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June 11, 2009

●political succession

政治家の世襲がだいぶ問題になっているけれども。

世襲が発生する理由は何かって普通に考えると,政治家になるには非常に多くの投資が必要。いわゆる「地盤」を作るというやつで,いろんなconstituentと良好な関係を形成しておかなければならない。そういった投資を普通の人がゼロからやるのは大変だけれども,親がその先行投資をしていてくれていれば,それを世襲した政治家には,追加的な投資が比較的少なくてすむ。そうすると,他の条件が一定ならば,世襲政治家の方が誕生しやすいはず。もっとも,そういった投資の量が比較的少なくてすむ(もしくは,投資にあまり時間がかからない)ような選挙区であれば,世襲政治家とそうでない候補者の差は小さくなるので,世襲は発生しにくい。要は,少なくとも現在の日本では,政治家という職業は,長期的な多額の投資が必要な職業であって,参入障壁が自然形成されやすい,ということなんぢゃないだろーか。

ということは,その辺の世襲発生メカニズムに手を付けないで,世襲だけを禁止したとしたら,何が起こるかを考えてみると。
その1。子孫に「地盤」を継承させることのできなくなった現役政治家による投資のインセンティヴが低下する。でも,これはひょっとすると,いいことなのかもしれない。
その2。世襲という形で地盤の継承ができなくなれば,違う形での地盤の「取引」が発生する。もちろん,見えやすい形で代金が支払われる(たとえば,大相撲の親方株みたいに)とは限らない。引退した政治家に対して,その政治家の地盤を「引き継いだ」者が,たとえば何かの理事長職のようなものをオファーするなど,side paymentは表に見えにくい色々な形でできる。これができれば,その1で書いたような,投資インセンティヴの低下は発生しないだろう。

問題は,こういったことができない場合に,何が発生するか。こっちの方が問題のような気がする。
「参入障壁」は無くなるわけで,現職以外の候補者は,先行投資ゼロの状態で選挙に臨まなければならない。でも,その条件の下で政治家っていうビジネスに参入してくる人って,どういう人だろう? そもそも,政治家というビジネスが合理的かというと,どう考えてもそうではない。政治家なんて落選したらただの人なハイリスクな職業だから,それに応じたハイリターンがないと,普通の人は参入しないはず(だからこそ,昔のイギリスの政治家は,他に収入を持っている貴族階級たちが,名誉職的にやっていることで回っていた)。ってことは:
a) 政治家になることによって得られるリターンが増大する(汚職が増える?)
b) もし,こういうリターンの取得が禁止されるとなると,「変人」しか政治家になろうとしないことになって,政治家の質が落ちる(まぁ,今のままでも政治家になろうと考えるなんて,かなり変わった人である蓋然性が高いのかも知れないけれど)
のどっちかが起きるような気がする。

以上が単純に世襲を禁止した場合(プラスαの場合も入れたけど)の予想される効果。
もう一つの方法は,世襲が発生するメカニズムの方に手を付けること。上に書いたように,世襲が発生するのは,政治家になるには(選挙で勝つには)多額の投資が必要なことによる。だとすると,そこを乗り越えるには,
a) 投資をしなくても選挙に出られるように,補助金をばらまく
b) 投資をしても無駄なように,政治家の行動を縛る
のどっちかかな。a)は,お金がかかるし,そんなことをしては,多くの人が「選挙に出るよ」といって補助金を受け取りに名乗り出るインセンティヴを与えてしまうので,まずい。b)は,政治家の権限を奪うことになって本末転倒だし,とてもじゃないけれど,現職たちが,自分たちのリターンを減らすようなそういう政策変更に賛成するってことは考えにくい。

そうすると,打つ手なし,ってことなのかなぁ,という気がする。

ちなみに,USの政治家に金がかかるのは,TVコマーシャルにめちゃくちゃお金がかかるからだけれど(実際,USに住んでると,ひっきりなしにCMが流れる),日本ではTVコマーシャルやらないから,それにもかかわらずああまでお金がかかるのは,飲食遊興でかかってる(そういう投資でconstituentを維持する)んだろうなぁ。

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コメント

これまでにも秘書が地盤を継承するということはあったので、もしかしたら「その2」の他の形での取引は割と簡単なのかもしれないですね。

地盤を継承する方法を制限すると(「取引」も容易ではないとして)、地盤以外の選挙に強い要素をもった候補者(=これまでに行ってきた投資を転用できる候補者)が相対的に有利になるように思います。例えば、有名人の候補が増えたり...

> 地盤を継承する方法を制限すると(「取引」も容易ではないとして)、地盤以外の選挙に強い要素をもった候補者(=これまでに行ってきた投資を転用できる候補者)が相対的に有利になるように思います。

で,その状態の方が現在より望ましい状態かどうかは,あまり検討されていないような気がします。

とはいえ,side paymentを実効的に禁ずるのは,ほとんど不可能だとは思うけれど。

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