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2013年03月05日

DGP behind the numbers

このデータってどう読むの?って聞かれたのが,国税庁の申告所得税分布の弁護士のところ。たとえば2011年において所得が70万円以下の人が2万7千人中5700人(約1/5)ってやばいんじゃね?っていうのが質問の内容。

といわれて,国税庁のページから得られる,2006年から2011年までの6年間のデータを斜め読みしてみたのだけれど,それってあまりにナイーヴじゃね?という感じ。

まず,このデータを見ていて変だな,と気付くのは,
a) 所得が70-100万の数と70万円以下の数との比率が,国税庁が同じカテゴリに分けている他の職業に比べて,弁護士だけ異様に高い(他の職業は4-5倍なのに,弁護士だけ20倍近く)。普通のディストリビューションに比べると,かなり異様な形状をしているということは,きっと何か変なセレクション(nonlinearな関係)が効いているに違いない。
b) 2007年と2008年の間で,サンプリング・プロセスが明らかに変わっている:人員がほぼ倍になっているし(弁護士人口が1年で倍になることはあり得ない),70万円以下がそれまでほとんどなかったのが急に増えている。

そうすると,次の作業は,このanomalyを何とか合理的に解釈しよう,ってことだ。

まず,a)については,所得って結構人為的だよね,っていうシナリオが一つ考えられる。日本の会社の大部分は,法人税を納めていない(場合によっては赤字法人)ってことはよく知られているけれど,それは,実際には利益を上げていても,費用をがんがん計上することで所得をゼロにして納税を回避しているからだ。弁護士は,給与所得者でなくて事業所得者だから,所得控除は定額ではなく,「かかった」分だけ費用を控除できるから,その分所得を減らして節税できる。
とはいえ,それは国税庁の同じカテゴリの他の司法書士なんかも同じなので,それで説明するのは無理そうだ(逆に,司法書士なんかも,他のカテゴリに比べて70万円以下の「低所得者層」が多いことの説明がつく)。何で似た職業の中で弁護士だけ,っていうことは説明が付かない。だとすると,別のシナリオが必要で。
じゃ,弁護士と他の職業との違いはなんだろう,って考えると,実際はあまり訴訟実務とかやっていない人でも,「看板だけ掲げてる」なんてことが比較的簡単にできる(たとえば顧問料だけもらうとか),っていう職業だってことだろうか。たとえば,もう事実上引退して年金生活を送っているんだけど,とりあえず弁護士の看板だけは掲げている,っていう人は,結構いそうだ(そういう人であっても,弁護士会費を稼ぐために,収支とんとんになるくらいは顧問料などを稼ぐ必要があるだろう)。で,そういうタイプの人(事実上の引退を早めた?)が増えた,ってことはこのデータから言えそうだ。

もう一つ,b)の方は,税制に何か変化があったんじゃないの?って想像するのが合理的だろう(僕は税法は専門家じゃないので知らない)。たとえば,申告義務が強化されると,それまでずっと申告していた所得が上の層は相変わらず申告し続けるけれど,今までは申告する必要のなかった,上のa)の2つめのシナリオで述べたような人が急に申告を始める,っていう可能性がある。つまり,サンプリング・プロセスの変化が,ランダムな変化ではなくって,バイアスをもたらすようなノンランダムな変化だった,という可能性が高いわけだ。

とにかく,具体的な内訳(年齢構成とか)を見ないと分からないけれど,このデータには,a)b)の2つの点で不自然な点があるから,ちょっと額面で受け取るのはナイーヴすぎじゃね?というのが返事になる。

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