●civil sanction and ciriminal sanction
民事のサンクション(不法行為)と刑事のサンクションの使い分けについては,こう書いたことがある:
刑法において故意犯処罰の原則が採用されていることもこのような観点から説明することができる。すなわち,過失犯については,不法行為法によって実現される損害の内部化によって,抑止のために十分なインセンティヴが既に設定されているから,これを刑法で重ねて処罰する必要性はない。これに対し,故意犯の場合には,例えば殺人によって追加的な心理的な満足を得ているといった特殊な状況が存在するので,これについて適切な抑止を実現するためには,不法行為法による損害の内部化では足りず,刑法の処罰による追加的な抑止効果が要求されるのである。
(森田=小塚「不法行為法の目的」NBL874号,注37)
刑法の世界における業務上過失致死傷の運用見てると,この辺の配慮が欠けているなぁ,と思うことがよくある。まぁ,自動車事故に関しては,業務上過失致死傷を適用することにそんなに問題はないと思うんだけど,それ以外はちょっと,ねぇ。