第4・5回  (2001/5/9, 5/16)
連邦裁判所の管轄権----Federal Question Cases(連邦問題管轄) 

[初出]2001/5/8
[最新更新]Wednesday, 18-Jul-2001 17:00:22 JST

連邦裁判所には、訴訟の内容が連邦法(憲法、条約、法律等)の解釈に関 するものである場合には、連邦問題管轄(Federal Question Jurisdiction) があります。 (憲法第3編2節1項)

連邦の立法権は、 合衆国国憲法 第1編第8節 その他憲法上の規定によって与えられた権限のみを行使 することができます。したがって、連邦問題管轄事件の多くは、連邦議会の立法 権の範囲内で制定される連邦制定法の解釈適用をめぐる問題ということになりま す。

連邦裁判所の管轄の行使が認められるのは、 連邦議会が、合衆国憲法の範囲内で、立法によって 連邦裁判所の管轄について具体的に定めた場合に限られるので、 連邦制定法が連邦裁判所 に専属管轄を付与していなければ、連邦問題事件についても、 州裁判所との間で競合管轄が生じることになります。

連邦問題事件に関する最終的有権的な法解釈は、合衆国最高裁を頂点とする連邦裁判所 の判例法によって示されます。 この点、州籍相違事件とは異なり、連邦裁判所で は、法の全国的統一的な解釈適用がなされるように努力されているといえます。 しかし、それでも、 州裁判所との間に競合管轄がある限り、州裁判所においても、 連邦法を解釈適用する場合が多々存在することに注意してください。 (被告の請求による州裁判所から連邦地方裁判所への移管と、 敗訴当事者による州最高裁から連邦最高裁への裁量上訴という二つの制度が 存在していますが、州裁判所における連邦法解釈適用の統一のための 手段としては、十分に機能しているとはいえません。)

連邦問題事件の中には特許法や著作権法のような知的財産法が含まれます。 (合衆国憲法第1編8節8項) 1990年代の前半には、陪審審理を伴う特許権侵害訴訟により、日本企業が巨額の損害賠 償を支払う例が見られ、日米法文化摩擦の大きな焦点になりました。 (例、1992年のHoneywell と Minolta Camera Co.との間のカメラのオートフォー カス技術をめぐる訴訟)

今回は、連邦問題事件の一例として、 日本の企業が半導体製造技術をめぐる 特許権侵害訴訟にまきこまれた事例をとりあげてみ ましょう。現在では、 特許権侵害訴訟の「行き過ぎ」に対しては、その後の判例法の展開により、 手続法・実体法上、様々な是正措置がとられていることに注目してください。

 

[キーワード]

  1. Necessary and Proper Clause(必要かつ適切条項)
    合衆国憲法第1編8節18項
  2. (Interstate) Commerce Clause(州際通商条項)
    合衆国憲法第1編8節3項
  3. Federal Question Jurisdiction(連邦問題裁判権)
    28U.S.C.§1331[一般規定]
  4. Admiralty Jurisdiction (海事裁判権)
    28U.S.C.§1333
  5. その他Federal Question Jurisdictionの例
    28U.S.C.§1338[特許・著作権事件]
    28U.S.C.§1334[破産事件]
    28U.S.C.§1337[反トラスト法関係事件]
    28U.S.C.§1343[Civil Rights関係事件]
  6. exclusive jurisdiction(専属管轄)
    concurrent jurisdiction(競合管轄)
  7. federal common law (連邦コモンロー;連邦判例法)
  8. well-pleaded complaint rule (十分に陳述された訴状の法理)
  9. United States Court of Appeals for the Federal Circuit(連邦巡回区 控訴裁判所)
    28U.S.C.§1295
  10. patent(特許権)
    patent infringement(特許権侵害)
    claim (クレーム、請求項、特許請求の範囲)[特許出願人が自己の発明とし て特許権の保護を請求する主題を簡潔明瞭に定義した部分]
    doctrine of equivalents(均等理論)[特許権者はクレームの文言通りの発明 だけでなく、その均等物の範囲まで、他人の実施を排除できるという判例法 理]
    prosecution history estoppel(審査手続過程の禁反言)[特許権者が特許 出願手続において自分から放棄した部分について、後に特許権の保護範囲で あると主張することはできないという判例法理]
  11. summary judgment(正式事実審理を経ないでなされる判決) (→ 第7回現代型訴訟への対応(1)----Matsushita 事件判決 (1986))
    trial(正式事実審理)
    judgment as a matter of law(法律問題判決)

[判例]

  1. Loral Fairchild Corp. v. Sony Corp., 181 F.3d 1313(Fed.Cir. 1999), cert. denied, 528 U.S. 1075(2000)
    [判決原文] [serv5.law.emory.edu]

  2. Markman v. Westview Instruments, Inc., 517U.S.370(1996)
    [判決原文] [supct.law.cornell.edu]
  3. Warner Jenkinson Co.,Inc. v. Hilton Davis Chemical Co., 520U.S.17(1997)
    [判決原文] [supct.law.cornell.edu]

 

[参考文献]

  1. 浅香吉幹『現代アメリカの司法』48-51頁(1999)
  2. 田中英夫『英米法総論(下)』§§811, 832(1980)

 

[参考リンク]

  1. Loral事件における手続の流れ(連邦地裁)
  2. フェデラル・サーキット連邦控訴裁判所 の公式ページ [www.fedcir.gov]
  3. 1999年度講義「アメリカ法入門:陪審制について」

 

 

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