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2011年07月05日

consensus

宮城県の漁業特区構想について,「コンセンサスを得ろ」とはこれいかに。

漁業特区なんてものを設けることは,従来漁業権を独占してきた者たちからすれば,自分たちの既得権が剥奪されることを意味するから,そんな構想に対しては反対するに決まっている。
その意味で,コンセンサス(全員一致)をとることは不可能なわけで,おそらく宮城県知事は,コンセンサスを得なくても漁業特区を導入できるような法的手当(これは国(法律)レベルじゃないとできない)をして欲しい,というリクエストをしようとしていたんだろう,というのがまぁ考えられるところではある――もちろん,そのように既得権を持つ者の反対を押し切って漁業特区を導入することで,本当に震災からの復興が進むのか(あるいはより望ましい漁業システムが構築されるのか),という政策の実効性の当否については,よくよく検討の必要性があるけれども。
それに対して,国が「コンセンサスを得ないと助けない」と言うのは,「宮城県の提案は認めない」と言うのに等しいことになる。いやそうじゃなくて,宮城県知事は,既得権保有者の反対を押し切って漁業特区を導入することに対して,国はどのように評価して,これを援助する,あるいは,援助しないという態度決定をするのか,ということを聞きたかったんじゃないかと思われるのにねぇ。

というのが,一つの解釈。

もう一つのあり得る解釈は,ここでいう「コンセンサス」は,完全な全員一致ではなくて,前述したような既得権保有者を黙らせることができるような位の合理的な補償を付けることによって――理論的には,漁業特区の導入によって社会厚生が増大するのであれば,その余剰分を既得権保有者に対する補償に回してもおつりが来るはずだ――,既得権保有者の同意を擬制できるようなアレンジメントを作り上げることをも含める,というもの。

とはいえ,こういったアレンジメントも,なかなか難しい。宮城県にそのような補償をする財政力が残っているとは考えにくいし,国にもそうする余力はあまりありそうにない(そういう「策」なら,宮城県は自分の懐が痛むわけじゃないのでいくらでも作り出せるけども,たぶん国はそんな策に責任とれないよねぇ)。

また別に考えられる解釈は,ここでいう「コンセンサス」は,ex postのコンセンサスではなくて,ex anteのコンセンサス―Buchanan and Tullock的に言うならconstitutional settingでのコンセンサス――なんだ,というものだけれども,それだったら「(これから)コンセンサスを得る努力をしろ」という必要はなくて,「もうすでにコンセンサスは成立している」って話になるので,ちょっとこの意味で使われていたとは考えにくい。

というわけで,どうも筋の悪い議論ではある。

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