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2013年12月17日

equity finance

最近,日経あたりでよく見るネタに,

増資をするという情報を企業が公表すると,一株あたり利益が薄まるとして株価が下落する

っていうのがある。

これがよく分からない。いやもちろん,Myers-Majlufのpecking order(エクイティファイナンスは企業業績の先行きに関するネガティヴな情報を市場に伝達する)っていうストーリーだってのなら分かるんだけれども。

一株あたり利益ってのは,利益(営業利益でも当期利益でも何でもいいけれど)を発行済株式総数で割ることによって得られる(まぁROEでも似たようなもんだけど)。

で,増資によって発行済株式総数が増えることによって一株あたり利益が薄まるっていうのは,

増資することによって分母の発行済株式総数は増えるけれども,分子の利益は変わらない

っていう前提をとっているかのように見える。

でも,この前提が(ほぼ全ての場合に)間違っていることは,あまりにも自明のことだ。この前提が正しいためには,増資によって調達された資金が,リターンを生じさせるようなプロジェクトに当てられたのではなく,何らリターンをうまないままに放置されている(=現金のまま放置されている),ってことを意味する。合理的な企業を前提とする限り,この想定が非現実的であることは明らかだ。

合理的な企業であれば,調達された資金を何らかのプロジェクトに投じるために資金調達をしているはずであり,そのプロジェクトは何らかのリターンをもたらすことを期待しているはずだ。もし,市場が期待するほどのリターンをもたらせないようなプロジェクトしか持っていないのならば,そんな資金調達をすべきではないし,逆に,資金調達をするってことは,市場が期待しているより(資本コスト)よりは高いリターンを見込めるプロジェクトを持ってるでしょ,ってことを意味する。

とすると問題は,増資によって調達された資金が投じられるプロジェクトが,その企業全体のそれまでのリターンに比べて,より高いリターンをもたらすものであるか,あるいは,より低いリターンをもたらすものであるか,ということになる。そしてもし,後者のシナリオが成立し,新たなプロジェクトが従前の企業全体のプロジェクトポートフォリオよりもひくいリターンをもたらすものであれば,一株あたり利益は低下して株価が下落するのは妥当な結果と言える。Myers-Majlufのpecking orderは,一定の条件の下では,これに近い状況が発生することを示したモデルだ。逆に,そのような条件が満たされなければ,必ずしも一株あたり利益が薄まるわけではなく,逆に,増えることもあり得ることになる。

なので,最初の

増資をするという情報を企業が公表すると,一株あたり利益が薄まるとして株価が下落する

というシナリオが常に成立しないというわけではもちろんないのだけれど,みんな,以上のようなことをきちんと考えた上で行ってるのかなぁ,というのが疑わしい希ガス。

僕がお馬鹿で,実はみんなはもっと深遠なことを主張してるんだ,っていうのであれば,教えてエロイ人。

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