活発な討論が交わされた。
早川報告は、中絶の自由に対するフェミニストたちの言説が既存の法理論の枠内に止まらず根本的な見直しを迫っているという点に注目したあと、ドゥオーキンにおける中絶の自由論をとりあげ、平等主義的な権利論における配慮の平等というかれ独自の視角が性差に起因する資源の不平等問題に関していかなるインプリケーションを有するかを検討する。とくに中絶問題に関しては、ドゥオーキンが人間の生に本来的な価値を認める立場から、中絶の自由と中絶の規制原理の関係を解明しようとしている点に焦点をあてて、結局ドゥオーキンが、倫理的価値観の対立する問題について国家の干渉を抑制する立場から個人の自己決定に解決を委ねるべきであるとしている見解を紹介し、かれの法理論がどの程度女性の視点を念頭においていたか疑わしいという結論に達している。報告者によるドゥオーキンの把握をどうみるか、またフェミニストの言説とドゥオーキンとの対応をどう理解すべきか、などの論点をめぐり活発な議論が交わされた。