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August 11, 2010

duty to keep value of securities

最判平成18年12月21日判時1961号62頁というのがあって,巷では,これは,破産管財人には,担保価値保存義務がある,って読むらしい。けど,担保価値保存義務ってよく分からない。

たとえば,アイドル女性歌手が,将来のCD売上とか着メロ売上とかの収入――つまり将来債権――を,第三者に譲渡したとしよう。真正譲渡と担保目的譲渡の2つがあるけど,まぁとりあえずその辺はさらりと無視しておく。この場合,もし,この譲渡された将来債権について,担保価値保存義務があるとしたらどうなるか。

そして,このアイドル女性歌手が,髪を濡らしたままホテルから出てきて男性俳優と路チューしているところを写真週刊誌に激写されてしまったとする。追加設定として,このアイドル女性歌手は,「清純派」で売り出してきたために,万が一この写真が公表されると,従来のファンが大幅に離れて,CDや着メロの売上が大幅に落ちることがかなり高い確率で予想されるとしよう。

で,この場合に,将来債権の担保価値保存義務が(債務者に?譲渡人に?)あるとすると,どうなるか?

担保価値保存義務がある場合に,その債務者が採りうる手段としては,

- そもそもそんなお付き合いをしない(させない)
- そもそも路チューなんかしない(させない)
- そもそも激写されないように写真週刊誌(やパパラッチ)から必死でガードする
- 万が一激写されたとしても,袖の下を送って公表させない

っていう辺りかな。

要するに何が言いたいかっていうと,平成18年最判のように,敷金みたいな単純な場合には担保価値保存義務といってもあんまり問題なさそうに見えるのだけど,将来債権みたいに,債務者側の一定の行為が要求される場合に担保価値保存義務なんてことを言い出すと,結構その後の処理が大変なんじゃあるまいか,ってこと。

債権法改正でも話題になっているらしいけど,どうなるんでしょうかねぇ。

ま,倒産時の処理としては,ルールさえ決まっていれば,後はcoasean bargainingでうまくいくはずで,どちらに権原を割り当てるかは,利益の分配(流動化系の弁護士報酬が増えるか,倒産系の弁護士報酬が増えるか,の違い)に過ぎないと(基本的には)思われるけれども,そもそも「ルールを明確に書く」ってことが案外難しいのかもしれない。

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コメント

最判平成11年1月29日が、将来債権の譲渡について債権が発生しないことのリスクは債権者が負う、と解しているコトヲ前提にすると、債権譲渡人(担保目的の譲渡なら担保設定者)に担保価値維持義務を負わせる、というのは背理である、ということでしょうか。

この分野は普段授業で教えたりしているわけではないので,その最判H11.1.29もよくチェックしてませんが,もし将来債権については担保価値保存義務を認めるべきでないという立場をとるなら,次のようなdistinguishをするという理解になるのでしょうか:
「敷金返還請求権のようなものは,既発生の債権であって将来債権ではなく,したがって担保価値保存義務が発生するが,将来債権については担保価値保存義務はなく,平成18年最判の射程は及ばない」

将来債権譲渡は,利益の帰属主体と行為主体とが食い違う典型的なエージェンシー関係を作り出すものなので,特にエージェンシー問題が深刻になる状況については,それをうまく乗り越えるためのメカニズムを何かしら用意しておかないと,うまくいかないケースがあるように思います。それを,民法が準備すべきなのか,それとも,当事者が特約の形で準備すべきなのかは,分かりませんが。

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