A & M Records, Inc. v. Napster, Inc., 2000 U.S. Dist. LEXIS 6243, 54 U.S.P.Q.2d 1746(N.D.Cal. 2000)

初出 2000/5/17
[最新更新]Monday, 30-Oct-2006 17:01:21 JST

Napster音楽ファイル共有システムに対して、Digital Millenium Copyright Act §512(a)上の インターネットサービスプロバイダ責任制限規定の適用が否定された事例

[事実]

レコード会社(以下、原告P)は、 California州のNapster社(以下、被告D)に対して、 vicarious infringement(代位侵害)と contributory infringement(寄与侵害) による連邦著作権法違反その他の関連州法違反を主張して、本訴を提起した。

Napster社は、 MusicShareソフトを無料で自由にインターネットユーザにダウンロードさせていた。 ユーザは、このソフトを取得すると、MP3の音楽ファイルを、Napsterシステムにロ グオンした他の者と共有することができる。 MP3ファイルは、圧縮技術により、CDとほぼ同じ音質の音を複製でき、 有料あるいは無料で、様々なWebサイトで利用可能になっている。 Napster社は、ユーザに対して、ユーザ所有のコンピュータのハードディスク上 に存在するMP3ファイルを相互に無料で交換することを可能にしていた。 そして、「MP3ファイルのあるサーバを探すことから欲求不満をなくす」ことを 誇示していた。

Napsterのサービスを使うことは、次の基本的なステップを含む。 まず、ユーザは、 Napster社のWebサイトからMusicShareソフトをダウンロードする。これで、 ユーザは、自分のコンピュータからNapsterのシステムにアクセス可能になる。ユーザがログ オンすると、MusicShareソ フトは、Napsterのサーバサイドソフトと相互作用を行い、Napster社が管理する 約150のサーバのどれかに自動的に接続する。MusicShareソフトは、ユーザが利 用可能になるように選択してあるMP3ファイル名のリストを読む。このリストは、 Napsterサーバ上で、 他のログオンしたユーザが共有することを望むMP3ファイルのディレクトリとイ ンデックスに追加される。 ユーザが何かの曲を探す場合には、MusicShareソフトの検索ページで、 曲名かアーチスト名を打ち込んで、「Find It」ボタンを押す。 すると、Napsterのソフトは、現在のディレクトリを調べ、検索リクエストに対 応するファイルのリストを生成する。欲しいファイルをダウンロードするために は、ユーザはリスト上でそのファイルを表示させ、「Get Selected Songs」ボタ ンを押せばよい。また、ユーザは、他のユーザのハードディスク上に存在するファ イルの一覧を見ることもでき、そのリストから欲しいファイルを選択することも できる。ユーザがファイル名をクリックすると、Napsterサーバは、要求ユーザ とホストユーザ(MP3ファイルを提供するユーザ)のMusicShareソフトと通信し、 両者の間の通信を容易にし、ユーザはこれ以上何もすることなくファイルのダウ ンロードを自動的に開始する。

Napster社によると、要求ユーザがファイル名をクリックすると、Napsterサーバ は、このリクエストをホストユーザのブラウザに対してルーティングを行う。 ホストユーザのブラウザは、ファイルを提供できるかできないかという応答を行 う。ホストユーザがファイルを提供できる場合は、Napsterサーバは、ホストの アドレスとルーティング情報を要求ユーザのブラウザに対して通信し、要求ユー ザがホストに接続して、欲しいMP3ファイルを受領できるようにする。 当事者は、このプロセスが、Napsterのサーバサイドソフトが提供するハイパー テキストリンクを利用するものであるかどうかについては、争っている。しかし、 原告は、Napsterサーバは、ホストユーザからIPアドレス情報を取得し、要求ユー ザがホストユーザに接続することを可能にしていることを認めている。 MP3ファイルは、実際には、インターネット上で送信されているが、Napsterサー バがないとこの接続は行うことができない。

Napster社が提供するサービスは、これにとどまらず、MusicShareソフトは、ダ ウンロードした曲を再生することができるし、また、Napsterはチャットルーム も提供していた。

Napster社は、著作権法を遵守することをその政策にしており、利用 条項の一つには、ユーザが 著作権その他の知的財産権を繰り返し侵害した場合にアカウント終了する旨記載 されていた。両当事者は、この政策がいつ導入されたのか、また、 著作権侵害者がNapster者のサービスを利用することをどのくらい有効に防止で きるかについて争っている。Napster社は、1999年10月には、著作権遵守政策を 導入していたと主張しているが、2000年2月に至るまでそれを文書化しておらず、 ユーザにも周知させていなかったことを認めている。

