2003年度の記録 >> 研究会報告
Eクラスター(人間の安全保障)主催 研究会
◇学内研究会 (担当:土佐弘之教授)
2004年1月23日(金) 16:00〜19:00 法学研究科2階大会議室
「カナダの人間安全保障政策について」
大東文化大学法学部 加藤普章教授
カナダの「人間の安全保障」政策を理解するために、まずカナダ外交において二つの基軸(現実主義的対応と理想主義的対応)が具体的にどう交錯してきたかについて把握する必要があるとの観点から、まず、カナダ外交の特質とその歴史的展開についての概説がなされた。その上で、「人間の安全保障」論が、カナダ外交において登場してきた要因として、(1)1990年代以降におけるカナダ外交の「独自性の喪失」、(2)アクスワージー外相という特異なリーダーシップの存在、(3)移民国家ゆえ海外の紛争問題に敏感なこと等を挙げた上で、「人間の安全保障」政策の具体的な内容などについて説明がなされた。その内容の中には、女性の権利擁護などが、対人地雷問題などと並んで重要な「人間の安全保障」イシューとして挙げられていること、また、その背景としては、CIDA(カナダ国際開発庁)そしてそれと連携するNGOなどの役割が重要であることが指摘された。報告後、日本のJICAとCIDAとの決定的な差異、カナダ社会における独自のセキュリティ観(対米比較)の背景的な要因などについて活発な質疑が行われた。