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October 20, 2010

●indemnification for wrong payment

『支払決済法』解題シリーズ・その3。

今回のお題は,「支払免責」。

手形法40条3項には支払免責についての規定があって,振出人が無権利者に対して支払をしたとしても,一定の場合には免責される旨が規定されている。これに対し,小切手法には,手形法40条3項に該当する規定が存在しない。これはどうしてだろう?

ほとんどの教科書・基本書には,小切手法には条文がないけれども,手形法40条3項を類推適用して,小切手についても同様の条件で支払免責を認めるべき,と書いてある。

けれども,そんな解釈をしていいんだろうか? 小切手法も手形法も,国際条約(ウィーン条約)として,多くの専門家たちの合議の結果,成立した法ルールだ。そんな法ルールに,「本来であれば規定すべきだったのに規定し忘れてしまった条文」なんてものがそう簡単に入り込んでいるなんておかしい(ちなみに,日本の会社法なんかは,立法担当者が突貫工事で作ったものなので立法ミスはある。議員立法はさらにひどいw)。特に,支払免責なんて,支払人にとっては,無権限者への支払のリスクの分配という点でかなり中核的なポイントなのだから,そこについて規定を置き忘れるなんてことは,ちょっと常識では考えられない。

だとすると,小切手法に手形法40条3項に相当する規定がないのは,意図的なものであって,小切手に手形法40条3項を類推適用するのはおかしい――そういう趣旨で小切手法は作られていない――,ということになる。

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