被告Dは、Digital Millennium Copyright Act(以下DMCA)、§512(a)により、 同§512(j)(1)(B)に規定されている限定的な責任を負うほかは、損害賠償も差 止命令も受けることはない、仮にそうでないとしても、 MP3ファイルのサーチとインデックスサービスは別としてダウンロードサービスに関する 限り§512(a)が適用されるとして、 被告D勝訴のsummary judgmentの申立を行った。

[争点]

著作権侵害訴訟において、 NapsterによるMP3ファイル共有サービスに対して、 DMCA§512(a)のインターネットサービスプロバイダ責任制限規定 が適用されるか。

[結論]

被告D勝訴のsummary judgmentの申立を却下。

[理由づけ]

DMCA§512は、オンライン上の著作権侵害侵害に関する、 オンラインサービスプロバイダ、インターネットアクセスプロバ イダの責任について規定している。§512(a)は、適格サービスプロバイダ (qualified service providers)を、直接侵害、代位侵害、寄与侵害の 金銭賠償責任から免除し、差止命令については§512(j)(1)(B)に規定された範囲 に限定している。§512(a)のみならず、§512の責任制限規定全体の解釈は、初 出の争点であるようである。

被告Dは、自己の商事活動は§512(a)の責任制限規定に該当すると主張している。 同条項は、 「サービスプロバイダにより、あるいはサービスプロバイダのために、支配ない し運用されているシステムやネットワークを通じ、 そのサービスプロバイダが素材を送信、ルーティング、接続提供した場合の」 著作権侵害責任や 「そのような送信、ルーティング、接続提供の過程での仲介的ないし一時的な素 材蓄積による」著作権侵害責任について、次の5つの要件を満たす場合に、 制限している。

  1. 素材の送信が、サービスプロバイダ以外の者によって開始されあるいは、そ の者の指示により開始されていること、
  2. 送信、ルーティング、接続提供または蓄積が、サービスプロバイダによる 素材選択を経ることなく、自動的技術的プロセスにより遂行されているこ と、
  3. サービスプロバイダが、他の者の要求への自動的な反応を除き、 素材の受領者を選択していないこと、
  4. このような仲介的ないし一時的な蓄積の過程でなされる、 サービスプロバイダによる素材の複製が、予期される受領者以外の者に通常のアクセス が可能な形でシステムないしネットワーク内に維持されてはおらず、 また、このような素材 の複製は、送信、ルーティング、接続提供のために合理的に必要な期間を超えて、 予期される受領者に対しても通常のアクセスが可能な形で維持されていないこと、 かつ、
  5. その素材は、コンテンツに変更を加えることなく、そのシステムないしネッ トワークを通じ送信されること。17U.S.C.§512(a)
被告Dは、この法律の定義規定を引用し、§512(a)の責任制限の目的上、 Dが「サービスプロバイダ」であると論じている。17U.S.C.§512(k)(1)(A) 第一に、被告Dは、ユーザのハードディスクへの接続と、 ホストのハードディスクとNapsterブラウザからユーザのハードディスクと NapsterブラウザへのMP3ファイルの直接的な送信を可能にすることにより、 「デジタルオンライン通信のための送信、ルーティング、ないし接続提供」を行っ ていると主張する。第二に、被告Dは、ユーザはDからの指示なしに、オンライン 接続点と送信されるMP3ファイルを選択しているという。最後に、被告Dは、「サー ビスプロバイダ」の定義に該当するので、責任制限に関する残りの5つの要件を 満たすことを示すだけでsummary judgmentの申立ができると論じる。

被告Dは、これらの5つの要件を満たすと次のように論じている。

  1. Napster自体ではなく、Napsterユーザが、MP3ファイルの送信を開始して いる。
  2. 送信は、Napsterからの編集上のインプットなしに、自動的、技術的プロセ スを通じてなされる。
  3. Napsterは、MP3ファイルの受領者を選択していない。
  4. Napsterは、素材の送信の間に複製を行っていない。
  5. 素材のコンテンツは、送信の間に変更を加えられていない。
このように、被告Dは、§512(a)の責任制限規定は、ユーザが選択するファイル の共有のために送信、ルーティング、接続提供を行うという、その中核的機能を 保護していると主張するのである。

