1997年度の、法学部英米法学演習は、「最近のアメリカ合衆国最高裁の判例を読む」
をテーマに行なわれました。
1998.2.5初出
このファイルの最終更新時刻: Monday, 30-Oct-2006 17:20:26 JST
とりあげた判例一覧
BMW of North America, Inc. v. Gore, 517U.S. 559, 116S.Ct.1589(1996)
Matsushita v. Epstein, 516U.S.367, 116S.Ct.873(1996)
ちなみに、この二つ判例は、州法・州裁判所と連邦法・連邦裁判所の間の ダイナミックな相互関係について基本的な理解がないまま、 最高裁の判例を読むことはできないことを示しています。
Clinton v. Jones, 117S.Ct.1636(1997)
Warner-Jenkinson v. Hilton Davis Chem. Co., 520 U.S. 17, 117S.Ct.1040(1997)
Medtronic v. Lohr, 116S.Ct.2240(1996)
Vacco v. Quill, 117S.Ct.2293(1997)
Bennett v. Spear, 520 U.S.154, 117S.Ct.1154(1997)
Reno v. ACLU, 117S.Ct.2329(1997)
Turner Broadcasting System, Inc. v. FCC, 117S.Ct.1174(1997)
City of Boerne v. Flores, 117S.Ct.2157(1997)
Hurley v. Irish-American Group of Boston, 115S.Ct.2338(1995)
BMW of North America, Inc. v. Gore, 517U.S. 559, 116S.Ct.1589(1996)
多数意見は、 (1)非難可能性の程度、(2)懲罰的損害賠償額の填補的損害賠償額に対する比率、 (3)類似の違法行為に対する他のサンクションとの対比、 という三つの要件を、 懲罰的損害賠償額が非合理的に過大かどうかの判断基準 としてあげているが、 それも事前の公正な通知という手続的な観点に関係づけられている。
本件については、アラバマ州の不法行為改革法の懲罰的損害賠償制限規定が、
1993年の同州最高裁判決によって違憲とされてしまっていたことが大きい。
(Henderson v. Alabama Power Co., 627So.2d878(Ala.1993))
そこでは、懲罰的損害賠償の上限を25万ドルに限定する州の法律が
州憲法上の陪審審理を受ける権利
(Alabama Const. Art. 1, §11)
を侵害しているとして違憲無効になっていた。
一方、 1996年に合衆国議会の上・下院を通過した Common Sense Product Liability Reform Act of 1996法案に対し 大統領が拒否権を発動したため、 懲罰的損害賠償の行き過ぎを是正するための全米統一的な連邦法は いまも存在していない。 このために、州毎に懲罰的損害賠償改革の進行度 の格差が拡大し、そこから製造会社に対する不公正が生じている。 それを、連邦裁判所としてどこまで 是正できるかが、本判決の真の争点であろう。 (そして、このような判決によっては根本的是正はできないというのが結論となる。)
この問題については、全面的に
各州の懲罰的損害賠償改革に任せるべきだという
Ginsburg裁判官の反対意見[州法の一覧付き]は、まさにこの点をついている。
[参考]
『英米法判例百選[第三版]』198頁(木下毅評釈)
The Supreme Court 1995 Term Leading Cases, 110Harv.L.Rev.135, 145(1996)
Sabrina C.Turner, Note, The Shadow of BMW of North America,
Inc. v. Gore, 1998 Wis.L.Rev.427
Browning-Ferris Industries of Vermont, Inc. v. Kelco Disposal Inc., 492U.S.257(
1989)
Pacific Mut. Life Ins. Co. v. Haslip, 111S.Ct.1032(1991):浅香吉幹評釈[1992]アメリカ法125頁
Honda Motor Co., Ltd. v. Oberg, 512U.S.415(1994)
オレゴン州が1910年の州憲法修正によりコモンローの損害額縮減決定
(remittitur)を禁止したために、
裁判所が懲罰的損害賠償額の過大性について事後的審査できない
ことを、第14修正の手続的Due Process 条項違反として無効とした事例。
早川吉尚評釈[1995]アメリカ法310頁
Matsushita v. Epstein, 516U.S.367, 116S.Ct.873(1996)
第二訴訟の連邦控訴裁判所は、第一訴訟の州裁判所による和解判決の遮断効を、 仮にtrialになったとして 州裁判所が出す判決が持つとされる争点効が及ぶ請求にしか認めず、 連邦裁判所に排他的管轄権がある連邦証券取引所法上の請求についての 第二訴訟は提起可能と判示していた。
最高裁はこれを全員一致で破棄差戻した。(理由づけについては三人の裁判官(Stevens, Ginsburg, Souter)の一部反対意見がついている。)
Full Faith and Credit Act(28 U.S.C. § 1738)の解釈として、
まず、
(1)連邦裁判所は、もとの判決を出した州裁の既判力に関する手続法の法理を調査し、
(2)(1)で争点効を含む既判力があるとされたら、§1738が他の連邦法によって明示・
黙示的に改廃されていないかを審査するという二段階のテストを採用した。
そして、(1)について、デラウェア州裁判所は、このような場合既判力を肯定しており、
また、(2)についても、連邦証券取引所法は§1738を改廃する特別法ではないと結
論づけた。
この法理は、第二の訴訟について連邦裁判所に排他的管轄権があることや、
第一の訴訟がクラスアクションの和解判決で終結したことによって左右されないという。
法廷意見の考えによると、(1)で第一訴訟のクラスアクション和解判決 の既判力は、その州の判例法 に従って画することになるが、 果たして、そこで放棄された請求が連邦の排他的管轄権に属する事件の場合、 州の判例法が一義的に明確であるかどうか疑わしい。 たとえば、デラウェア州裁判所が、このような場合に、争点効の有無を 連邦裁判所の判例法によらしめていたとしたらどうなるのだろうか? (renvoi)
Ginsburg裁判官の一部反対意見(StevensとSouterが同調)は、第一訴訟の州法上 のクラスアクションが和解で終結したことについて、憲法第14修正の手続的Due Process 条項上の判断を留保し、代表の公正さ、十分性について、第二訴訟の 連邦裁判所が独自の観点から審査すべきだとしている。
