Wal-Mart Stores, Inc. v. Samara Brothers, Inc.,529 U.S. 205(2000)

初出 2000/12/18
[最新更新]Monday, 30-Oct-2006 17:00:59 JST

Lanham Act§43(a)上のtrade dress侵害訴訟において、「デザイン」 には本質的識別性(distinctive)がなく、 出所を示す二次的意味の立証が必要であるとされた事例

[事実]

Samara Brothers Inc.(原告、被上訴人、以下Samara)は、子ども用の洋服のデザインおよび製造を行っ ている。その主な製品は、ワンピース薄織物(seersucker)の春夏物であり、ハー ト、花、フルーツ類のアップリケがしてあった。JCPenneyを含む多くのチェーン 店が、Samaraとの契約の基づき、この製品を販売している。

Wal-Mart Stores, Inc.(被告、上訴人、以下Wal-Mart)は、有名な小売店であり、子ど も服も扱っている。1995年、Wal-Martは、供給業者の一つ、Judy-Phlippine, Inc.(以下J-P)に、1996年の春夏用の子ども服を生産するように契約した。 Wal-Martは、J-Pに、多くのSamaraの洋服の写真を送り、 それに基づいてJ-Pの製品が作られることになっていた。J-Pは、16のSamaraの洋 服を、ほんの少し変更を加えただけで、滞りなく複製したが、そのうちの多くの ものに著作権の対象要素が含まれていた。1996年、Wal-Martは、いわゆる 模造品(knockoffs)の販売を行い、115万ドルを超える粗利益をあげた。

1996年6月、JCPennyのためのバイヤが、Samaraに対し、Samaraの洋服が、Wal-Mart では、JCPennyがSamaraとの契約上許容されている価格よりも低い価格で売られ ていると苦情を申したてた。これに対し、 Samaraは、Wal-Martには製品を供給していないと答えた。Samaraが調査してみる と、Wal-Martと他の数社の大規模小売店(Kmart、 Caldor、 Hills、Goody's)が、 J-Pによって製造されたSamaraの洋服の模造品を売っていることが判明した。

Samaraは、違法行為の停止を求める通知(cease-and desist letters)を送った後、 Wal-Mart、J-P、Kmart、Caldor、Hills、Goody'sを相手取り、 連邦Lanham Act§43(a)違反、 連邦著作権法違反、New York州法上の消費者詐欺、不正競争であるとして、 連邦地裁に本訴を提起した。 Wal-Mart以外の被告は、正式事実審理前に和解している。

1週間続いた正式事実審理の後、陪審は、全ての請求について、原告Samara勝訴 の評決を出した。被告Wal-Martは、法律問題判決(judgment as a matter of law)を求める申立をし、特に、Samaraの洋服デザインが、§43(a)上、識別性の ある(distinctive) trade dressとして法的に保護されるという結論を支持する証拠が不十分である と主張した。 連邦地裁は、この申立を否定し、Wal-Martに対し、 総額160万ドルの損害賠償の支払い、および、違法行為の差止を命じた。

連邦第二巡回区控訴裁判所も、これを支持。

Wal-Martによる裁量上訴がなされた。

[争点]

製品のデザインは、登録されていないtrade dressの侵害として、 1946年連邦商標法§43(a)(15U.S.C.§1125(a))上、保護されるか。

[結論]

Scalia裁判官の法廷意見(全員一致)

破棄差戻し。

Lanham Act§43(a)上のtrade dress侵害訴訟において、デザインに識別性 (distinctive)があり、したがって保護されるというためには、二次的意味を示 さなければならない。

[理由づけ]

Lanham Actは、商標(trademarks) の登録について規定しているが、その§45において、商標の 定義には、「[ある製造者の]商品であることを同定し、他の者によって製造販売され ている商品から区別し、商品のソースを示すように、[使用され、あるいは、使 用されることを目的とした]、語、名前、シンボル、装置、ないしそれらの組合 せ」を含むとしている。 (15 U.S.C. §1127) 同法§2(15 U.S.C. §1052)によってマークを登録すると、§32(15 U.S.C. §1114)で、その権利者は、侵害者に対して訴訟を提起することができるように なる。また、§7(b) (15 U.S.C. §1157(b))により、そのマークが有効であると いう推定が働き、§15 (15 U.S.C. §1065)により、 通常、5年間継続使用することにより、登録マークの効力について争うことがで きなくなる。 登録マークを保護することに加え、Lanham Act§43(a) (15 U.S.C. §1125(a)) では、 「語、語句、名前、 シンボル、装置、ないしそれらの組合せで、商品の出所、スポンサー、承認につ いて、混同を生じさせるような」ものの使用に対して、製造者に訴訟原因を付与 している。この条文が本件における争点となっている。

