2004年度の記録 >> 研究会報告

Cクラスター(家族)主催 研究会

◇公開研究会(民法研究会共催、担当:水野紀子教授)

2004年9月16日(木) 15:00〜 法学部棟2階大会議室

「離婚・調停・人訴」
元東京高裁部総括判事 高野耕一弁護士

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 学内研究会として行われた、「離婚・調停・人訴」と題された高野耕一弁護士(元東京高裁部総括判事)の報告は、裁判官としての豊富な実務経験に基づく家庭裁判所における紛争処理についてのものであった。高野氏は、戦後の家庭裁判所実務をリードした理論家の一人であり、調停に積極的に裁判官が立ち会うことによって、調停に司法手続きとしての質と公正性を担保することを主張、調停が示談のための貸座敷という非難を免れ、柔軟な紛争解決手続きとして積極的評価を与えられるべきだとの立場をとる。氏の主張の先見性は、消極的破綻主義を変更した大法廷判決の先駆となったごく初期の氏の破綻主義判決などにも明らかであり、戦後の日本家族法の変遷を実際に動かしてきた氏の報告は、実務のエピソードも交えて、臨場感に溢れるとともに興味深いものであった。家族クラスター責任者(水野紀子教授)がコメンテーターとして、法的な基準のない調停では、合意成立が至上となって弱者保護に限界があると実務批判を述べたが、その後の質疑応答では、報告者とコメンテーターの相違は、現行法を前提としているか立法論かの相違に過ぎないのではないかという意見など、活発な発言があった。