この立場は、本件のよう な和解目的に行なわれているクラスアクションが、原告クラスの弁護士と相手方 との間のなれあいによって、クラスメンバーの利益に反して濫用されやすい点を 意識したものだろう。
[参考]
The Supreme Court 1995 Term Leading Cases, 110Harv.L.Rev.135, 297(1996)
Epstein v. MCA, Inc., 126F.3d1235(9th Cir.1997)
本件の差戻し審
Marcel Kahan & Linda Silberman, The Inadequate Search for "Adequacy" in
Class Actions:A Critique of Epstein v. MCA, Inc., 73N.Y.U.L.Rev.765(1998)
Marresse v. American Academy of Orthopaedic Surgeons, 470U.S.373(1985)
Amchem Products v. Windsor, 117S.Ct.2231(1997)
連邦民事訴訟規則23条上の和解目的のクラスアクションについて通常のclass
certificationの要件を要求した事例。アスベスト被害をめぐるmass tortsの事
例で、共通の争点の支配性、代表の十分性の要件を満たさないとして、クラスア
クションによる和解を否定した。
藤倉皓一郎「和解のためのクラス訴訟--アスベスト被害者クラスの認証」法律の
ひろば1999-5-62;浅香吉幹評釈[1998]アメリカ法303頁。
Mark C.Weber, A Content-Based Approach to Class Action
Settlement:Improving Amchem Products, Inc. v. Windsor, 59Ohio St.L.J.1155(1998)
G.Donald Puckett, Note, Peering into a Black Box:Discovery and Adequate
Attorney Representation for Class Action Settlements, 77TEX.L.REV.1271(1999)
Clinton v. Jones, 117S.Ct.1636(1997)
この訴訟全体の詳しい経過及び法律文書集成[www.washingtonpost.com] via
The Washington Post
Paula Jones Legal Fund[www.jones-clinton.com]Jones支援者のページ
The Supreme Court 1996 Term Leading Cases, 111Harv.L.Rev.197, 227(1997)
Warner-Jenkinson v. Hilton Davis Chem. Co., 520 U.S. 17, 117S.Ct.1040(1997)
[参考]
Markman v. Westview Instruments, Inc., 517U.S.370(1996)
claimの解釈は法律問題であって、陪審ではなく裁判官が審理するとした事例。
The Patent Jury Forum[www.jurytrials.com]
Case Note, Charles Robert Lewis, 76N.C.L.Rev.1936(1998)
The Supreme Court 1996 Term Leading Cases, 111Harv.L.Rev.135, 400(1997)
The Supreme Court 1995 Term Leading Cases, 110Harv.L.Rev.135, 266(1996)
Medtronic v. Lohr, 116S.Ct.2240(1996)
Vacco v. Quill, 117S.Ct.2293(1997)
Bennett v. Spear, 520 U.S.154, 117S.Ct.1154(1997)
Reno v. ACLU, 117S.Ct.2329(1997)
Turner Broadcasting System, Inc. v. FCC, 117S.Ct.1174(1997)
City of Boerne v. Flores, 117S.Ct.2157(1997)
憲法第1修正の信教の自由条項の解釈基準として、 最高裁は、かつて、政府の行為が 宗教的慣行に実質的な負担を与えているかどうかを審査し、 もし与えているならば、やむにやまれぬ政府の利益及びその利益を実現す るのに最も非制限的な手段を要求していたことがある。(Sherbert v.Verner) しかし、1990年のEmployment Division v.Smithの法廷意見(5対4)は、 一般的に適用される中立的な法律(この場合は麻薬使用を禁止した州刑法)は、 たとえ、宗教的慣行に実質的負担を与える場合であっても、 厳格審査に服することなく合憲とした。
1993年、連邦議会は、憲法第14修正第5節の立法権に依拠して、Smith 判決をく つがえし、Sherbert判決の厳格違憲審査基準を復活させるための立法を行なった。 (RFRA)
本判決は、この法律を違憲としたものである。
[参考]
Sherbert v. Verner, 374U.S.398(1963)
Wisconsin v. Yoder, 406U.S.205(1972):
『英米法判例百選[第三版]』42頁(金原恭子評釈)
Employment Div., Dept. of Human Resources of Ore. v. Smith,
494 U.S. 872(1990)
Douglas Laycock, Conceptual Gulfs in City of Boerne v. Flores, 39 Wm. and
Mary L. Rev. 743(1998)
Edward J.W.Blatnik, Note, No RFRAF Allowed:The Status of the Religious
Freedom Restoration Act's Federal Application in the Wake of City of
Boerne v. Flores, 98Colum.L.Rev.1410(1998)
Lino A.Graglia, City of Boerne v. Flores:An Essay on the Invalidation of
the Religious Freedom Restoration Act, 68Miss.L.J.675(1998)
Hurley v. Irish-American Group of Boston, 115S.Ct.2338(1995)