§2の登録可能なマークの定義と、§43(a)で訴訟可能な混同要素は、 「Nike」のような語のマークや、Nikeの「swoosh」シンボルのようなシンボル・マー クだけでなく、トレード・ドレス(trade dress)---元来、製品のパッケージな いし装飾(dressing)だったが、最近では、多くの控訴裁判所により製品のデザイ ンまで含むように拡張されている---も含むものとされてきた。 (Ashley Furniture Industries, Inc. v. Sangiacomo N. A., Ltd., 187 F.3d 363 (4th Cir. 1999) (寝室家具); Knitwaves, Inc. v. Lollytogs, Ltd., 71 F.3d 996(2nd Cir. 1995) (セーター); Stuart Hall Co., Inc. v. Ampad Corp., 51 F.3d 780 (8th Cir. 1995) (帳面)) これらの裁判所は、しばしば議論することなく、トレード・ドレスは、これらの 関連条文上、「シンボ ル」ないし「装置」であると仮定しているが、最高裁もまたそのように結論する。 「人間は、意味を伝えることができるものはほとんど何でも、「シンボル」ない し「装置」として使うことができるのだから、この文言を、文字どおり読むと、制 限的とはいえない」 (Qualitex Co. v. Jacobson Products Co., 514 U.S. 159, 162 (1995)) §2と§43(a)をこのように解することは、 「本章における、登録されていないトレード・ドレスの侵害についての民事訴訟」 に特に言及している、最近付け加えられた§43(a)(3)によっ て強化されている。

§43(a)の文言は、未登録のトレード・ドレスがどのような状況において保護さ れるのかという点についてあまり指針を与えてくれない。 たしかに、 製造者は、侵害的であると主張される特徴が「機能的」なものでなく、 (§43(a)(3)) 保護を求めている製品と混同をもたらしそうなものである(§43(a)(1)(A)) ことを示すことが要求されている。 条文上、§43(a)は、 明示的に、製造者に対して、トレード・ドレスに識別性がある(distinctive) ことを示すことを要求していないが、裁判所は、 識別性がないと、トレード・ドレスは、 この条文が要求している「商品の出所、スポンサー、承認につ いて、混同を生じさせるような」ものとはいえないという理由で、 普遍的にこの要件を課してきた。 さらに、識別性は、§2でトレード・ドレスを登録するための明示的な前提条件 でもあり、§2の登録についての一般原則は、大部分、未登録のマークが§43(a) で保護されるかどうかを決定するときにも適用されるのである。 (Two Pesos, Inc. v. Taco Cabana, Inc., 505 U.S. 763, 768(1992))

マークの識別性を評価するとき、裁判所は、次の二つのうちどちらかの方法でマー クに識別性があると判示してきた。 第一に、マークは、その内在的な性質が特定の出所を同定するのに資する場合に、 本質的に識別性がある。 裁判所は、語のマークについて、Friendly裁判官が定式化し、今日では古典的と なっているテストを適用している。すなわち、「任意の(arbitrary)」(煙草の 「Camel」)、「奇抜な(fanciful)」(フィルムの「Kodak」)、または、「示唆的 な(suggestive)」(洗濯石鹸の「Tide」)、語のマークは、本質的に識別性があると されてきた。(Abercrombie & Fitch Co. v. Hunting World, Inc., 537 F.2d 4, 10-11 (2nd Cir.1976)) 第二に、マークは、 本質的に識別性がなくとも、 その主要な意義が、公衆の頭の中で、 製品自体ではなく製品の出所を同定することになったときのように、 二次的な意味を発展させたのであるならば、識別性を獲得する。

