第8回  (2001/6/6)
現代型訴訟への対応(2)----Mitsubishi事件判決(1986)

[初出]2001/6/6
[最新更新]Wednesday, 25-Jul-2001 14:14:21 JST

第7回現代型訴訟への対応(1) で検討したように、 アメリカ法における現代型訴訟の特徴の一つは、 pretrial段階の肥大化、長期化に現れているといってよいでしょう。 当事者は、pretrialの間に、discoveryによって相手の主張の根拠を評価し、争 点整理をしていく間に、trialになった場合の勝訴の見込みを算定します。 同時に、裁判の長期化と費用の増大を嫌い、早期に和解しようとする動機が働く ことにもなります。

pretrialからの離脱の道は、和解だけではありません。 当事者は、訴訟コストの増大という問題に対して、当初から 代替的紛争解決手続(ADR) を選択することによって、訴訟自体を回避する傾向が顕著に見られるように なりました。 これに対しては、裁判手続による法的な権利実現があくまで正道であるという伝 統的立場からの批判が根強くなされていますが、 現在のアメリカ法実務は、調停や仲裁サービスを提供する民間 のADR Providersビジネスの存在を無視することができないところまできていま す。

今回は、日本企業が当事者になった事件で Federal Arbitration Act(連邦仲裁法)の適用領域を拡大するきっかけとなっ た有名な国際仲裁についての判例をとりあげます。

代替的紛争解決手続と裁判とは独立に存在するものではありません。 代替的紛争解決手続が現代型訴訟に対する一つの応答であるとするなら、 制度論的な対比だけでなく、両者の相互関係、特に、代替的紛争解決に不服を持 つ当事者に対して裁判所がどのような対応をとるべきかについての理解を深める 必要があります。

このようにして、trial(正式事実審理)を中心とする裁判手続の構造を把握しなければ、 アメリカ法におけるADR(代替的紛争解決手続)の発展の意義もまた理解できないこと が分かるでしょう。


 

[キーワード]

  1. preventive law(予防法学)
  2. Alternative Dispute Resolution(ADR, 代替的紛争解決手続)
  3. settlement(和解)
  4. mediation(調停)
  5. arbitration(仲裁)
  6. Federal Arbitration Act(連邦仲裁法)
    9 U.S.C. §§1 -
  7. Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards
    9 U.S.C. §§201 -
  8. Uniform Arbitration Act (2000)
    [オンライン版] [www.law.upenn.edu]
  9. Sherman Act, §1, §2
    15 U.S.C.§1, §2
  10. preemption(専占)

[判例]

  1. Mitsubishi v. Soler Chrysler- Plymouth, Inc., 473 U.S. 614 (1985)
    [判決原文]
  2. Daihatsu Motor Company, Ltd. v. Terrain Vehicles, Inc., 13 F.3d 196 (7th Cir. 1993)[日本の仲裁機関の仲裁判断の執行が認められた事例]

[参考文献]

  1. 石黒一憲『国際民事訴訟法』143、300、302頁(1996)
  2. Ian R. Macneil, American Arbitration Law, 163-66 (1992)

 

[参考リンク]

  1. 社団法人 国際商事仲裁協会(The Japan Commercial Arbitration Association) [www.jcaa.or.jp]
  2. アメリカ仲裁協会(American Arbitration Association) [www.adr.org]

 

 

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芹澤英明
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