第9・10・11回  (2001/6/13, 6/20, 6/27)
アメリカ製造物責任法理の変容

[初出]2001/6/13
[最新更新]Wednesday, 01-Aug-2001 12:58:10 JST

これまではアメリカ法の基本的なあり方について裁判制度を中心にみてきました。 それは、このような手続法的な視点が、実体法の内容を検討するときにとても 重要だからです。ある分野の実体法について、日米間の相違が問題にされる局面 にあっても、その相違は、裁判制度の違いから説き起こさなければ ならないことがよくあります。

今回は、不法行為の分野からproducts liability(製造物責任)訴訟をとりあげます。 製造物責任訴訟は、1970〜80年代には、日米法文化摩擦にとって大きな領域でしたが、 その後、アメリカにおいて製造物責任の行き過ぎを是正する諸改革が進み、 1994年に日本でも無過失責任を前提とする 製造物責任法(平成六年法律第八十五号)が立法されたために、 現在では、かつてほどのひどい摩擦はなくなったといえるでしょう。 しかし、現在でも、日本の企業法務にとって、アメリカの製造物責任訴訟対策が 大きな位置を占めていることは変わりありません。

今回とりあげる事件は、日本の自動車製造会社やそのアメリカ子会社が、design defects(設計上の欠陥)warning defects(警告上の欠陥)を理由として、 製造物責任を問われた典型的な事例です。 ここでは、 これまで学んできた、アメリカの裁判制度の基本構造についての理解が、 実体法としてのアメリカ製造物責任法理を理解するために、 いかに重要であるかを確認してください。


 

[キーワード]

  1. torts(不法行為)
  2. products liability(製造物責任)
  3. negligence(ネグリジェンス、過失責任)
  4. strict liability(厳格責任)
  5. warranty(担保責任、保証)
    express warranty(明示の担保責任)
    implied warranty(黙示の担保責任)
  6. risk/utility test(危険/効用基準)
    consumer expectation test(消費者期待基準)
  7. defects(欠陥)
  8. Restatement(Second) of Torts, §402A(1965)
  9. Restatement(Third) of Torts: Products Liability, §2 (1998)
  10. American Law Institute(ALI;アメリカ法律協会)
  11. summary judgment(正式事実審理を経ないでなされる判決)
    judgment as a matter of law(法律問題判決)
    new trial (再審理)
  12. preponderance of evidence (証拠の優越)
  13. preemption(専占)



[判例]

  1. Riley v. American Honda Motor Co., 259 Mont. 128, 856 P.2d 196(1993)
  2. Weiner v. American Honda Motor Co., Inc. , 718A.2d 305 (Pa.Super. Ct. 1998)
  3. Bowersfield v. Suzuki Motor Corp., 111F.Supp.2d 612 (E.D.Pa. 2000)
  4. Geier v. American Honda Motor Company, 120 S.Ct.1913(2000);山口正久 「いわゆるno airbag訴訟とpreemptionの抗弁の成否」ジュリスト1194号 147頁(2001)



[参考文献]

  1. 藤倉皓一郎「アメリカ製造物責任法における「過失(フォールト)」概念の復 活---不法行為法リステイトメント第3版「製造物責任」(最終草案)を中心に---」 『現代ヨーロッパ法の展望 』485頁(北村一郎編集代表1998)
  2. 浅香吉幹『アメリカ民事手続法』137-142頁(2000)

 

[参考リンク]

  1. Riley 事件手続(図)
  2. The American Law Institute(ALI;アメリカ法律協会)[ali.org]
  3. American Torts Reform Association(ATRA;アメリカ不法行為法改革協会)
    [各州の不法行為法改革の記録(1986-)]
    [各州の不法行為法改革(2001)] [www.atra.org]
  4. Products Liabilityby Joseph R. D'Addario [www.productslaw.com]

 

 

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芹澤英明
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