第2・3回  (2001/4/25, 5/2)
連邦裁判所の管轄権----Diversity Cases(州籍相違管轄) 

[初出]2001/4/25
[最新更新]Wednesday, 30-May-2001 13:37:44 JST

連邦裁判所は、その管轄権が 合衆国国憲法 第3編2節1項 に列挙されたものに限定されているという意味で、 制限的管轄権のみを持つ裁判所でしかありません。

これに対し、州裁判所は、一般的管轄権を持っており、 連邦裁判所に専属管轄がある事件は別として、 どのような民事事件をと りあげるかは、それぞれの州法の問題です。 (もっとも、後に詳しく見るように、州裁判所の管轄も、合衆国憲法第1 4修正のDue Process Clause(デュープロセス条項;法の正当な過程条項)その他連邦憲法の制限下にあるという意味で無制限ではありません。)
(→第6回 州裁判所の管轄権----Asahi Metal事件判決 )

合衆国国憲法第3編に規定されている 第連邦裁判所の管轄権には様々なものがありますが、中でも Diversity of Citizenship(州籍相違事件管轄)とFederal Question(連邦問題管 轄)が特に重要です。 今回は、前者をとりあげてその特徴について解説します。

現在では、連邦裁判所の管轄が 州籍相違に基づく場合、そこで適用される実体法は、わずかな 例外を除いて、その連邦裁判所が所在する州の州際私法のルール(抵触法準則)に よって選択される州法が準拠法とされています。 これは、連邦裁判所では、 その連邦裁判所が存在する州の州裁判所と同じ実体法を適用することを意味して います。

州籍相違による管轄の場合、 連邦裁判所によってこのように選択される準拠法は、連邦法ではなく、州法であ るという点に注意してください。実体法が州毎に異なることを考えれば、 連邦裁判所による事件解決といえども統一的になされるわけではないことが容易 に分かるでしょう。

この準拠法が州法ではなく、 日本法のような外国法である場合も、同じように考えることができるでしょう。 今回とりあげる判例は、連邦裁判所において、 日本の契約法が準拠法として選択された事例です。

 

[キーワード]

  1. courts of limited jurisdiction(制限的管轄権のみを持つ裁判所)
    courts of general jurisdiction(一般的管轄権を持つ裁判所)
  2. Diversity Jurisdiction(州籍相違に基づく裁判権)
    Diversity of Citizenship (州籍の相違)
    28U.S.C.§1332
    complete diversity(完全な州籍相違)
  3. Federal Question Jurisdiction(連邦問題裁判権)
    28U.S.C.§1331
    (→本講義第4回 参照)
  4. removal(移管) / remand (差戻し)
    28U.S.C.§1441
  5. Conflict of laws(州際私法、国際私法)
  6. question of law (法律問題)
    question of fact (事実問題)
  7. Determination of Foreign Law(外国法の確定)
    Federal Rules of Civil Procedure, Rule 44.1
  8. certification (意見照会)
  9. restitution (原状回復、不当利得返還)
  10. expert witness (専門家証人、鑑定人)

[判例]

  1. Universe Sales Co. v. Silver Castle, Ltd., 182 F.3d 1036(9th Cir. 1999)[Diversity Caseで連邦裁判所において日本法の解釈適用が 問題になった事例]
  2. Batchelder v. Kawamoto, 147 F.3d 915, 918 (9th Cir. 1998) [Diversity Caseで連邦裁判所において日本法の解釈適用が問題 になった事例]
  3. 連邦裁判所(Diversity Cases)の適用する法(重要判例メモ)

 

[参考文献]

  1. 浅香吉幹『アメリカ民事手続法』57-59頁(2000)
  2. 浅香吉幹『現代アメリカの司法』52-55, 86頁(1999)
  3. 田中英夫『英米法総論(下)』§832(1980)
  4. 浅香吉幹評釈「Erie Railroad Co. v. Tompkins, 304U.S.64(1938)--- 連邦裁判所の適用する法(2)」 別冊ジュリスト139『英米法判例百選 [第三版]』14事件(1996)

 

[参考リンク]

  1. 連邦裁判所の構成図 [www.uscourts.gov]
  2. 連邦裁判所Circuit地図 [www.uscourts.gov]
  3. 司法統計 連邦地裁係属事件(1999.10〜2000.9)
    Judicial Business of the United States Courts 2000 [www.uscourts.gov]

 

 

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