2004年度の記録 >> 研究会報告
Cクラスター(家族)主催 研究会
◇公開研究会 (民法研究会共催、担当:水野紀子教授)
2004年6月3日(木) 15:00〜18:00 法学部棟2階大会議室
「選択的夫婦別氏制 ─その前史と周辺─」
東京都立大学名誉教授、2003年文化功労者 唄孝一氏

6月3日(木)公開研究会として行われた、「選択的夫婦別氏制 ─その前史と周辺─」と題された唄孝一東京都立大学名誉教授(2003年文化功労者)の報告は、戦後の家族法改正における氏の扱いについて遡る、日本の現行氏制度についての報告であった。唄教授の氏領域の戦後改正法研究は、先駆的でありかつ今日でもまだ乗り越えられない最大の業績であり続けている。戦後の改正は家制度を廃止したものの、立法過程の議論では、家に代替するものとして氏がとらえられ、さらに氏には同居家族の意味合いももたされていた。唄教授が解説された民法791条の子の氏変更規定の起草過程に、その複雑さがよく現れている。改正当時の立場として、保守的な家制度擁護派がいたのはもちろん、改革派の中にも、生活実態としての家制度を否定しない立場と家制度の実質的な解体を目指す立場とが併存・対立していて、その議論も氏の改正には影響した。戦後半世紀を経て家の解体が進んだことが、夫婦別氏改正の社会的な要求をもたらした一因であっただろう。報告後の議論においては、氏を人格権的なものとしてではなく符号的なものと評価する立場をとる鈴木禄弥東北大学名誉教授などと活発な議論が行われた。