これに対し、原告Pは、次のように争っている。第一に、§512(n)によって、裁 判所は、Napsterの機能のそれぞれについて独立に分析しなければならず、これ らの機能の全てが§512(a)に該当することはないと主張する。 原告Pによれば、Napsterは、サーチエンジン、ディレクトリ、インデックス、リ ンクといった、情報検索ツールを提供しており、これには、§512(a)ではなく、 より厳格な§512(d)の要件の適用になるという。

原告Pは、また、Napsterは、著作権侵害の素材は、Napsterのシステムを通じて 送信ないしルーティングされていないのだから、§512(a)の責任制限規定が保護 する機能を果たしていないと主張する。 Pが、§512(k)(1)(A)の「サービスプロバイダ」の定義規定は、§512(a)の前に 置かれた文言とは同一ではないと指摘していることは正しい。§512(a)では、送 信、ルーティングないし接続提供は、「システムないしネットワークを通じて」 なされなければならないという追加的要件が課されている。 Pは、選択的主張として、仮にユーザのコンピュータがNapsterのシステムの一部 であるとされるならば、MP3ファイルの複製は、送信に合理的な必要な期間を超えてシス テム内に蓄積されているので、§512(a)(4)の要件を満たさないという。

最後に、Pは、§512(i)の一般的な要件の下、サービスプロバイダは、繰り返し 侵害を行う者の利用を終了させる指針を採用し、合理的に実施し、ユーザに周知 させなければならないと論じる。Pによれば、Napsterは、著作権遵守政策を本訴 提起後になってようやく採用したにすぎず、現在でも、有意味な方法により 侵害者を規律してはいない。

I. それぞれの機能の独立的な分析

§512(n)により、§512(a)、(b)、(c)、(d)は、本条文の適用目的上、 独立別個の機能を規定したものだとされている。 Pは、§512(a)は、Napsterのシステムに包括的な責任制限を与えるものではない と主張する。Pは、本訴の中核部分は、§512(d)で規定されている情報検索ツー ルであると考えている。Pによれば、問題のシステムは、§512(a)の意味におけ る、受動的な接続機能(passive conduit)ではない。Napsterは、 §512(d)が適用されるべき「ディレトリ、インデックス、レファレンス、ポインタ、 ハイパーテキストリンクを含む情報検索ツールを用い、 ユーザを、著作権を侵害する素材や侵害行為を含むオンラインロケーションに 照会、リンクする」サービスプロバイダである。 そして、§512(d)は、ユーザに対する積極的な援助に適用されるゆえに、より厳 格な要件を課している。

これに対し、被告Dは、 次の二つの反論を提出している。第一に、Dは、Dが提供している情報 検索ツールは、ユーザが選択するMP3ファイルの自動送信、ルーティング、接続 提供サービス機能に対して付随的なものにすぎないので、§512(d)ではなく§512(a)が 適用されるべきだという。 そうでないとしても、第二に、仮に裁判所が§512(d)の下で情報検索機能を分析する と決定するとしても、Napsterの他のサービスの面については、§512(a)の責任 制限規定を適用すべきであるというのである。

Napsterが、情報検索機能を果たしていることに疑いはない。Napsterサーバは、 ログオンしているユーザが共有を希望しているファイルのリストを記録しており、 データはユーザがログオフした時に消えるとしてもインデックスの構造自体は、 その後も存在しつづける。Napster社の技術者も認めているように、Napsterは、 無料の検索ツールとしても機能している。 Napsterのソフトは、「ホットリスト」機能も持っており、それによれば、ユー ザは、他のユーザのログイン名を検索し、通信したい相手方がサービスに接続し た時にその通知を受け取ることができる。両当事者とも、検索可能なディレクト リとインデクスがあることについて同意している。

しかし、Dは、情報検索機能は、あくまでもMP3ファイルの送信という中核的機能 に対し付随的であり、また、ファイルの編成や他のインターネットサイトへのリ ンクの提供の仕方は、Yahoo!のような他の検索エンジンと同じではないと主張し ている。Dは、Yahoo!のような検索エンジンが、人的な判断と編集上の裁量に依 拠しているの対し、Napsterは、ユーザからの最初の刺激に対する自動的な反応 にすぎないとして、両者を対照している。

§512(d)に関して、最後に、Dは、DMCAの責任制限規定は、相互排他的ではない と主張する。§512(n)によれば、情報検索ツールについて§512(d)による保護が 与えられようと否とにかかわらず、サービスプロバイダは、§512(a)の責任制限 規定の適用を受けるのである。

