第7回  著作権 (2) (2000/6/21)

[初出]2000/6/21
[最新更新]Friday, 30-Nov-2001 15:45:59 JST

WIPO著作権条約の11条「技術的保護手段(technological measures)」の国内法化 の一環として、 DMCAは、次の3つの規定を置きました。

  1. 17U.S.C.§1201(a)アクセスコントロール技術措置規定、
  2. 17U.S.C.§1201(b)権利保護技術措置規定、
  3. 17U.S.C.§1202 著作権管理情報規定、
§1201(a)は、著作権者が、 著作物の暗号化等の技術的手段により著作物へのアクセスをコン トロールすることを認めたものです。ここで、アクセス・コントロールとは、 「技術的手段が、動作の通常の過程において著作物へのアクセスを行うために、 著作権者の許諾を得て、情報の入力またはプロセスもしくは処理を必要とする」 ものであると定義されています。§1201(a)(3)(B)

§1201(b)は、複製権の実効的な保護のために、複製回数の制限や複製行為自体 を禁止する技術的手段を保護することを認めたものです。§1201(b)(2)(B)

いずれも、伝統的な著作権の中心的な内容である「複製権」ではカバーされてい ない利用行為を禁止することを意味し、一般公衆による情報の利用が妨げられる 恐れがそれだけ強いことに注意してください。

ここでは、DVDのアクセス・コントロール技術である暗号CSSを解読し、そ の解読ソフトDeCSSをMailing ListやWebサイトを通じて配布する行為が、 DMCA§1201(a)違反になるかが争われた事例をとりあげ、この規定の問題点を考えてみましょう。


DMCA§1201の条文構造
  アクセス・コントロール技術措置規定
§1201(a)(1), (2)
権利保護技術措置規定
§1201(b)(1)
例外規定 (1)回避行為 (2)回避装置提供等*1 回避装置提供等*2
他の権利等*3
§1201(c)
非営利図書館・文書館・教育機関での利用
§1201(d)
× ×
Law Enforcement, Intelligenceその他政府の行為
§1201(e)
リバース・エンジニアリングでの利用
§1201(f)
暗号研究
§1201(g)
×
未成年者保護のアクセス・コントロール目的
§1201(h)
×
個人識別情報(プライバシー)保護
§1201(i)
× ×
安全性試験
§1201(j)
×

*1

§1201(a)(2) アクセス・コントロール技術措置回避のための技術、製品、サービス、装置、部品の製造、輸入、公衆提供、供給、その他の取引行為のうち次のものを禁止している。
  (A)技術的手段を回避することを主な目的として設計ないし製造されたもの、
  (B)技術的手段を回避すること以外、限られた商事的な意義のある目的ないし利用がないもの、または、
  (C)技術的手段を回避することに利用されることを知っている者ないしその者と共同してマーケティングが行うわれたもの

*2

§1201(b)(1) 権利保護技術措置回避のための技術、製品、サービス、装置、部品の製造、輸入、公衆提供、供給、その他の取引行為のうち次のものを禁止している。
  (A)技術的手段を回避することを主な目的として設計ないし製造されたもの、
  (B)技術的手段を回避すること以外、限られた商事的な意義のある目的ないし利用がないもの、または、
  (C)技術的手段を回避することに利用されることを知っている者ないしその者と共同してマーケティングが行うわれたもの

*3

§1201(c) 他の権利等に影響を与えない
「他の権利等」とは次に掲げるものを指す。

(1) fair useを含む著作権侵害に対する他の抗弁等に影響を与えない
(2) 著作権侵害に関する代位責任、寄与責任に影響を与えない
(3)消費者電子機器、通信機器、コンピュータ製品やその部品のデザインに、それ以上の技術措置を義務づけない
(4)消費者電子機器、通信機器、コンピュータ製品を利用する行為に関し、言論の自由権やプレスの権利に影響を与えない

ただし、(3)については、 §1201(k)で、家庭用アナログビデオ機器の製造者に対し、Macrovision方式のコピー・コントロール技術を入れることが義務づけられている。

 



上の表で、アクセス・コントロール(§1201(a))とコピー・コントロール (§1201(b))で、許される行為の範囲が異なっていることに、どのような立法政 策があると考えられますか?

また、それは、合理的な区別と言えるでしょうか?

[判例]

  1. Universal City Studios, Inc. v. Reimerdes, 82 F. Supp. 2d 211, 53 U.S.P.Q.2d (BNA) 1780 (S.D.N.Y. 2000)[仮処分的差止命令]
  2. Universal City Studios, Inc. v. Reimerdes, 82 F. Supp. 2d 294 (S.D.N.Y. 2000)("Universal I")[事実認定及び責任]
    Universal City Studios, Inc. v. Reimerdes, 111 F. Supp. 2d 346 (S.D.N.Y. 2000) ("Universal II"), aff'd sub nom., Universal City Studios, Inc. v. Corley, 2001 U.S.App.LEXIS 25330(2nd Cir. 2001)[本案的差止命令]

 

[参考文献]

  1. 芹澤英明 「アクセス・コントロールとPreliminary Injunction」ジュ リスト1173号86頁(2000)
  2. Glynn S. Lunney, Jr., The Death of Copyright:Digital Technology, Private Copying, and the Digital Millennium Copyright Act, 87Va.L.Rev. 813(2001)



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