平成16年6月17日 4限目発表 (1)
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健康食品に関する新聞広告の調査
4月15日から5月14日の一ヶ月にわたり、地方紙(河北新報)と全国紙(朝日新聞)に掲載された、健康食品の広告を収集し、その実態と問題点について調べた。最近、健康食品業界はうなぎのぼりに業績を伸ばし、新聞社にとってその広告の掲載費はなくてはならないものになってきている。
まず、私が非常に興味を持ったのが健康食品に関する、ある分類の仕方である。
これは
小内亨氏のホームページの中に載せられていたものである。健康食品は大きく3つに分けられる。栄養補填型健康食品、食品成分型健康食品、薬効成分型健康食品の3つで、以下にそれぞれについて簡単に説明する。
栄養補填型はビタミンやミネラルの類を主成分としたものである。栄養学的な位置づけも比較的確立されていて、どれくらい摂取したら良いのか、厚生労働省の発表する栄養所要量にも示されている。
食品成分型は人間が昔から食べていた食品に含まれる、機能的成分を主成分とした健康食品である。イソフラボン(大豆)、カテキン(緑茶)などがある。人間が以前より食べているものであるので、ほぼ安全であると考えられる。イソフラボンの骨粗しょう症に対する効果などかなり分かっているものもあるが、大部分のものについてはまだ研究の途中なので過大な期待は禁物。人間の歴史上、一部の成分だけを大量にまた長期的に摂取した経験はないので、思わぬ副作用には留意しなければならない。
薬効成分型は最近最も注目されている健康食品である。これは日常的に食べていないものに含まれる成分を元にした健康食品を指している。プロポリス、イチョウ葉エキスなどがあげられる。一部のものはその効果が認められているが、大部分は基礎研究どまりか、わずかな症例報告に基づいたものであり、安全性についても分からない事は多い。なので最低でもヒトを対象とした試験で安全性と効果について調べる必要がある。
(http://www.page.sannet.ne.jp/onai/main.html)
次に問題点について述べる。健康食品に関する問題の根底にあるのはやはり商業性だと思う。経済的な問題、身体的な問題がある。
一つ目は経済的な問題である。特にがん患者などの死と向き合って生きていかなければならない人は、ちょっとぐらいお金がかかっても命にはかえられないと思うであろうし、健康食品会社もそういう病気に狙いをつけているように思われる。「がんに効く」と言われるアガリクスなどにいたっては、月数万円もするものもある。藁にもすがりたい人の弱みに付け込んだ、良くない商売だと思う。
次に身体的な問題も挙げられる。それを摂取した事による副作用だけでなく、健康食品を摂る事で安心してしまい、正当な医療を受けられなくなってしまうというおそれもある。
最後に感想を述べる。健康食品の問題の底にあるのは、やはり商業性だと思う。医者を完全に信頼する事はあまり望ましい事ではないけれど、健康食品を完全に頼り切ってしまうよりは、今のところ、良さそうである。たしかに手軽に、自分のペースで、という点ではメリットもあるが、そのメリットの代償として自分の、または大切な人の健康が危険にさらされるかもしれないことを肝に銘じるべきだ。安全性に不安が残るものには決して手を出さず、次に効果と金額について考える。消費者はこのことを出来る限り実践しなければならないと思う。
平成16年6月17日 4限目発表 (2)
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「健康食品に関する新聞広告」
今回、私達は、全国紙から朝日新聞、地方紙から河北新報を使い、2004年4月15日〜5月14日の間、新聞に掲載される健康食品の広告をスクラップした。
ここに、スクラップ作業中に感じた疑問について、データ集計を通じて自分なりに調べたこと、考えたことを述べたい。
一つ目。広告の量は日によってまちまちで、皆無の日もあれば、大量の日もあった。掲載面により載りやすい面とそうでない面があるようだった。そこで、広告数や商品の種類の変動と、曜日や社会的行事との関わりはどうなっているのか、また、全国紙と地方紙で、掲載面、同一広告の繰り返しのペースの違いはどうなっているか、を疑問に思った。
実際に分類してみると、曜日や社会的行事といった時季と広告の変動との関連は少ないようだ。むしろ平日にこそ掲載されるようで、理由としては、平日の方が新聞に目を通す人口が多い、休日にこそ掲載されたい別分野の広告(行事など)との兼ね合い、平日にも余裕を持って新聞を眺めていられる人々を顧客として予定している、などが考えられる。
また、河北の方が、掲載面や同一広告の繰り返しの程度が極端だった。これはある程度広告主が限定されているためだと考えられる。
次に、広告の表現について、核心を突くのをわざと避けているように感じた。効果に言及するものも思ったほど多く無く、ただどんな成分を含むかを述べるものが多かった。そこで、表現や、書いて良い事・駄目な事といった、広告に何か制限があるのかということを疑問に思った。
広告の表示については、法的には薬事法、健康増進法、不当景品類及び不当表示防止法にて、適正化への規制がなされている。それを受け、公的には、厚生労働省や各都道府県の保健局などが規制・指導を行っている。