本質的に識別性のあるマークと、二次的な意味を得たマークとの間の 裁判所による区別には、制定法自体の中に確実な根拠が存在している。 §2では、それによって 「申請者の商品が他人の商品と区別がつく 」ようなトレードマークであることが、登録の要件とされている。(15 U.S.C. § 1052) また、同条は、限られた例外はあるが、「申請者に使われ、その者にとって識別 性を備えたマークの登録につき、本章の規定は何も妨げとはならない」と規定して いるが、これは、すなわち、本質的に識別性があるわけではないが、二次的意味 によって識別性を有する ようになったということである。(§2(f), 15 U.S.C. § 1052(f)) 二次的な意味なしで「それによって 申請者の商品が他人の商品と区別がつく」ようなマーク、つまり、本質的に識別 性を有するマークが、全てのカテゴリーのマークに必ず含まれなければならないという 結論は、§2のどこからも出てこない。

実際、少なくとも一つのカテゴリーのマークである色彩に関し、最高裁は、いか なるマークも本質的な識別性を有することはありえないと判示した。 (Qualitex Co. v. Jacobson Products Co., 514 U.S. 159, 162-63(1995)) Qualitex事件において、上訴人は、緑-金色のドライクリーニングプレス機を製 造販売していた。 被上訴人が、類似の色をしたプレス機を販売し始めた後、上訴人は、§43(a)上 の訴訟を提起し、その色のプレス機の登録を得た後、§32上の請求を追加した。 最高裁は、色彩は商標として保護されうるが、二次的な意味を示さなければ保護 されないと判示した。 最高裁は、 語のマークについての、 Abercrombie & Fitch判決テストとのアナロジーによる理由づけを用いて、 製品の色は、 ほとんど自動的に顧客にブランドを示すものとはいえないので、 「奇抜(fanciful)」、「任意(arbitrary)」、あるいは「示唆的(suggestive)」 なマークとは異なる、という。 しかし、最高裁は、 時がたつにつれて、顧客が製品ないしその包装の特定の色を、ブランドを示すも のとみなすようになるかもしれないことを認めた。色彩は、「記述的な」語のマーク と同様、最終的には、製品の出所を示すようになるのだから、二次的な意味を示す ことにより保護しうるというのである。

デザインは、色彩と同じように、本質的な識別性を有するとはいえないように思われる。 一定のカテゴリーの語のマークや製品パッケージに、本質的な識別性を認めるの は、特定の語を製品に付したり、製品を識別性のあるパッケージに入れたりすることの当の 目的が、しばしば製品の出所を同定するためになされるという事実から生じる。 たとえば、洗濯石鹸の「Tide」のように、示唆的な語のマークは、消費者の念頭に 肯定的な含意を喚起し、液体洗濯洗剤「Tide」のずんぐりして、派手に装飾され たプラスチック容器のように、けばけばしいパッケージは、ごちゃついた店の棚 上で、さもなければ無関心な顧客の注意をひくかもしれないというように、 語やパッケージが補助的な機能を果たすことはありうるが、 それらの支配的な機能は、出所の特定である。 したがって、消費者は、これらのシンボルを、製造者の指標とみなしがちなので あり、そのために、このようなシンボルは、ほとんど自動的に顧客にそれが示す ブランドを伝えるのである。 たとえば、添付された語が製品の記述(「Tasty」パン)である場合や、地理的 出所(「Georgia」桃)である場合のように、 消費者が、添付された語やパッケージを出所の指標とみなす傾向があると推定することが合理的でない場合には、 本質的な識別性は認定されない。 このゆえ、制定法は、本質的に識別性がある登録可能な語のマークから、 商品にとって「単なる記述的な」語(§2(e)(1), 15 U.S.C. §1052(e)(1), ) や「主に地理的な記述である」語(§2(e)(2), 15 U.S.C. § 1052(e)(2))を排除しているのである。 製品のデザインの場合には、色彩の場合と同じように、 その性質を出所と同視する消費者の傾向は存在しないと考えられる。 消費者は、 ペンギンの形をしたカクテルシェーカのような、最も異常な製品デザインでさえも、 ほとんど必ず、 出所の同定ではなく、その製品をより使いやすくしアピールを増すという意図 で採用されたのだという現実を意識している。

