第13回  (2001/7/18)
クラスアクションと和解-----Matshushita事件判決(1996)

[初出]2001/7/18
[最新更新]Friday, 24-Aug-2001 11:03:04 JST

クラスアクション(class action)は 同じ性質を持つ複数の私的請求を糾合し、裁判の結果が有利であろうと不利であ ろうと、その効果が全ての当事者が及ぶという点で、 紛争を一回の裁判でまとめて解決するための強力な制度です。 と同時に、 単独では訴訟になりにくい少額訴訟を糾合し、 違法行為を抑止するために民事訴訟を促進して、 私人が民事訴訟を通じて法の実現に貢献するという意味で、 前回みた、懲罰的損害賠償(punitive damages)とも共通する機能を 持つ制度だと言えます。( → 第12回 懲罰的損害賠償の限界---Honda事件判決(1994) )

1966年に改正された連邦民事訴訟規則23条が、それまで限定的だった要件と効果 を大幅に拡大してから、共通の法律問題または事実問題があるというだけで、 それ以上別段団体性のないグループのために、 クラス代表者が名乗り出て訴訟を提起するという、現在のクラスアクションの形 態が定着しました。

しかし、やがて、現代型訴訟でpretrial段階での和解が多用されるようになった結果、 最初から和解(settlement) を目的としたクラスアクションが提起されるようになり、 クラス代表者と構成員の間の利益相反が多く見られるようになりました。 (→ 第8回  現代型訴訟への対応(2)----Mitsubishi事件判決(1985) )

今回は、和解を目的としたクラスアクションの問題点を暴き出し、 その後の判例法理の展開の起点となった、 1996年のMatsushita 事件判決をとりあげてみましょう。





連邦民事訴訟規則 23条

(a)共通要件
  1. 多数性(numerosity) --構成員の訴訟を併合することが現実的でない
  2. 共通性(commonality)-- 構成員に共通する法律問題、事実問題がある
  3. 典型性(typicality)-- クラス代表者の請求ないし防御がクラス全体 中で典型的である
  4. 十分性(adequacy)--クラス代表者が公正かつ十分にクラスの利益を保 護する
(b)3類型(次のどれかの類型にあてはまること)
  1. 固有必要的共同訴訟型
    (A)個別訴訟では相手方当事者が矛盾する行為を求められる場合
    (B)限定資産状況(limited fund)の場合
  2. 共通差止命令(injunction)・宣言判決(declaratory judgment)の場合
  3. 拡大類型(例、不法行為、経済法違反、証券詐欺その他)
    支配性(predominance)---共通の法律問題・事実問題が個別問題に対し て支配的であること
    優位性(superiority)---個別訴訟よりも公正かつ効率的であること
(c)
  1. クラスアクションの承認(class certification)
  2. (b)(3)型クラスアクションにおける義務的notice及び クラスからの離脱
  3. [以下略]
(d)[略]
(e)和解---義務的noticeと裁判所による承認
(f)上訴---クラスアクションの承認・非承認判断に対する控訴裁への裁量上訴(1998年改正)



 

[キーワード]

  1. class action(クラスアクション、集合代表訴訟)
    Federal Rules of Civil Procedure, R.23[www.law.cornell.edu]
  2. derivative actions (派生訴訟、株主代表訴訟)
    Federal Rules of Civil Procedure, R.23.1 [www.law.cornell.edu]
  3. class representative (クラス代表者)
    class members (クラス構成員)
  4. class certification (クラスの承認)
  5. class definition(クラスの画定)
  6. notice (告知、通知)
  7. settlement (和解)
  8. private attorney general(私的法務総裁)
  9. securities fraud(証券詐欺)
    Private Securities Litigation Reform Act of 1995
    15 U.S.C.§ 78u-4
    Securities Litigation Uniform Standards Act of 1998
    15U.S.C.§§77p, 78bb(f)
  10. attorney's fee (弁護士報酬)
    contingent fee (全面成功報酬制度)



[判例]

  1. Matsushita v. Epstein, 516U.S.367(1996)

  2. Amchem Products v. Windsor, 117S.Ct.2231(1997);藤倉皓一郎「和解のた めのクラス訴訟--アスベスト被害者クラスの認証」法律の ひろば 1999年5号62頁;浅香吉幹、評釈[1998]アメリカ法303頁
  3. Ortiz v. Fibreboard Corp.,119S.Ct.2295 (1999)



[参考文献]

  1. 浅香吉幹『アメリカ民事手続法』37-45頁(2000)
  2. 黒沼悦郎『アメリカ証券取引法』120, 130頁〜(1999)
  3. 田中英夫『英米法総論(下)』§712(2) (1980)
  4. 田中英夫・竹内昭夫『法の実現における私人の役割』70-88頁(1987)
  5. Deborah R. Hensler & Thomas D. Rowe, Jr., Beyond "It Just Ain't Worth It":Alternative Strategies for Damage Class Action Reform, 64 Law & Contemp. Probs. 137 (Spring/Summer 2001)
    [オンライン版] [www.law.duke.edu]

 

 

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芹澤英明
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