2004年度の記録 >> 研究会報告
Bクラスター(雇用と社会保障)主催 研究会
◇公開研究会 (担当:田中重人講師)
2004年12月10日(金) 14:00〜 アエルビル28階「エル・ソーラ仙台」大研修室
「男女賃金差別を解消するために ─ペイ・エクイティ戦略の可能性を考える」
常葉学園大学教育学部 居城舜子教授

賃金差別に対抗する戦略であるペイ・エクイティ(同一価値労働同一賃金)についての、アメリカ合衆国の経験を踏まえた報告である。まず日本の女性労働の現状が概観され、ペイ・エクイティ戦略の可能性が検討された。そのうえで、この戦略の鍵となる職務評価システム(JES)について、歴史的な変容の過程が報告された。JESは19世紀末のアメリカ合衆国で導入されたものだが、その対象から女性は排除されていた。第2次世界大戦時の男女平等賃金要求をきっかけとして、女性にも職務評価が適用されるようになり、同一価値労働に対する平等賃金を要求する基盤が確立した。1980年代には、それまでのJESが持っていたバイアスを是正して性中立的なJESを開発するための運動が拡がった。現在は、全労働者に自立可能な所得を保障するための生活賃金の運動が発展しているところである。報告の最後には、生活賃金の要求を含めた「水準規制の平等」としてペイ・エクイティ戦略を再定義する方向性が示されるとともに、日本での職務評価の試みについての紹介がおこなわれた。報告後は、賃金差別をめぐる裁判や均等法改正作業におけるペイ・エクイティ戦略の位置づけ、欧米と日本の「職務」概念の違いと評価の困難点、従来の「同一価値労働同一賃金」と拡張された「ペイ・エクイティ」概念との対応等について、活発な質疑がおこなわれた。