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August 19, 2010

travel agency

日本の旅行代理店が手配した海外旅行パックツアーに参加したところ,何らかの事故にあったとする。この場合,被害者は,現地の加害者(たとえば現地の代理店とか現地の旅客運送業者とか)に対して自ら直接請求する必要があるとすべきだろうか,それとも,日本の旅行代理店に対して,現地業者は日本の旅行代理店の履行補助者に過ぎないんだから,現地業者の故意過失について,直接責任を問えるようにするべきだろうか?

この点について,昔,ワールドカップフランス大会事件の判例評釈で書いた記憶がある(ジュリスト1210号)のは,「適切な現地の業者を選ぶ」というeffort levelは,旅行参加者でなくて日本の旅行代理店によって左右できる部分が大きいから,日本の旅行代理店に代位責任を負わせる,っていうシステム(複合運送チックに)にも一定の合理性があるケースがあり得るんでは,ということだったと思うけど(←もし記憶違いだったらゴメン),「昨日の僕は今日の僕ではない」なので,ちょこっと考え直してみる。

で,考え直すポイントはどこか,っていうと,現地業者の安全性のレベルとその代金は多様であるとしても(←ここの部分の前提は変わらない),その中からどの組み合わせを選択するか,っていう点に関する消費者の選好ってさまざまじゃないか,っていうことと,パックツアーのマーケットでも,それなりの競争が働いているんじゃないか,っていうこと。

もし,現地業者は日本の旅行代理店の履行補助者だってことで責任を問われることになると,日本の旅行代理店は,(a)事故を起こさないような信頼できる(けれども,もちろんその分,お値段は高い)現地業者を探してきて手配するか,あるいは,(b)現地業者の選択については何も変えないけれど,とりあえず責任保険に入っておく(もちろん,その分,ツアー代金は高くなる),といった対応をとることになるだろう。

そうすると,もしもこういった履行補助者責任を強行法規として課すことになると(特約での排除を認めない),たとえば,(a)については,ちょっと安全度が低下してもいいから安価な現地業者を使いたい,というニーズや,(b)については,別に旅行代理店に責任保険入ってもらってなくても,自分で十分な額の海外旅行保険に入っているから,二重に保険料を払いたくない,っていうニーズには応えられなくなってしまう。

つまり,消費者にも色々な人がいて,「ちょっとくらい高くても,とにかく安全・安心な旅行をしたい」っていうリッチなお方もいれば,僕のようなバックパッカーみたいに「旅行業者なんて現地で行き当たりばったりに直観と頭脳で選ぶのがスリリングで好き」っていう変人まで,いろんな人がいる。パックツアーのマーケットがしっかりと機能していれば,「ちょっと怖いけれど安い」ツアーから,「高いけれどとにかく安心」なツアーまで,多様な商品が提供されることになる(とはいえ,代金の大部分は,ホテルのランクやフライトがエコノミーかビジネスかで決まるのかもしれず,そうすると,こういった発生確率の低い部分が価格に与える影響は大きくないのかもしれない)。

けれども,強行法規にしてしまうと,ひょっとすると,こういった多様なニーズに応えられなくなってしまう可能性がある。まぁ,もちろん,旅先でのどたばたを楽しむようなリスクテイカーは,そもそもパックツアーなんて買わないよ,という風に考えるのならば,日本の旅行代理店を通してパックツアーを購入する際には,一定の「品質保証」を強制する,というルールの立て方もあり得るかもしれない。

ただ,そういう立場に立つとしても,それが,履行補助者の責任を問うことによって実現できるのか,っていうことは気にする必要があるかもしれない。つまり,日本の旅行代理店が,(a)の対応を取ってくれるのならいいけれど,(b)の対応を取られてしまうと,安全性の向上は見込めないからだ(それはそれで,(a)の対応は(b)の対応に比べて高コストであって,(b)の対応を取ることが効率的だ,っていうことの帰結なのかもしれない)。

このエントリの基本的なアイデアは,登山ガイドシステムのあり方について以前のエントリで書いたことと,結構共通している。安いツアーで危険を甘受するか(それくらい自覚してよねー),それとも安全をお金で買うか。

おまけ。何か昔より下手になったように感じるのは気のせい?:

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