第6回  (2001/5/23)
州裁判所の管轄権----Asahi Metal事件判決(1987)

[初出]2001/5/23
[最新更新]Wednesday, 25-Jul-2001 01:44:17 JST

 

すでにみたように、連邦裁判所の裁判権が、合衆国憲法第3編で規定されている もの以外に及ばないという点で制限的管轄権であるのに対し、 州裁判所の裁判権にはこのような制限は存在していません。 州裁判所の裁判権は、各州の憲法を含む州法によって規定されています。

州の裁判所は、州法のLong Arm Statute(ロングアーム法)に基づき、自 州民の利益を保護するために、 その管轄権を拡大する傾向があります。 しかし、このようなことを無制限に放置すると、 その州と何ら関連性を持たない外部者が被告として訴えられた 場合に、過大な応訴の負担を負わなければならないことにもなりかねません。

連邦最高裁は、州のLong Arm Statuteの効力は、 合衆国憲法第14修正のDue Process Clause(デュープロセスクロー ズ)により、制限されるという判例法を展開してきました。 そこでは、最高裁は、 「フェアプレーと実質的正義に関する伝統的観念」(traditional notions of fair play and substantial justice)という基準を用いて、州の裁判権の範囲を 画定しようとしています。

本日は、日本企業が、州裁判所における製造物責任訴訟の手続にまきこまれたも のの、連邦最高裁まで争い、そこにおいて、州の裁判権が憲法14修正のデュー プロセスクローズによって否定された、非常に著明な事件をとりあげてみましょ う。この判決には、最高裁が憲法第14修正のデュープロセスクローズによって、 州裁判所の裁判権を限定する場合の典型的な理由づけが見られますが、それは連 邦制度に由来するものであることをよく理解してください。いわば国内問題とも いえる複数の州の裁判権を調整するための判例法が、 一定の修正を受けながらではあっても、 国際的な裁判権の範囲を画する局面にそのまま適用されるところに、アメリカ法 の特徴があるといえます。

 

[キーワード]

  1. 合衆国憲法第6編2項 Supremacy Clause(最高法規条項)
  2. 合衆国憲法第14修正 Due Process Clause(デュープロセス条項)
  3. Long Arm Statute(ロングアーム法)
    例) California Code of Civil Procedure,§ 410.10 [条文原文参照]
  4. extraterritoriality(域外適用)
  5. in personam jurisdiction (= personal jurisdiction;対人裁判権・対人管轄権)
    in rem jurisdiction (対物裁判権・対物管轄権)
  6. fair play and sutstantial justice(フェアプレイと実質的正義)
    1. minimum contact(最小限度の接触)
      general jurisdiction / special jurisdiction
    2. reasonableness (合理性)

[判例]

  1. Asahi Metal Industry Co. v. Superior Court, 480 U.S. 102 (1987) ; [1988]アメリカ法160頁、孝橋宏評釈
    [判決原文]

  2. International Shoe Co. v. State of Washington, 326U.S.310(1945);英米法判例百選[第三版]82事件、坂本正光評釈
  3. Shaffer v. Heitner, 433U.S. 186(1977)

 

[参考文献]

  1. 浅香吉幹『現代アメリカの司法』88-93頁(1999)
  2. 浅香吉幹『アメリカ民事手続法』47-52頁(2000)
  3. 田中英夫『英米法総論(下)』§§821(2)(1980)

 

[参考リンク]

  1. Asahi Metal事件(図)
  2. 州裁判所全国センター:州裁判所一覧 [www.ncsc.dni.us]
  3. 合衆国司法省統計局:州裁判所統計 [www.ojp.usdoj.gov]

 

 

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芹澤英明
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