製品のデザインは、ほぼ必然的に出所特定以外の目的に役立つという事実 は、本質的な識別性を問題のあるものにするだけでない。 本質的な識別性の原則を適用することは、消費者の他の利益に対して、 より有害な影響を与えもする。 本質的な識別性があるという主張に基づき、新規参入者に対して起こされる訴訟の 脅威を促進するような法準則によって、 製品のデザインが通常資するような、 功利的、美的な目的についての競争の利益を、消費者から奪うべきではない。 無論、 どれだけ容易に訴訟が起こせるかどうかは、本質的識別性についてのテストの明確性に 左右されるのであるが、製品のデザインが関係する場合、最高裁は、合理的に明確 なテストを考案できるかということにつき、あまり確証がない。 被上訴人と、裁判所の友(amicus curiae)である合衆国政府は、関税・特許上訴 裁判所によって、製品パッケージに関して定式化されたテストの 関連部分を、製品デザインのために採用するように求めている。 (Seabrook Foods, Inc. v. Bar-Well Foods, Ltd., 568 F.2d 1342 (1977)) この判決によると、製品パッケージの本質的識別性を決定するとき、 特に、それが「通常の(common)」基本的な形状やデザインであるかどうか、特 定の分野においてユニークで珍しいものであるかどうか、 ないし、商品の飾りまたは装飾として公衆によって見られるような 通常採用されよく知られた装飾形態に対する単なる洗練かどうか、ということを 考慮すべきだというのである。 このようなテストは、反競争的な攻撃的訴訟を簡単に処理するための基礎を提供 することはほとんどないだろう。 実際、もっともなことに、 口頭弁論において、合衆国の訴訟代理人は、このテストが本件で満たされ るのかどうかについて、確定的な答えを提出しようとはせず、ただ、むずかしい 事件であるとだけ述べるにとどまったのである。

もちろん、新規参入者を排除しようとする者は、デザインの非機能性を立証しな ければならないが(§43(a)(3), 15 U.S.C. A. §1125(a)(3))、この証明は、その美的なアピールを考慮することを含むかもしれ ない。 しかし、訴訟の成功だけでなく、訴訟の成功の脅威によっても、競争は阻害され るのである。本質的に出所特定的なデザインがありそうもないのだから、本質的 識別性の主張に基づく訴訟を許すことはまったく価値がないように思われる。 このことは、 製造者は通常、本質的に出所特定的 であるが二次的な意味を持っていない デザインについては、デザイン特許や著作権を保有することにより 保護を受けることができるのだから、特にそのように考えられる。 これらの保護が利用可能であるので、製品デザインは二次的な意味を立証する ことなしには§43(a)の保護を受けることがないと結論することから生じるかも しれない、製造者に対する損害は大いに減殺されている。

被上訴人は、Two Pesos判決(1992)によって、製品デザインのトレード・ドレス に本質的な識別性はありえないという結論はとれないと主張する。この判決は、 人工物、明るい色彩、絵や壁画で飾られた内装やテラスといった食堂の祝祭的雰 囲気として、原告によって記述された、メキシコ料理レストランのチェーン店の トレード・ドレスを、二次的な意味の立証を要求することなく、§43(a)で保護 されうるとした。確かに、この判決は、トレード・ドレスには本質的な識別性が ありうるという法理を確立しているが、製品デザインのトレード・ドレスに本質 的な識別性がありうるという法理を確立しているわけではない。Two Pesos判決 (1992)は、本判決とは関係がない、というのも、そこで問題になっていたトレー ド・ドレス、レストランの装飾は、製品デザインとは思えないからである。

被上訴人は、Two Pesos判決(1992)をこのように区別すると、製品デザインと製 品パッケージのトレード・ドレスの間で、裁判所がむずかしい線引きを強いられ ることになると主張する。 実際、限界事例には難しい事件があるであろう。すなわち、たとえば、 古典的なCoca-Colaのビンは、Cokeを飲んでビンを捨てる消費者にとって、パッ ケージであろうが、ビンの収集家である消費者にとっては製品自体であるかもし れないし、カンよりも古典的なビン入りのCokeを買う消費者にとっては、 ビン入りを飲むほうが粋だ(stylish)だと考えているのだから、製品の一部であ るのかもしれない。 しかし、最高裁は、製品デザインと製品パッケージの区別をしなければならない ということが生じる頻度も、そのことが有する困難さの度合も、 どのようなときに製品デザインが本質的な識別性を有するかどうか を判断しなければならないことよりは、はるかに小さいと考える。 どちらともいえない事件がある限りにおいて、裁判所は、慎重な方向で誤るべき であり、あいまいなトレード・ドレスは、製品デザインとして分類し、二次的な意味 を要求すべきであると考える。 どちらともいえないということ自体が、本質的識別性の原則を採用することには 効用(utility)が相対的に少なく、二次的な意味の立証を要求することのほうに、 相対的に大きい消費者の利益があることを示している。

[コメント]

[参考]



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芹澤英明
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