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2013年07月12日

when you cannot make any statement

今週の金商法ゼミで取り上げた審決:

エルピーダメモリ株式会社の契約締結交渉先の社員からの情報受領者による内部者取引に対する課徴金納付命令の決定について
金融庁平成25年4月19日決定

エルピーダのインサイダー取引については,刑事事件として立件された経産省審議官の事件が有名だけれど,刑事扱いでなく,課徴金ルートに載せられたこんな事件もある。

エルピーダの公募情報が漏れたルートは,

- 野村證券がエルピーダの公募増資の主幹事を引き受けた(審決の中でD証券って言っているけれど,この記事からすると野村らしい)
- この証券会社は,引受部門が幹事を引き受けると,リサーチ部門は当該企業についてレポートを書けなくなる「リサーチ・ブラックアウト制度」を採用していた
- エルピーダを担当していたアナリストは,自分がレポートを書こうとしたところ,内部チェックシステムによって,エルピーダについてはレポートの公表を止められていることに気付いた
- あるヘッジファンドの運用会社(一応助言会社なんだけど,運用と認定されている)が,各証券会社のアナリストを呼んで推奨銘柄等をプレゼンさせるランチミーティングで,このアナリストのレポートからエルピーダが落ちていたため,運用会社がこのアナリストに質問したところ,「コメントできません」と回答
- このアナリストは,以前もこの運用会社のランチミーティングに呼ばれたことがあり,そのときは自ら担当する7社全てについてレポートしていた

という仕組み。

ま,リサーチ・ブラックアウト制度自体は,アナリストのレポートにバイアスがかかるインセンティヴがあるから合理的なんだけど,こういう風に悪用されるとねぇ。どうやって対処すればいいんでしょ。

もちろん,この6月の金商法改正で,情報提供者が刑事罰・課徴金の対象に新たに追加されたので,改正後は,このアナリストも処罰の対象になりうる(主観的目的の要件がかかるけれども,相手方にばれる蓋然性が高いことが分かっていて,アナリストとしての自分を売り込む目的でミーティングに出席したならば,要件充足とする解釈も十分成り立つ)。

その一方で,この運用会社に対する課徴金がたった12万円で(運用報酬ベースなので。6月改正後は3倍),大もうけしたヘッジファンドに対する追及がなされないとなると,ヘッジファンドとしては,インサイダーの「やり得」(←この言葉は品がないからよくないとあるセンセーが言っていたけれど,便利なのでとりあえず使う)で,「もっとがんがんインサイダーやってくれ!」って発破をかけたくなるよねぇ。

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