Napsterのインデックス、ディレクトリ、検索エンジンについては、 両当事者の間に、重要な事実に関する争いがあるので、裁判所は、それらの機能 が当該著作権侵害行為に対して付随的であるかどうか、また、独立し て§512(d)の分析に服すべきかどうかについて、判断を留保する。

しかし、§512(d)の潜在的な適用可能性が存在するということは、§512(a)の責 任制限規定を積極的抗弁として利用することを否定するものではない。 §512(n)

II.§512(a)の適用について

Pは、Napsterは、§512(a)の対象たる、受動的な接続機能(passive conduit)を 提供していないと主張している。 「受動的接続機能」という言葉は、条文上には存在せず、立法経過の中で使われ た。 裁判所は、制定法解釈上、その明白な文言をまず参照すべきだが、文言が不明確 な場合には、立法過程に依拠することができる。Pは、「接続機能(conduit)」と いう立法過程の用語法は、「システムを通じて」素材の送信、ルーティング、接 続提供を行うという、制定法上の文言の意味を解明すると主張している。

Dは、Napsterサーバを通じてMP3ファイルが送信されていることを明示的に否定して いる。 Dは、ファイル自体は、ユーザのコンピュータの中に存在しており、彼らの コンピュータの間で、インターネットを通じて、 直接的に送信されているというのである。 インターネットは、「サービスプロバイダにより、あるいはサービスプロバイダ のために、コントロールないし運用されているシステムやネットワーク」とは考 えられない。17U.S.C.§512(a) Dは、この難点を回避するために、Napsterサーバとユーザのコンピュータ上の Napster MusicShareブラウザソフトは全て、Napsterシステム全体の一部を構成 していると主張する。 Dは、自己のシステムを狭く定義し、それはユーザのコンピュータ上のブラウザソフトを 含むと理解する。 これに対し、Pは、(1)システムは、ブラウザを含まないか、あるいは、(2)ブラ ウザのみならずユーザのコンピュータ自体をも含むかのどちらかであると主張し ている。

仮にシステムが、ユーザのコンピュータ上のブラウザを含むとしても、MP3ファ イルは、§512(a)の文言上、その「システムを通じて」送信されるわけではない。 Dは、自己の受動的な役割を強調し、「全てのファイルは、Napsterユーザのコン ピュータからインターネットを通じて(through the Internet)、 要求ユーザのコンピュータへと直接的に 送信される」と言う。Dは、送信がNapsterサーバを経由しないことを認めている。 このことは、仮に、個々のユーザのNapsterブラウザがシステムの一部であると しても、送信は、そのシステムの一部から他の一部へ、あるいは、システムの部 分間で行われるのであり、システムを「通じて」("through" the system)行われ るわけではないことを意味している。 裁判所は、§512(a)は、MP3ファイルの送信について責任制限の保護を付与して いないと認定する。

MP3ファイルが、システムを通じて送信されていないゆえに§512(a)の保護が与 えられないとしても、 「送信」以外の「ルーティング」や「接続提供」に該当する可能性はある。これ らの機能は、独立的に分析されなければならない。 しかし、Napsterは、そのシステムを「通じて」接続を提供しているわけではな い。Napsterサーバは、要求ユーザとホストユー ザ間の接続を確立するために、アドレス情報を提供するが、接続自体は、インター ネットを通じて行われるのである。立法過程が明らかにするように、議会は、 「サービスプロバイダが、他者の通信のための「接続機能(conduit)」の役割を 果たしている」活動に対してのみ、§512(a)の責任制限規定が適用されるべきだ と意図していた。 裁判所は、 summary judgmentの被申立人に最も有利に推定を働かせると、 Napsterが、接続を可能にするアドレス情報と異なり、 「接続機能自体(a conduit for the connection itself)」を提供し ているとは認定できない。 Napsterは、接続開始を可能ないし容易にしているが、この接続は、§512(a)の 意味において、システムを通じてなされているわけではない。

「ルーティング」の意味については、両当事者とも十分に解明していないし、立法 経過も参考にならない。Dは、「接続提供」と同義であるとしているようである。 裁判所は、議会が同義と考えていたとしたら、両方の用語を選言的に用いなかった であろうと考える。 著作権を侵害していると主張されている素材のルーティングは、Napsterサーバ ではなく、インターネット を通じて、ホストユーザから要求ユーザへとなされていると、両当事者により 主張されているのであるから、裁判所は、 ルーティングについても、Napsterシステムを通じてなされているとはいえないと認定す る。

III.著作権遵守政策 §512(i)(略)



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芹澤英明
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