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March 3, 2011

just compensation

旧地方鉄道法
第31条 買収価額ハ左ニ掲クルモノトス
1.最近ノ営業年度末迄ニ運輸開始後3年ヲ経過シタル線路ヲ含ム開業線路ニ付テハ其ノ営業年度末ヨリ遡リ既往3年間ニ於ケル開業線建設費ニ対スル益金ノ平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル開業線建設費ニ乗シタル額ヲ20倍シタル金額
2.最近ノ営業年度末迄ニ運輸開始後3年ヲ経過シタル線路ヲ含マサル開業線路ニ付テハ買収ノ日ニ於ケル開業線建設費以内ニ於テ協定シタル金額
3.工事中ノ線路及買収ノ日迄ニ未タ使用開始ニ至ラサル改良施設ニ付テハ買収ノ日ニ於ケル建設費以内ニ於テ協定シタル金額
2 前項第1号ノ規定ニ依ル金額カ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ達セサルトキハ其ノ建設費以内ニ於テ協定シタル金額ヲ以テ買収価額トス
第32条 前条ノ規定ニ於テ益金トハ営業収入ヨリ営業費及賞与金ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合トハ3年間ニ於ケル毎営業年度末ノ開業線建設費ノ合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノニ1年間ニ於ケル営業年度ノ数ヲ乗シタルモノヲ謂フ
2 建設費、営業収入及営業費ハ命令ノ定ムル所ニ依リテ算出シタル金額ニ依ル
同僚から,旧地方鉄道法(←今のJRになる前の国鉄になるときにいろんな地方鉄道を政府が買い上げた法律)について,次のような質問が:
〔前提〕
1.政府が株式会社経営の鉄道を国有化(買収)する際の補償額について。
2.資本還元率をA%とする。
〔方法1:益金のみに着目〕
過去B年間の平均益金をA%で除す。
欠点:建設補修費(投下資本)5億の鉄道でも50億の鉄道でも益金が同一であれば補償額が同一となり公平を欠く。
〔方法2:建設補修費に対する益金の比率に着目〕
過去B年間の建設補修費に対する益金の平均比率に買収時の建設補修費を乗じ、A%で除す。
〔質問〕
方法2でいう、過去B年間の建設補修費と買収時の建設補修費が常に約分されれば、方法1の欠点は方法2でも克服されないはずですが、そんなはずはないので、どのように方法1の欠点は方法2で克服されるのでしょうか。

これはよくよく考えると,明治大正の人ってすげーと感心する。

僕の回答は:

- そもそも,この「補償」は何を目的としたものなのかによって,このルールの評価は分かれる。普通のプロジェクトや株式の買取などのような場合においては,当該資産がどれだけの将来キャッシュフローを生み出すかが,対象資産の価値評価になるから,過去にどれだけの額を投資してきたかは全く問題なく,そもそも方法1で「欠点」として挙げられている点は,欠点でも何でもない。投下資本が大きいにもかかわらず,益金が小さいというのは,「投資した人がそれだけ馬鹿だった」ということの指標になるが(ちょうどかんぽの宿のように),そのプロジェクトの価値を左右するものではない。
- これに対し,sunk costを回収させるのが「補償」だ,という目的に立つなら,確かに「欠点」と評価されることになる。しかし,そのようなルールは,通常,無駄な投資を生むインセンティヴを生じさせる(=どんなに無駄な投資をしても,政府がそれを償ってくれるという,典型的なsoft budget constraintの問題が発生する)から,望ましいとは考えられない(もし,それでもいいと言うのであれば,この地方鉄道法が,繰り返し適用されるのではなく,1回だけ適用される法律だから,事前のインセンティヴに与える影響を考えなくても良い,ということにしか求める他はない)。
- 以上を前提とすると,方法1も方法2も,基本的に,将来キャッシュフローという対象資産の価値に基づいた補償方法で妥当である。
- では,方法1と2の違いはどこにあるかというと,方法2は,最終年度に鉄道建設をした場合に,その分の益金増額を認めてくれることにある。これはおそらく,鉄道を建設することによって,収益ベースが拡大し,将来の収益の増大が見込まれるにもかかわらず,過去のB年間の益金の平均をとったのでは,その分の将来キャッシュフローへの寄与が反映されない形になるので,それを(近似的に)反映するように,方法2を採用したものと思われる。
と。

明治大正の人たちがこれだけしっかりファイナンスを理解しているのには,ちょっと感動すら覚えてしまう。これに比べると,今の一部の政治家さんたちは,かんぽの宿の建設費に比べて売却価額が安いからけしからん,とか言い出すんだから,救いようがないよねぇ。

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