2004年度の記録 >> 研究会報告

Eクラスター(人間の安全保障)主催 研究会

◇学内研究会 (担当:植木俊哉教授)

2004年9月8日(水) 14:00〜16:00 法学部棟2階大会議室

「国際刑事法の文脈における『ジェンダー』」
九州国際大学法学部 坂本一也助教授

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 坂本報告は、国際法における「ジェンダー」視点の導入という観点から、国際刑事裁判所におけるジェンダー問題を多角的な視座から検討した。具体的には、武力紛争時における性的暴力の問題等が、既存の国際法の枠組の中でどのように扱われてきたか、それが旧ユーゴスラビアやルワンダに関するアド・ホックな国際刑事裁判所の設立等を通じてどのように変化し発展を遂げたか、そして近時正式に発足をみた常設の国際刑事裁判所(ICC)規程においてどのように新たに規律されるに至ったかを分析した。さらに、国際刑事裁判所の裁判官の選出におけるジェンダー的配慮に関する規定や、裁判官や検察官のジェンダー犯罪に関する専門知識の必要性に関する規定、被害者や証人に対するジェンダー的配慮に関する規定等が詳細に検討された。そして、国際刑事法における女性の地位のパラダイム転換が、「客体」である女性から「主体」としての女性へ、という文脈で整理された。他方で、ジェンダー犯罪の訴追及び処罰に関する国際刑事裁判所の限界など、現在なお残された問題点についての指摘と検討も行われた。