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February 28, 2007

●10 percent per 10 days

かなり面白いペーパーを見つけて,1時間くらい熱中して読んでました。何のペーパーかというと,高利貸しの効率性についてのペーパー。去年は日本でも貸金業規制法の改正とかが話題になっていたので,ひょっとすると多少はpolicy implicationもあるかもしれませぬ。

高利貸しといっても,ただの消費者金融ではなくて,このペーパーが問題にしているのは,まさにトイチ級の超高利貸しで,年率換算400%くらい行っちゃうようなもの。日本なら当然違法ですが,USだと合法な州もあるらしい(例えばCA。もちろん,違法な州も多い)。こういった高利貸しが,各コミュニティに存在するか否かを説明変数とし,様々な社会的厚生の指標を被説明変数として検証してみましたよ,というペーパーです。natural experimentとして,当該地域に自然災害が発生したか否かのdummyを採用してます(<- 自然災害は偶発的に発生するものである一方で,高利貸しによるファイナンスへのニーズを高める)。
もちろん,そんなことを言っても,当然,unobserved varirableによるendogeneityが深刻で,そのままregressした結果を信じるアホはいません。そこで,何をやったかというと,そこのところがかなりの労作です。工夫は3つで:
- diff-in-diff-in-diffs [triple differences]
- propensity score matching
- IV
です。diff-in-diff-in-diffsまでは変数作るの楽ですが(<- dummyとそのinteractionを放り込むだけ),matchingとIVは,ペーパー読んでると,「うぉ,これ作るの大変だなぁ」と感心します。例えば,IVについては,こういった高利貸しは,道路網が集まる地点には存在しやすいが,そうでない地点には存在しにくい,ということを利用して,「当該コミュニティの道路網の集積度」みたいなものをinstrumentにして,高利貸しの存否のdummyをinstrumentalizeしてます。...データセット作るので死ぬよ... そういえば,Hoxbyの「川の配置と橋の数」をinstrumentにするのも大変そうだ。

で,結果はどうなっているかというと,

高利貸しの存在するコミュニティの方が,自然災害によるダメージが少ないし,自然災害からの回復が早い

という結果がかなりrobustに出てます。すげぇ。火事場泥棒って,実は世のため人のためになっているんですねぇ。

で,仮にこのペーパーがendogeneityにうまく対処できているということを前提にすると,発展すべきは次の2つ(前者はペーパー自体で言及されている)かな,という気がします:
1. 自然災害のような場合だけじゃなくて,平時においても高利貸しは望ましいのか?
2. 高利貸しによるコストがsocial welfareの計算に入ってないのではないか?
このうち,1.はまだオープン。2.については,明示的に言及されてないけれど,被説明変数に採用されているものの一部が,こういったコストを折り込んだ指標になっていて,そこでもrobustな結果が出ているから,まぁクリアされているのかな,という気がします。

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コメント

いっつも思うのですが、金利規制の話って金利自体の効率性どうこうの話なんですかね?
ニュースとかで問題にされているのは結局、悪質な取立の問題ですよね
(払えないなら内臓売れとか)
で、国会が立法するのもそういった世論を受けているわけですから
経済的に金利規制は非効率的だといわれても
あまり意味もない気がするんですよね。
悪質な取立のみ規制することが可能ならいいんですけど
無理だからそういった事業自体禁止してしまう、
ということなんですよね、きっと。
アメリカはそういった取立業者の悪質性の問題とかないんですかね。

この辺のニュースはあんまり見てない(多分そのころ日本にいなかったし)ので分からないけれど,取立行為の問題がメインであることは確かであっても,それが100%というわけじゃないでしょ。例えば,myopicな個人が"間違って"借りすぎてしまうことに対するパターナリスティックな規制という側面もあるんじゃないかと思います。まぁ,そういう側面を,金利規制という形で対処すべきか,それとも他の方法(例えば破産・再生法制)で救うべきか,というところはさらに議論する必要があるとは思うけど。

で,普通は取立行為規制の方が望ましいはずなのに,それが「無理」なのは,何でで? 罪刑法定主義とか法律による行政とかのお話? 後者については,今でも貸金業規制法上のサンクションがあるにはあるけれど,あれは確か許可制でなくて届出制だったような記憶があるから,法人Aにサンクションを課しても,すぐに解散して新しい法人Bを作ってしまうから,実効性がない,というレベルのお話なんだろーか?

アメリカのお話は知りません。が,直感的には,アメリカのマフィアは基本的にこんなことはしないでしょう。彼らにとっては,drugの売買で稼ぐのが一番手っ取り早いので,消費者金融の取立代理なんて割に合わない。
まぁ,この辺は,このブログを読んでいるであろういとうYさんが,CAで高利貸しから実際に借りてみて,履行期に不払いしたらどうなるかの実体験レポートをきっとしてくれるんぢゃないかと期待してます。

PS. 来週助手論報告会なのに,その名前はなにかね...

なるほど、やっぱり近視眼的な債務者の
パターナリスティックな観点もあるんですね。
ニュースでみたときは取り立ての悪質性の問題かと感じたのですが・・・

取立業の規制は罪刑法定主義というよりも
証明困難性による
エンフォースメントの困難性とか考えてました。
本来は、貸金業による社会的便益と取立の悪質性のマイナス(コスト?)を
実証分析できたらいーんですけど
Levittではないからこういう闇?社会って
難しそうかな、
なんて素人ながらに考えました。
アメリカ以前に日本の取立業の実務すらよくわかんないですね。
貸金業流行ってた頃は中学の友達が
キャバの店長やめてまで取立業に転職してましたが
最近はどーなってしまったのか・・・

いや,Levittは闇社会に潜ってないよ。SOCIのVenkatesh(←綴りあってたか自信なし)が体を張ってChicago south side(僕の住んでた地域から数ブロック南側ね)からとってきた成果の横取り(とは言い過ぎで,共著だけど)...

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