また、民間には、JARO(日本広告審査機構)という団体がある。これは広告主、メディア、広告会社などが会員となって構成する広告の自主規制機構である。広告と表示に関する苦情処理、審査、指導、諸基準の作成、消費者教育などを行う。健康食品は、平成14年度苦情業種別分類第2位、問い合わせ業種別分類第5位であった。
いずれも、広告から誇大・虚偽の不適切な表現を無くす目的である。
三つ目、広告の掲載写真や企業名や記載内容から、信用し難いものも中にはあるのに、どうして購入する気になる人がいるのかを疑問に思った。
ここで、広告に付されたマークに注目した。両紙通じて、企業として有名だったり、規模が大きかったりしても、何のマークも付いていない広告が意外と多かった。もちろん、私から見て無名の企業でもマークが付いているものもあった。その理由として、企業名自体に信頼がある、ということも大いにあるだろうし、一方でその企業名に対する信頼性の補助としてマークを付けるのか、とも考えた。
しかし、マークだけではやはり信用性にも限界があると思う。すると、購入するか決める要素は、その健康食品を使用する人の健康状態、精神状態が大きいのだろうと思う。身体に何らかの悩みを抱える人々が広告を目にしたとき、はなから有害性を疑うことは稀ではないか。殆どの人は、健康効果を期待するばかりではないだろうか。適切な判断ができるとは考えにくい。そこで「ついつい手を出してしまう」となるのだろう。広告に出ている商品がすべて安全で有益なもので無い以上、広告に対する客観的な目での規制は必要だと思う。
平成16年6月17日 4限目発表 (3)
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アガリクス茸の有効性と安全性
今日、巷には多くの健康食品が溢れている。その中でも特に有名なのが「アガリクス茸」であろう。通常市販されているアガリクス茸は、「ハラタケ属」に属するキノコの一つ−「アガリクス・ブラゼイ・ムリル(カワリハラタケ、ヒメマツタケ)」を指す。アガリクス茸に含まれるβ―グルカンなどの薬理成分がガンの抑制や免疫力の高上に役立つとされ、動物実験や培養細胞を用いた実験でその有効性が示唆される。
しかし、アガリクス茸の有効性には未知の部分が多い。ヒトを対象とした研究が少なく、また、ランダム化比較試験やコホート研究といった信頼に値する方法に則った研究が十分になされていないからである。更には、アガリクス茸を服用した者に下痢や皮膚病変、肝障害が見られるケースもあり、それらがアガリクス茸に起因する可能性も濃厚である。
以上のように、アガリクス茸の有効性や安全性に関しては十分な評価が存在しない。更には、アガリクス茸は他の健康食品に較べると高価であり、そして人間の健康に大きく影響するものであるから、消費者は購入に際して冷静な判断をすべきであろう。しかし、実際の市場においてアガリクス茸は非常に売れており、背後には消費者の冷静な判断を阻む要因があるように思われる。では、その要因とはいったい何であろうか。
アガリクス茸を初めとする健康食品類の売り上げに大きく貢献しているのが新聞広告やバイブル本である。新聞広告に関しては、薬事法の規制がかかっているため、「ガンに効く」といった効能効果を大々的に宣伝することはない。それに対して、バイブル本は新聞広告以上の宣伝効果を持つ。すなわち、この本は特定の商品と結び付けているのではなく、あくまでもあるガンに効く成分について紹介しているだけで、商品について紹介しているのではないというふうに表現の自由を振りかざしながら、その健康食品の効果を伝えるのである。このような状況下で、消費者が得られる情報というのは業者が提供する一方的なものに偏っており、その健康食品が有するメリット・デメリットを正確に見定めるだけの根拠は提供されない。
一方、消費者に視点を移すと、彼ら自身や彼らを取り巻く環境にも大きな問題がうかがえる。アガリクス茸について見れば、購入する者の多くがガン患者やその家族、ガンに対して不安を抱いている者である。末期ガンを宣告されたガン患者は、「藁にもすがる思い」でアガリクス茸を購入する。ガン患者の家族は、愛する者の病状を憂える余り、高額なアガリクス茸を患者本人に勧める。業者はこのような人間の自然な心情につけ込んでいるような感がある。劣悪な環境で栽培されたアガリクス茸を販売したり、マルチまがい商法を駆使して大量に売りつけたりする極めて悪質な例も報告されている。そして、患者にとって最も身近な存在であるはずの医師の態度にも問題はあるだろう。患者の話を十分に聞かなかったり、関心もなく保険も利かないアガリクス茸について質問されても答えなかったりすることが、ガン患者の不安を余計に煽るのである
以上のような要因に対してどのように対処すべきか。
まず、消費者の得られる情報の不均衡に関しては、薬事法などの法律による調整が考えられる。特に、バイブル本には規制を直接及ぼし、信憑性のない情報は駆逐していく必要があるだろう。出版社(者)側の表現の自由を擁護する立場や消費者の自己選択を尊重する立場にも配慮した上で、国民の健康維持を担った法律の趣旨をどのように貫徹するか、今後とも議論されるべき課題である。
次に、消費者側に関しては、患者やその家族が氾濫する情報に振り回されないことが何よりも重要だが、医師も患者の精神的なフォローに努め、少しでも患者の不安に応えていくべきであろう。アガリクス茸などの代替医療研究を充実させ、医者自身が正確な情報に強くなることは急務である。